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転移しまくるJKトリオ――港区の実家は太い  作者: 青い水


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23/47

準備万端で転移した先は世紀末のニューヨーク

転移も3回目となると準備万端ですね。チート能力はないけれど、どこに転移しても女神の加護でスマホだけは使える、これはある意味チートかも知れません。

自宅へ帰り、夕食と風呂を済ませたJKトリオはLINE会議を始めた。


桜「きのうでだいたい準備は整ったと思うけど、何かある?」


翼「下着じゃない着替え。前回、みんな好き勝手持ってきたじゃん。でもうちらのリュックのスペースは限られてるので、重量と容積が最小のものを持ち込むべきかなと思って。」


紬「私が持ち込んだジャージ、モフモフで空気を含んでいるから体積がやばかった。」


桜「体積と重量を最小にしてパフォーマンスを高めるとなるとやっぱり登山グッズかな。明日もモンベルに行こう。」


翼「検索したらレイヤリングという概念が出てきた。重ね着のこと。ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤー。転移先の気温が何度なんかわからないけど、もし20度ぐらいならスポブラの上にベースレイヤーだけでOK。15度を下回るとミドルレイヤーで安定。寒冷地だとアウターレイヤーを羽織ることで体温調整が最適化。」


紬「私もネットで見た。すごく小さくなるし軽いので持ち運びに便利。」


桜「なら明日の転移には私服は持ち込まないで、モンベルでジオラインのレイヤーセットを買おう。あと、トラベル圧縮バック。」


翼「それで転移先の衣食住はバッチリだね。」


紬「キャンプの機能性ウェア、すごい性能だ。学校の制服もこれで良いかも。」


桜「それじゃ女子高生じゃなくて忍者部隊になっちゃうよ。」


紬「忍者みたいに動き回れるように靴も新調しよう。」


翼「モンベルで買うとするとトレランシューズかな。画像を見た感じだと、機能性は高いけれど街歩きでも悪目立ちしなくてふつうにかっこいいよ。」


桜「モンベル課金勢になっちゃうけど、機能性は捨てられないね。」


************************************


女神「さて、あいつらが転移先でどんな姿になるのか楽しみだな。」


青水「現代JKくノ一。」


翡翠「くノ一といえばミナさんとルナさん、いつも大活躍してくれましたね。」


女神「アイドルでくノ一、しかも17世紀人という、設定盛りすぎデュオ。いつもユニゾンで“ミナルナ!”とコールしてたな。」


翡翠「ロリータ編ではハリウッドデビューまでしてました。」


青水「今回のJK旅団は特殊技能が何もないからそういう大活躍は期待するなよ。」


***************************************


 翌日の日曜日、3人は9時に渋谷に集合した。


桜「まだモンベルは開かないけど、とりあえずコインロッカーを確保しよう。脱いだ靴とか中身を抜いたカプセルとか、嵩張るものは置いていく。」


翼「そのあとはコンビニでお菓子などを購入。これは転移先で賄賂にも使えるから吟味して買おう。」


紬「転売用のファンシーグッズ、今回はペンダントとブレスレットで攻めようと思う。ハートワンのブレスレット、100円でめっちゃ種類があるから、転移先の文明にもよるけれど、10倍くらいで爆売れすると思う。」


桜「投資額1万円で10万円、ボロ儲けですな、越後屋さん。」


 3人がモンベルで予定していた買物を済ませてからカフェで転移前のお茶会をしているとスマホのタイマーが鳴った。JK旅団は前回と同じ道玄坂から入った百件店へ向かった。都会の喧噪とは異質な、隠微な感じのスポット。先に進めば円山町のラブホ街があり、通る人々はできるだけ気配を殺して風景に溶け込もうとしている。人に見られたくないので必然的に目を伏せて速歩で通り過ぎるから、エーテル体になって消える3人にとっては絶好のスポットだ。


桜「来た来た~!」


翼「We are coming!」


紬「やめなさい!」



桜「ん?ここはどこだ?」


翼「日本ではない。現代でもない。でも中世や近世でもない。」


紬「みんな英語を喋ってるよ。」


桜「ここはイギリスというよりアメリカっぽいな。建物の雰囲気が。」


翼「ロンドンだと歴史的建造物があちこちにあるけど、ここは似たようなスタイルばかり。大都市であるのはわかる。」


紬「アメリカの大都市っていっぱいある。まあとりあえず歩いてみよう。犬も歩けば棒に当たるんだから、女子高生が3人もそろって歩けばイベントに当たるかもよ。」


桜「女神の設定ではイベント付近に転移させてるからね。」


翼「あ、街路表示があった。えーと、グリーンウィッチ?」


紬「それグリニッジビレッジだから。」


桜「あー、なんとなく聞いたことがある。」


***************************************


翡翠「グリニッジビレッジですか、ニューヨークの。ロリータさんをミュージシャンとして独り立ちさせるため、あそこに合宿所を借りていました。ミナルナさんやJK隊のみなさんと。そういえばメロさんがミュージックパブを開いてました。わあ、懐かしい。」


青水「この家だな。」



挿絵(By みてみん)



翡翠「そうです。寝室は全部で12、サロンや遊戯室もあって、屋上にプールもあったんですよ。」


女神「ロスチャイルド財団とのコネを使って家賃も破格の500ドルにまけてもらった。」


翡翠「はい、財団とのコネはロリータさんのプロモーションにとても役立ちました。」


女神「というようなゴージャスな話とは違い、うちらのJK旅団はグリニッジビレッジのあまり裕福そうではないエリアに迷い込んだぞ。」


************************************


桜「このあたり、あまり日当たりも良くないし、建物も古いわね。」



挿絵(By みてみん)



