「ヘクセ、ヘクセ!」の練習をしたのに魔女は登場しなかった
ヘンゼルとグレーテル、子どもに聞かせて良い話ではないような...
森の中をヘンゼルとグレーテルが彷徨っている。帰り道がわかるようにと、なけなしのパンをちぎって道しるべに置いている。だが、すぐに鳥や小動物が集まってきて食べてしまう。
グレーテル「ねえ、お兄ちゃん...私たち、死ぬのかな?」
ヘンゼル「大丈夫だ。ぼくたち、神様へのお祈りを欠かしたことはない。きっと救われるよ。」
桜「あー、いたいた。可哀想な子どもたち。」
翼「とりあえず血糖値を上げよう。」
紬「私、コンビニでお菓子を爆買いしてきたからあげてくるね。」
突然現れた現代女子高生を見てヘンゼルとグレーテルは驚いたようだが、紬が差し出した甘い香りの不思議な包みを見て目が喜びに輝いた。
ヘンゼル「ダンケ、ダンケ・ゼアー!」
グレーテル「ダンケ、グローセ・メートヒェン!」
桜「さて、お菓子を食べさせてじゃあさようならにはできないな。」
紬「ねえ、翼、物語はこのあとどうなるの?」
翼「えーとね、お菓子の家を見つけて囓る。魔女に怒られるけど、とりあえず家に招き入れられて下男下女にされる。」
桜「労働基準法違反。児童労働の禁止。」
翼「ちょっと待って!グリム版では最後にこの子たち、魔女を殺して財宝を奪うってよ。」
紬「それは最高に胸くそ。」
翼「三段階の胸くそ話だよ、これ。まず食い扶持減らしのために親が子どもを森に捨てる。次に、子どもたちは森で老婆を殺害しその金品を奪う。最後に、子どもたちは奪った金品を持って帰宅し、その金を渡して親と和解。」
桜「開いた口が塞がらない...」
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女神「はっはっは、出た、倫理の葛藤!」
青水「翡翠、おまえもヘンゼルとグレーテルに介入しただろ?」
翡翠「はい。魔女は森の中で暮らす独居老人でした。私は悲劇が起こらないように、両親からヘンゼルとグレーテルを救いだして近所の修道院に連れて行き、次に修道院の院長に森の独居老人の保護をお願いしました。」
女神「なるほど、翡翠らしくご立派なもんだ。あの女子高生たちはどうするかな?」
青水「現代女子高生たちの腕の見せ所だな。」
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桜「この子たちの親権、まだあのクソ親のものだよね?」
翼「でしょうね。本人たちは捨てたつもりみたいだけど、教会の書類ではそうなってるはず。」
桜「まず親から切り離さなくっちゃ。そしてそのあとしかるべき施設に預ける。」
紬「私たちが家に連れ帰ったら,親はどんな反応を見せるかな?」
桜「顔で笑って腹の中は煮えくり返る。」
翼「あいつら、貧すれば貪するの典型だよ。」
紬「現代文対策はバッチリなので貧も貪も正しく書けるよ。先生は採点が大変らしい。」
桜「貪するってどういう意味だ?」
翼「えーっとね、あった、貪るの音読みだから、欲に流されて節操を失うってことかな。」
桜「では欲を満たせば子どもは平気で手放す。」
翼「でも私たち、この世界のお金を持ってないよ。」
紬「これで釣ろう。イミテーションリング。ゲーセンのガチャで取った。」
桜「良いねえ、それで行こう。」
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女神「あいつら、ずる賢いな。メルヘン世界にない安価アイテムを持ち出したぞ。」
青水「そういうところだよね、あいつらの強みは。」
翡翠「私も少し見習って楽をしたい。」
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桜「さて、家に着いたが、ドイツ語の壁が。」
翼「リングはあなたに、子どもたちは私たちに、これでいけるんじゃ?」
紬「任せた、AIマリチリンガル。」
扉を開けた両親は予想通りの反応を見せた。翼の時短低コスト交渉でヘンゼルとグレーテルは自由の身となった。あとは修道院で書類手続きをしてもらえば任務完了だ。修道院への道を歩きながら、桜はある問題に気付いた。
桜「修道院への説明、どうするの?」
翼「さすがにそんな複雑な話は無理。」
紬「話そうとするから無理なんじゃ?文字を見せれば良いじゃん。翻訳アプリで、親が子どもを捨てたので、森で保護した,親に掛け合って子どもを手放してもらった、ひいては保護をお願いしたい。私たち、異端でも異教徒でもないよ、アーメン、はい、これでOK。」
桜「うーん、胡散臭いけど筋は通ってるね。よし、それで突破だ。」
翼「あと、子どもの親権の譲渡の処理のとき親をしめてもらうのと、森の奥に魔女といわれる独居老人がいるので様子を見に行ったほうが良い、よし、できた。あ、アーメン忘れた。」
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翡翠「私と同じで修道院を頼るとは!」
青水「それ以外、解決策がないもんな。」
女神「怪しいアーメン、許してもらえるのか?」
青水「そこは演技力に期待するしかないかな。現代女子高生、好感度の操作に長けているから大丈夫だろ。」
翡翠「どうやら無事に修道院に引き取ってもらって帰ってきましたよ、あの3人。」
女神「ふっふっふ、次の試練はもう少し難しいぞ。」
翡翠「まだあるんですか?」
女神「せっかく昔話のロケーションを作ったんだ。出せるだけ出してやる。」
翡翠「青水さん、女神様にこれ以上お酒を与えないでください。調子に乗りまくっています。」
女神「ふん、良いから翡翠も飲め。これは珍しいぞ。バラのリキュールだ。」
翡翠「あ、すごく良い香り。」
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桜「あそこにこの村にしてはけっこう立派な家がある。誰が住んでるんだろう?」
翼「馬車が来たよ。家の前に止まった。」
紬「中から着飾った女性が3人、ひとりは中年女性で、あとの2人はその娘さんかな。」
桜「わかったぞ、次のイベントはシンデレラだ。」
イミテーションリング、この世界で換金できるでしょうか?まあ見た目勝負だからできるかもね。毒親の姿をよく見たら、喜びと強欲が衝突して手が3本になってますね。キモっ!




