アメリカからヨーロッパへ、19世紀なのでトイレの心配はありません
枯葉を除去して蓄光スター。ジョンシーさんの創作欲に火が付くかもしれません。
工作を終えた3人は、治安の良さそうな場所にある高そうなホテルを目指した。何かあるときに対応できるよう、それぞれタクティカルライトを手にしている。
桜「移動時間が長いと危険だから近場で探そう。」
翼「さっき即席ファンシーショップを開いた公園の近くにあったよ。名前はホテル・マールトン。新築っぽい感じで清潔感がある。」
紬「清潔第一!そこにしよう!」
どうみても外国人の3人なので、フロントを安心させるために3人は宿代を前金で支払った。
桜「ふう、そろそろお腹が空いたわね。」
翼「外食はNGだからね。フリーズドライ一択。」
紬「私、フロントに行ってお湯をもらってくる。部屋でお茶会をするから大量に必要といって。」
翼「英語で言えるのか?」
紬「ウィー・メイク・ア・ビッグ・ティーパーティ。ウィー・ニード・プレンティ・オブ・ホットわら。」
桜「なんでwaterだけ“ワラ”となんだよ。」
紬「終わり良ければすべてよし。」
桜「スイートルームでベッドが3つあって良かったね。」
翼「スイートって随員という意味なんでしょ。召使いのベッドはレベルがちょっと下がるかな。」
桜「お湯の手配に行ってる紬が一番随員っぽいので、あいつが今夜の随員で決定だ。メイドの紬さん。」
翼「確かに。あの髪色とメガネ、圧倒的メイド感がある。」
紬が戻ってきた。
紬「お湯、持ってきてくれるってよ。私の英会話能力が3上がった。」
桜「良くやった、紬よ。おまえの今宵のベッドはあそこだ。」
3人はお湯を運んでくれたスタッフに豪快に1ドルという破格のチップを渡したので、スタッフは平身低頭しながらスキップで戻って行った。スイートルームの宿泊代は15ドル。チップも含めて支払ったのは16ドル。まだ54ドルある。3人は思い思いのフリーズドライ食を堪能し、明日以降の作戦会議をした。
桜「結束バンドで留めても葉っぱ自体が枯れてるからそのうち吹き飛ぶ。」
翼「ミイラをつなぎ止めているようなものだからね。」
紬「関心を葉っぱから別のものに移すのが一番かな。」
桜「何かアイディアありそうね。」
紬「ふふふ、はっはっは、この日のために温存していた蓄光髪飾り、星形のこれを3つ合わせると放射状の模様にして壁に貼ると、夜に輝く謎のモニュメントになるよ。」
桜「おお、それは落ちそうな枯葉よりずっと生きる力を鼓舞しそうだ。」
紬「明日になったら壁に工具で穴を開けて固定しよう。枯葉さんは場を提供するた退場してもらう。」
翌日、3人はスーとジョンシーのアパートから見える壁に工具で穴を穿ち、蓄光髪飾りからピンを取り外した本体部分を三角形のシンボルのように壁に貼り付けた。」
桜「良し、これでOKだ。これが日暮れに輝くと、ジョンシーさんの心に明日への希望が生まれるよ。」
翼「うちら、これで次の転移先に飛ばされる予感。」
桜「あ、来た来た来た...」
紬「あ....いっちゃいそう...」
翼「だから、それやめい!」
桜「さて、ここはどこだ?」
翼「いかにもなヨーロッパ臭さ。大聖堂っぽいのもあるし。」
紬「でも、あの汎用ヨーロッパではないね。実在の街の雰囲気がある。」
翼「周りの人の言葉、ドイツ語っぽくてドイツ語じゃない。わかりそうでわからない感じ、難関大学用の四字熟語でいうと隔靴掻痒。」
桜「あ、あれは!」
紬「露骨にあれでしかない。」
翼「待たれよ、皆の衆。キャラしか知らなくて話がわからんやつなので調べる。………… え、これイギリス人が書いた英語の児童文学なの?作家のウィーダって人、字を見ても1ミリも記憶にない。」
桜「アニメになってキャラと台詞だけ有名になったってやつだ。」
紬「ってことは、あの少年、英語でいけるんじゃ?」
翼「周りのみんなが現地語を喋ってるのに?」
紬「うん、周囲は音声も含めて風景、主要キャラの台詞は英語。」
桜「うん、一理ある。試してみよう。………… Hey boy, you have a fine dog!」
突然話しかけられたネロは一瞬キョトンとした顔をしてから、笑顔で答えた。
ネロ「Thank you, Miss! This dog is called Patrasche.」
紬「通じましたな。」
翼「とりあえず、ここは顔つなぎの場としてこのままスルーして今後の作戦を考えよう。この後のスとーリーも共有しておきたいし。」
桜「そうだね。とりあえず銀行へ行ってドルを換金しようか。無一文だと何かと不便だし。」
