パンツも履き替えられないなんて過酷すぎるので...
はい、たいていのラノベでは,パンツどうする問題をスルーしていますが、ぼくは誠実に付き合います。最低でも1日1枚、事情が許せばそれ以上。あ、それはぼくの話でした。
青「なあ、女神。今回はあいつら無事だったから緊急転移も発生しなかったな。」
神「ああ。このままあの世界に放置しても良いんだぞ。」
翡翠「それはちょっと過酷じゃありませんか?いつまでもデメテルの神殿にいるわけにもいかないし、住む場所もない古代ギリシャでさまようのは。」
神「そうだな。当座の食糧は得たものの、着た切り雀でパンツも履き替えられない。」
青「それは可哀想だな、パンツも履き替えられないなんて。だろ、翡翠?」
翡翠「私に投げないでください!」
神「いっぺん家に帰すか?シャワー浴びてパンツを替えてから再転移。」
青「試練の女神のくせに優しいな。」
神「試練と過酷は別だからな。」
青「あいつら、家は近いのか?」
神「翡翠、現代に転移させたら月煌を飛ばして調査してくれ。」
翡翠「わかりました。ここで提案なのですが、みなさんの台詞の前に“青”と“神”と一文字だけ付いていて,私だけ名前なのですが、みなさんも青水と女神にすれば、みんな二文字になって見栄えが良いのではないでしょうか。わかりやすいし。」
青水「言われてみればそうだな。これからそうする。」
女神「私も“神”と言われるとこそばゆい。“女神”で安定する。」
翡翠「それでは女神様、表参道のクレープ屋への転移、よろしくお願いします。」
女神「OK, here we go!」
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桜「あれれ?戻って来ちゃったよ。」
翼「さっきまでデメテルさんの神殿で古代ギリシャのご馳走を食べていたのに。」
紬「私、手にイチジクを持ったまま戻っちゃった。」
現代に戻ってホッとした笑顔の3人の前に,再び青髪にティアラの女神が現れた。ティアラはまるで角のようだ。鬼か悪魔か?いつものようにニヤニヤしている。
「ほっほっほ、戻してあげましたよ。だってそのままに放置すると、あなたたちパンツも履き替えられないでしょ。試練と過酷は別なので、今から家に帰ってシャワーを浴びてパンツを履き替えることを許可します。すぐまた再転移になるので急いでね。転移先で必要になるものはリュックに詰めて背負って待機するのが良いと思いますよ。あと、制服は脱がないこと。制服がないとJKの記号が成り立ちませんからね。」
桜「ありがたいけど、大声でパンツを連呼するのやめてもらっていいですか?」
翼「みんながこっちを奇異な目で見てる。」
紬「動画を撮られてSNSにポストされたら生きていけません。」
女神「おっと、それは大変。女神の力で周囲50メートル四方のスマホを機能停止にしました。JKのプライバシーに配慮しませんとね。」
桜「再転移はいつですか?」
女神「ここから自宅まで電車で帰るのに30分、入浴15分、荷物詰め15分...1時間後かな?」
翼「無理です。シャンプーもしたいし。私、髪の毛が多いから乾かすのに時間がかかるんですよ。」
女神「そうか。なら90分後だ。それでは頑張って。」
いつものようにアルコールの残り香とともに女神は消えた。3人の周囲では誰もがスマホの異変に気付いていたが打つ手がないようだった。
桜「とりあえず80分後にタイマーをセットだ。」
翼「桜は家が広尾だからここからすぐだね。私は麻布十番だから千代田線から大江戸線に乗り換えなくちゃいけないので、タクシーにする。」
紬「私も千代田線から南北線で、準備の時間が足りなくなりそうだからタクシー。」
桜「私もタクシーだよ。みんな、親にペイペイチャージしてもらうんだ。この先、何があるかわからないし。」
翼&紬「ラジャー!それでは散開“」
3人はタクシーが拾える大通りに出て、それぞれタクシーに乗り込んだ。一番近い桜は5分で家に到着した。翼は西麻布の交差点を抜けてけやき坂方面へ。10分で到着したが,タクシーの車内で親に3万円のチャージを頼んだ。一番遠い紬は18分かかった。もちろん車内でチャージを頼んだが,彼女はなんと5万円。みんな実家が太いのでお金の心配はまったくしていない。デート代を稼ぐために必死でバイトで金策する多摩の女子高生とは環境が違いすぎる。軍神マルスを見てもずけずけとものを言える胆力は実家の太さに起因しているのだろう。
