準備の前振り、しっかり回収して水着回
ファンシーグッズで金策して高価な現代装備を躊躇なく購入。ゲーマーっぽいムーブになってきました。
桜「あっさりと東京に戻って来ちゃった。」
翼「ズルしたから降格なのでいったんリセットかな。」
紬「悲惨を避けるために緊急出動を要請しただけ。ズルじゃない。」
桜「あしたまた転移だから、消費したものを補充してからファミレスに行こうか。」
翼「そういえば、何でもスマホ任せにしてきたけど、水の中とかを想定すると完全防水のスマートウォッチが必要になるんじゃないかな?」
紬「おお、ますますハイテクのスパイ大作戦。」
桜「お金はあるし嵩張らないしで、反対する理由がない。」
翼「水に潜る場合はゴグルも必要だね。」
桜「それも嵩張らない。採用。」
紬「ゴグルはスペイン坂のムラサキスポーツ、Apple Watchは渋谷のアップルストア。」
翼「以前はポンポン買えなかったアイテムが値段を気にせず買えるようになって気持ち良い。」
紬「ホントそれ。ちっぽけな万能感。口座に50万円以上の女子高生。」
桜「ジオラインメッシュの下着で水に飛び込んでも大丈夫なのか?」
翼「うーん....わかんない。」
紬「メッシュは透ける、これ常識。」
桜「水着は嵩張る。限りなく不採用に近い。」
紬「ゴグルを買うついでにムラサキスポーツで店員に聞いてみよう。」
3人はまず値段が高いスマートウォッチを購入するためにアップルストアへ行った。
店員「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」
翼「防水性能が高いもの。ダイビングにも耐えるくらいの。」
店員「それでしたらウルトラ3ですね。水深40メートルまでのアクティブ防水です。一般のダイビングなら何の問題もありません。」
紬「おお、それなら水中の作戦も何の問題もない。通信も可能。」
桜「水中での操作は限りなく無理。私、ダイビングのライセンスを持ってるけど、水中はホントに身動き取れないし、視界も悪い。」
翼「まあでも、ハイスペックは邪魔にならないからそれにしようよ。」
桜「お値段は?」
店員「12万9000円です。」
桜「じゃあ、それぞれひとつずつで。」
店員「ありがとうございます。お支払いは?」
桜「ペイペイの一括で。」
翼&紬「私も。」
次に3人はスペイン坂のムラサキスポーツに来た。ゴグルは紬だけ度を入れなければならないので少し時間がかかったが、みんな思い思いに好きな色と形で選んだ。下着問題だが、ミニマルな解決法はないか店員に相談したら、上はスポブラのままでノープロブレム、下だけインナーショーツを履けば解決という、非常にコスパが高い答えを得た。
店員「上がブラ丸出しだと恥ずかしいのなら、羽織る系のラッシュガードもありますよ。」
翼「ねえ、ちょっと待って。下着で水に入るのは露出という一点に限って言えば問題ないかも知れないけど、美的にどうなの?もしもだよ、もし他に転移者がいてスマホでその醜態を撮影されてSNSに上げられたら!」
桜「それは無様すぎて学校に行けない。」
翼「転移先でも人命を救助してますってアピールする水着を買っていこう。ビーチセイバーの水着。」
紬「それはかっこいい。盗撮されてもかっこいい。」
桜「ということでビーチセイバーの水着をください。」
店員(急展開に目を白黒させて)「ではこちらです。セパレートタイプが流行ですよ。」
ということで、次の転移に向けてしっかり準備を整えた3人は渋谷のロイヤルホストで晩ご飯を食べた。
桜「なんだかんだ言って、ここはファミレスの王者かも知れない。」
翼「たいした差ではないがそれでもすべてにおいてハイグレード。」
紬「和洋中、なんでも対応。ドリンクバー、まさに神。ミニッツメイドがある。」
桜「トイレもきれい。これ転移者ならではの評価ポイント。」