3人は銀行へ行ってとりあえず20ドルを換金して100フランを手にした。路銀にはこれで足りるだろう。
桜「さて、軍資金も手に入ったのでホテルを確保しよう。よく見るとけっこう立派な街だね、アントワープ。」
翼「治安も考えて人通りの多い中心部が良いよ。」
紬「あそこはどう?王宮前広場。」
桜「最高の立地、あそこに決めよう。英語通じるかな?」
翼「ホテルだから通じるでしょ。」
3人は前金で30フランを支払い、ベッドが3つある立派な部屋に入った。
桜「さて、ウィキの騎士よ。あらすじを共有してくれたまえ。」
翼「ネロは聖母大聖堂にあるルーベンスの絵画を見たいと願ってるお絵かき少年。お爺さんと犬と貧しい小屋で暮らしてる。この後、不幸が続いて牛乳運搬の仕事も失い、お爺さんも死んで、家賃滞納で住処も失う。」
紬「うわあ、作者の性格の悪さが...」
翼「ネロの最後の望みは絵画コンクール。しかし渾身の力作だと信じていた絵は落選し、ネロは絶望。ここでまた作者の意地悪が炸裂。ネロは拾った財布を届けてかつての家主に感謝され、落選した絵も高名な画家たちに評価された。しかしすべては手遅れで、みんなが知ってるあのラスト。」
桜&紬「パトラッシュ……ぼく、もう疲れたよ。」
翼「胸くそ満載ですな。」
桜「あれこれ小細工しないで、カネで殴って解決しよう。」
紬「お、出たぞ、大令嬢のお言葉。」
翼「金策は?」
桜「ここは富裕層がいる街のようだから、お宝の蓄光髪飾りを高価格帯で売る。」
紬「残り17個。売り切れごめんでレア感をあおる。」
桜「宿泊費が30フランだから、そのくらい出せるだろ、富裕層。それで行こう。」
翼「全部売れれば510フラン。良くわからないけどたぶんけっこうな額なんじゃね?」
桜「そのお金でネロの住居と生活、そして美術学校の学費を捻出しよう。たぶん美術学校の教師に才能を認められる。」
紬「そうと決まればさっそく決行。ちょうど王宮前広場にいるから場所も最適。」
翼「この制服の上着を脱いでブラウスの上にアウターレイヤーを着ると、フードも付いていて賢者っぽく見えないか?」
桜「良いね、微妙に顔を隠しながら一言も喋らず、ポップだけで売る。」
桜「売れた!あっという間に完売だ!」
翼「恐るべし、蓄光の威力」
紬「510フラン...なんか手渡すのにキレが悪い。500フランにしない?」
桜「まあ、物語ならそうなるよなあ。商品価格じゃないんだから。」
翼「ネロにお金を渡して胸くそ案件を片付けたら、アントワープ土産を買って帰ろう。」
紬「いいねえ。転移の試練にも楽しみがなくっちゃ。」
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女神「あいつら...ちゃっかりしてんなあ。」
青水「はっはっは、現代JKはこうでなくてはな。」
翡翠「何も悪いことしてないし、クレバーな立ち回りだと思いますよ。私もときどきお土産買ってました。」
女神「そういえば私もだ。はっはっは、みんな考えることは同じか。」
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カネはできたがネロの居場所を見つけ出すのが一苦労だった。幸いアントワープはフランドル語の他にフランス語ができる人も一定数いたので、モブの通行人から犬を連れた牛乳運搬の少年の情報を得ることができた。
桜「これで渡しに行ける。」
翼「翻訳アプリで作った手紙も手書きで書いたし、あとは謎の女神の光臨だね。」
紬「女神に遣わされた女神...ちょっと微妙な位置づけだけど、感謝パワーを浴びに行こう。」
感動のシーンは割愛してもかまわないだろう。働かないで絵の勉強に専心できる。こんなサプライズは誰も予想していなかった。大令嬢の傲慢な発想が生んだハッピーエンドだ。
桜「お土産何にする?」
翼「ベルギーといったらワッフルしか思いつかない。でも食べ物は絶対イヤ。」
紬「あのお店、レースの刺繍を売ってるよ。」
桜「あ、かわいい...と思わずJKの決まり文句を言ってしまったけど...」
翼「上品ですわね、あの細やかで精緻な工芸の極み。」
紬「おほほほ、行って見てみましょうよ。持ち帰ったらきっと映えますことよ。」
桜「貴族のレディーが“映える”なんて言わないだろ。」
女神「買い物は終わったか?そろそろ転移させるぞ。心残りはないか?」
桜&翼&紬「オッケでーす!」
ネロくん、「疲れたよ」なんて言わせないよ。札束で殴ってやります。あ、でも紙幣じゃなくて硬貨だったら鈍器殺人事件になっちゃいますね。」