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翡翠「彼女たちの会話から実家の場所がだいたい把握できました。会話の必要がないので,月煌ではなくて一般の低コスト式神を飛ばして監視します。」
青水「モニターに映せるのか?」
女神「JKの着替えをのぞき見するつもりか、このエロ親父が!」
青水「いや、ちょっと口が滑った。」
翡翠「フロイディアン・スリップですね。いわゆる、馬脚を現したというやつです。」
女神「あと60分か。みんな自宅に戻ったのだろう?」
翡翠「はい。桜さんはもうシャワーを出てリュックに何を入れようか考え中です。翼さんはドライヤーをかけています。紬さんはまだシャワー中。」
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桜はリュックを前に考えていた。スマホ用充電器、下着と靴下の替え、何かと便利なポリ袋、缶切りと缶詰、ダメだ、サバイバルを考えたことがないのでそれらしい道具が何もない。とりあえず工具セット。火をつけるライターが欲しいけど,家に喫煙者がいないのでない。あ、台所にフランベ用のチャッカマンがあった。あれを拝借しよう。
翼は髪が乾いたのでリュックにものを詰め始めた。桜と同じで、着替えと充電器はすぐ思いついた。折りたたみ傘もいちおう持って行こう。あと、簡易レインコート。手袋とマフラーも詰めておこう。温和な地中海世界はむしろ例外だ。たいていの場所は日本より寒い。あ、これ桜と紬にも共有しておかなくっちゃ。翼は防寒の必要を桜と紬に伝えた。
紬も、まず充電器と着替え。そして旅行用のシャンプーセットと歯磨きセット。あ、これはふたりにも共有しておかなくっちゃ。紬はお泊まりセットの必要を桜と翼に伝えた。まだまだ足りない。紬はリュックを背負って近所の百均に出向き、LEDライト、ジップロック、ホッカイロ、結束バンド、防犯ブザーを多めに買った。
桜もリュックを背負ってタクシーを拾い、恵比寿のモンベルに向かった。魔物がいる世界に転移させられたときのために熊スプレーを入手するつもりだ。スタンガンも欲しいが、今の時間制約では無理だ。タクティカルライトにするか。敵をひるませるくらいはできる。あと、キャンプ用バーナー。場合によっては武器にもなる。
翼はリュックを背負ってコンビニへ出かけた。お菓子の爆買いだ。甘味はJKの嗜み。リュックに入るだけ詰め込んだ。
3人のスマホのタイマーが鳴った。あと10分だ。どこに転移させられるんだろう?桜はコンビニでカフェラテを買って飲みながら待った。翼はゴンチャのタピオカミルクティー。紬はソフトクリームっぽい形状のアイスを買って舐めながら待った。
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女神「みんな必死だな。こりゃ退屈せずに済むわ。」
翡翠「女神様、人が悪い....あ、人ではありませんでしたか。」
青水「しかし、実家が太いとあれだけ冷静に行動できるものなんだな。まったくパニクらない。タイトルを“実家が太いJKトリオ”に変えようかな。」
翡翠「やめてください。誰も読みたくありません、そんなラノベ。」
青水「で、女神よ、どこへ転移させるんだ?」
女神「そうだなあ。愛を知らない小娘たちには愛が重すぎる世界が良いかな。」
翡翠「いやな予感しかしません。シリーズが始まったばかりなのに、大ゴケ要素を入れるのはどうかと。」
青水「そうだな。もっと彼女たちのキャラが活かされる場所が良いと思うぞ。最初から過酷な試練はちょっと。」
女神「そうか、それなら先輩の翡翠が調律に成功した世界から選んでみるか。」
翡翠「言っておきますが,私は助けに入りませんからね。」
女神「大丈夫、危険が迫れば自動転移だ。問題ない。」
青水「やつらは転移初心者なんだから、初心者に優しい世界に送ってやれよ、慈悲深い試練の女神よ。」
女神「わかった。じゃあここだ。」
女神は瞬きをした。ウィンクをするつもりだったようだが失敗して両目を瞑った。
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桜「ここはどこだ?」
翼「確信はないけどあからさまにヨーロッパっぽいね。」
紬「ドイツでもフランスでもイタリアでもない汎用ヨーロッパ。胡散臭い。」
広尾、麻布十番、白金台、富裕層しかいない世界ですね。うらやましい。ちなみにぼくは、東京在住ではありますが,そっち方面の土地勘は皆無なのでAIに地理的な質問をしまくりでした。




