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転移しまくるJKトリオ――港区の実家は太い  作者: 青い水


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それは賢者ではなく愚者だ、なぜなら貧すれば貪すれば貧するから

また世紀末のニューヨーク?女神の雑な振り回しにJKトリオは今日も明るく耐えるのです。

桜「あれ?またさっきのニューヨークじゃん、ここ。」


翼「ホントだ。何かのバグかな?」


紬「いや、ひょっとしたら使い回しができるので、女神が手を抜いてもうひとつイベントをぶつけてくる。」


桜「あれ?あっちから楽しげな顔で歩いてくるのって...」


翼「スーさん。」


スー「あら、皆さん、こんにちは。先日は本当にお世話になりました。おかげさまでジョンシーはすっかり元気になりました。」


桜「そうですか、それは良かった。」


スー「快復後に創作欲が湧いてきたらしく、すごい集中力で絵を描きました。そしてそれを街の画商に持ち込んだら、買い取ってもらえたんです。」


翼「おお、それは、ハッピーエンドの向こう側に別のハッピーが花咲いたような。」


紬「さて、その変な表現をアプリで直訳しても話が通じるかだね。」


スー「そうなんです。ハッピーの向こう側にまたハッピー。」


紬「うわ、通じたのは良いけど、前世紀のCMのような。まあしょうがないか。昔の人だから。」


スー「ほら、あそこの画廊なんですよ。見て行ってください。」


桜「はい、拝見させていただきます。ジョンシーさんにもよろしく。」


翼&紬「バッハッハーイ!」


桜「なんだ、その変な挨拶は?」


紬「動画で見てツボった。」



桜「これか!」



挿絵(By みてみん)



翼「タイトルは”The Trinity of Hope”。」


紬「こうして後世の美術史家は言うのだった。“ジョンシー氏は死の向こう側に希望の三連星を見つけた”。」


桜「小芝居はもう良いから、次のイベントをさっさと片付けよう。」


翼「女神がここに飛ばしたということは、また誰かを助けろってことなのかな。」


桜「ねえ、あれ見て。あの人、ショウウィンドウの中をすごい顔で凝視してる。」


翼「何が陳列されてるの?」


桜「女性用のアクセだね。」


紬「彼女にプレゼントしたいけど手持ちが足りないのかな?」


桜「視点が一点に固定されていて、吟味してるというより目当ての品を眼力で引き寄せようとしてる感じ。」


紬「うわー、引くわ~、引き寄せるだけに。」


桜「翼、わかってるな。ツッコんだら負けだからな。」



紬「あの男が凝視しているターゲット、それは鼈甲の櫛。」


桜「あ、私ニュータイプかも。ピキーンってわかっちゃった。」


翼「何、ニュータイプだと?宇宙そらに上がらずに身につくわけはない。」


紬「私のアホ毛センサーも言ってるよ。あれは時計を売って櫛を買う愚かな男だって。」


翼「そんな特殊スキルを持ち合わせてなくてもわかるよ。つい先月に英語の教科書でやったやつじゃん。“賢者の贈り物”。」


桜「この愚行は止めなければならない。こんな愚行が道徳的行為として歴史に残る世界線、世界が許しても、この一条桜が許さん。…… “Hey, Mister!”」


男は変な服装の少女に突然声をかけられてとまどった。桜は高速入力で長文をアプリに注ぎ込んだ。


“Read this! “ねえ、おじさん。その櫛を買って奥さんにプレゼントするために大事な時計を売っちゃうかどうか煩悶してるんでしょ?良く考えて。そんな犠牲を払ったプレゼント、女が喜ぶと思ってるの?バレなきゃ大丈夫だと思ってる?バカね、女を舐めるんじゃないよ。ちょっとした変化にも気付くのが女。太古の原人時代から培った生存スキルだからね。まあ、ここで進化論の話をしても、ナイーブなおじさんには理解できないと思うけど。つまり、必ずバレるの。すると奥さんはその櫛を見るたびどう感じると思う?私のために彼は大事なものを失った、と自分を責めるの。わかった?”」


翼「見事すぎる。相手、グーの根も出ない。」


紬「私が代わって“グウ”。」


翼「あった。オー・ヘンリーのテクスト。私たちが授業でやった簡略版じゃなくて本物。」


紬「うわー、なんかねちっこい書き出しだわ。」


翼「性格悪いよね、オー・ヘンリー、名前も変だけど。」


紬「ヘンリーってふつうは苗字じゃなくて名前だよ。なのに名前が“オー”って、ふざけてるとしか思えない。」


翼「週給30ドルだったのに20ドルに減ったって、わけわかんない前提で物語がスタートしてる。」


紬「転職したからとか、理由が書いてない。」


翼「オー・ヘンリー...許すまじ。」


桜「“さて、おじさん、その欲しがってる櫛、奥さんへのクリスマスプレゼントのつもりだったんでしょ?だとすると、奥さんだって何かプレゼントを渡したいと思うって考えられない?そこまで考えられないんだったら、あなたたちの夫婦生活は行き詰まっちゃうかもよ。”」


紬「あー、これは決定的です。揺るぎないものと信じ切っていた夫婦の愛に疑問が突きつけられました。」


翼「ジェームズ・ディリンガムくん、感情の持って行き所がなくてプルプル震えています。」


桜「“そしてその結果。奥さんもあなたのように大事なものを犠牲にするって決断したら、あなたは平気なの?”」


紬「ジェームズくん、立てない、もう立てません。ゴングが鳴りました。ノックアウトです!」


翼「一方的な試合でしたね、紬さん。」


紬「はい、これもまた貧すれば貪するの典型的な例なのかも知れません。」


翼「貧すれば貪する、貪すればますます貧するの負のスパイラル。」


男「あなたの言葉を聞いて自分がいかに自己中心的な人間であったかを思い知らされました。私はどうすれば良いのでしょう?」


桜「“奥さんにすべてありのままに話すのです。そうすれば奥さんの犠牲を防ぐことができます。“」


紬「私、良いこと考えついちゃった。うちらの時代も旦那の稼ぎだけで生きていけるほど甘くない。奥さんも稼いで2馬力になれば年に1度のプレゼントぐらい何とかなるんじゃない?」


翼「確かに。うちのママも働いてるしね。」


紬「チャッピーくんに訊いてみたら、この時代、女性の新しい職業として脚光を浴び、そのスキルがあれば引く手あまたの業界はタイピストです。」


桜「おお、それは Nice Idea!」


 ナイスアイディーアだけ聴き取れたジェイムズは期待するような目で桜を見た。桜は高速で入力し、ジェイムズに見せた。………… “時計を売るなら、そのお金でタイプライターを買いなさい。足りないなら借金しても元は取れる。奥さんがタイピストとしてデビューすれば格段に世帯収入は上がるから。そして、あなたも家でタイピングの練習をすると良いわ。そのスキルがあればキャリアアップ転職も夢じゃなくなる。こうやって夫婦で生活を戦い抜く戦友の関係を築くことができれば、あなたたちの未来は明るいでしょう。“」


翼&紬「ブラボー!ブラボー!(拍手)」



 ガッツポーズを決める桜と拍手している翼と紬の身体が半透明のアストラル体に変化した。


桜「いやん、いっちゃう。」


紬「おまえがその役を取るな!」


タイプライターを実用化して全世界に普及させたレミントン社はガンメイカーでした。タイプライターにも兵器の側面があるのは、情報戦に投入されるからです。典型的なのは「ドラキュラ」におけるミナ・ハーカーの立ち振る舞い。情報参謀としての彼女がいなければドラキュラを追い詰めて討伐することはできなかったかもしれません。

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