翼「明日も頑張ろうね。カンパーイ!」
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女神「あいつら、いつも楽しそうだな.....」
青水「苦境に立ったことがない人間に苦境は襲いかからない。」
翡翠「何なんですか、青水さん、その達観したような、それでいてうらやましさではち切れそうな感慨は?」
女神「傷だらけの人生を振り返っての感慨なのだろう。」
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桜「おはよー!」
翼「制服もクリーニング済みで美容院に行ったばかりのピカピカ女子高生。」
紬「充電が満タンのスマート装備。」
桜「唯一の心配は、戦闘力が皆無だってことかな。」
翼「チートで無双するラノベみたいなのとは違うんだからそれで良いんだよ。」
紬「暴力衝動がない。」
桜「私は少しあるよ。」
紬「ほお、ならば渋谷にあるという秘密のサバゲーショップで銃器でも用意しますか?」
翼「それ、何かのゲームで見た設定。」
桜「スタンガンくらい欲しいな。」
紬「実物を見たこともない。渋谷で買えるの?」
桜「未成年の女子高生に売ってくれるとは思えないのでいったん忘れよう。」
翼「たまにニュースで見るよね、中国から通販で買ったとかの危険物。」
紬「そんな危ない橋を渡るより、転移先で自作、これが安全でかっこいい。」
桜「ただし私立文系コースの私たちにはほぼ無理。」
翼「でも、スイスのマルチツールを買ったくらいだから、小型のペンチやニッパーのセットぐらいは持っていったほうが良いかも。」
桜「それはそうだ。変形技術は文明の基礎。」
紬「東急ハンズへ行こう。」
転移時間を告げるタイマーが鳴ったので、3人はいつもの隠微スポット百軒店に向かった。後ろめたい人々が視線を落として逃げるように速歩で歩く町。
桜「今度はどこかな?」
翼「行けばわかるさ。」
紬「雪山とかは勘弁。」
桜「ん?波の音?」
翼「海岸に出た。」
紬「人がいない。町もない。これじゃどこの国かも時代もわからない。」
桜「海に出たということは...」
翼「水着回か...」
紬「着て待ってようか?」
桜「あ、見て、あれ!」
翼「溺れた人とそれを抱える人魚。」
紬「うわ、魚系人外、ちょっと苦手。」
桜「あ、現場で準備不足に気付いた。小型双眼鏡。」
翼「とりあえずスマホのカメラで拡大しよう。」
紬「あれ?あの人魚、こっちに気付いたみたいだよ。」
桜「うわ、ひどい!救助してる人間をそのまま放置して潜って逃げた。」
翼「あの人、溺れちゃう!」
紬「脱衣3秒、水着セット2秒!行くぞ、ビーチセイバー紬!」
桜&翼「うちらも続く!」
桜「ねえ、がんばって!」
翼「ほら、掴まって!」
紬「陸までたったの3メートルだよ。すぐ足がつくよ。」
陸に引き上げた男性は気を失っている。翼はApple Watchで水難救助の対処を検索した。
翼「気道確保!」
桜「OK!しかし呼吸が微弱。」
紬「人工呼吸、マウスでやるか横隔膜を押すか。」
桜「両方だ。私が犠牲になって口を吸う。あんたらは胸を押して。」
4秒ぐらいの処置で男性はビクンと動いて少量の海水を吐き出した。そして少し咳き込むと、聞いたことがない言語を喋った。どうせ「ここはどこ、君たちは誰」ぐらいだろうと思った3人は、とりあえず満面のJK笑顔で安心させることにした。
翼「何の言語かわからないけど、ちょっとだけドイツ語に似てた。」
紬「何の言語かわからないと翻訳アプリの設定ができない。」
桜「Hey! Do you understand English?」
男「Yes, I speak English...」
翼「お、やりましたな、桜殿!言葉が通じますぞ。」
桜さん、男気溢れるマウス・トゥー・マウス。大令嬢は決断が早い。