翼「今西暦何年なのかな?」


紬「あそこに古新聞が落ちてる。………… 1899年て書いてある。」


桜「まあ世紀末なんだろうけど、パリでもウィーンでもないからどうでも良い話。」


翼「ともかく検索してみるよ。何かヒントが見つかるかも。………… ここはアメリカの若手芸術家が集う街みたい。画家、音楽家、詩人...」


紬「若手芸人は売れるまで大変。」


桜「どっちも“芸”の字が付いてるけど全然関係ないからね。」


翼「そうだ。うちらお金持ってないじゃん。あそこの公園で店を開こう。」


紬「この時代の1ドルって....よくわかんないけど、たくさん持ってきたブレスレットは1ドル、ペンダントは2ドルで安く売ろう。若手はどうせカネ持ってないし。」


桜「OK、じゃあささっとターブを設営してポップも書こう。」



挿絵(By みてみん)



桜「Please everyone! Come and see them!」


翼「Find your favorites!」


紬「Sparkling specialities from somewhere special!」



桜「文化祭の英語劇と模擬店を同時開催だ。」


翼「ペラペラと話しかけられたら読ませるように、“この子たち、英語がほとんどわからないので質問しないでね”とスマホですぐ出せるように仕込んだ。」


紬「英語のペラペラ超苦手。死ぬまでできるようになるとは思えない。」



桜「飛ぶように売れたね。若手なのに無理しやがって。」


翼「裕福そうな女の人が大人買いしていったよ。色違いのをごっそりと。ほら、10ドル紙幣だよ。」


紬「在庫はまだあるけど、このあとどこに転移されるかわからないので、これにて閉店だね。」


桜「いくらになった?」


翼「70ドル。」


桜「どのくらいの価値かわからない。翼、チャッピーくんに訊いてみて。」


翼「んーとね、25万円~30万円ってとこだって。」


桜「お、すごい。もし今夜はお泊まりということになっても高級ホテルに行けそう。」


翼「20世紀が近いからって、レストランには行かないわよ、私。」


紬「安全第一、ケーキも食うな。」


桜「さて、カツアゲに遭うといやだからさっさと離脱しよう。空模様も怪しくなってきた。」


翼「見て、あの女の人。なんかすごく思い詰めた顔をして歩いてる。」


紬「私のアホ毛センサーがイベントを察知した。」


翼「桜、高速入力で何か良い感じに声かける台詞を作って。」


紬「私が即興で足止めする。………… アテンション、プリーズ!」


翼「.......やりおった。」


桜「“何だかとっても心配そうな様子だったので思わず声をかけてしまいました。困りごとがあったら、私がスタートと言ってから話してください。”……はいスタート!」


女性「私のルームメイトが病気になって、私たち画家なんですけど、絵も売れないし、生きる気力を失ってるみたいで...」


紬「あ、それ中学校の英語で習ったやつっぽい。」


翼「最後の一葉!」


桜「(高速入力で)“ひょっとして窓から外ばかり見ていて、あの枯葉が落ちたら私も死ぬとか言ってませんか?”」


 女性は驚いた顔で妙なケースのような物体に次から次に文字を表示させる桜を見た。まるで宇宙人に出会ったように。」


紬「まあ、これでも食べて落ち着きな。メントス。」


翼「それって落ち着くのか?むしろ逆じゃないの?」


紬「コーラを飲まなきゃ大丈夫。」





女性「ありがとう。ミントの心地よい刺激で少し落ち着きました。」


桜「“私たち、これから一緒に行って、とりあえずしばらく落ちないように工作します。抜本的解決は明日までに考えますね。”」


女性「できるんですか?」


桜「“はい、単純です。とりあえず落ちない程度の工作は秒でできます。”」


女性「ではよろしくお願いします。私はスーと言います。病で伏せっている友だちはジョンジーです。」


桜「“我に任せよ、そこな乙女!”」


翼「どうした、桜、急にナイトが憑依したか?」


紬「きっと結束バンドで葉を固定する気なんだよ。」


桜「その通りじゃ、はらからよ!」


翼「それじゃちゃっちゃと工作して明るいうちにホテルに入ろう。ニューヨークで日が落ちてから女の子3人が歩いてると危ないからね。」



 3人はスーに連れられて古いアパートの部屋に入った。画材が散乱し、イーゼルに描きかけの絵が放置されていた。ベッドには熱で呼吸が荒くなっているジョンシーが横たわっている。そしてそのベッドから見える窓の先にある古い壁にはツタが這っていて枯葉がぶら下がっていた。


紬「スーさん、さっきのメントスの残り、全部あげるからたまにジョンシーさんにも食べさせて。気持ちがスッとするから。」


翼「それからこのグミもお見舞いだよ。口の中が甘酸っぱい果樹園になるので、少しの間は苦しみが休まるんじゃないかな。」


桜「よし、目標物を確認したので作業開始だ。」


 桜たちが階段を降りると酒臭いおじさんとぶつかりそうになった。クマのような風貌だ。


桜「エクスキューズミー、ミスター!」


男「アン?ガールズ・イン・ユニフォーム?」


紬「アンガールズではない。」


翼「ちょっと、紬、ややこしくしないで。」


桜「“私たち、あの葉っぱが落ちないように工作します。おじさんは寒い雨に濡れて壁に絵を描かないでください。それで肺炎になって死んだりしたら、スーさんもモヤモヤしますから。」


男「お、おう、わかった。」



懐かしい。中学校の英語で誰もが読んだことがあるエピソード。JK旅団はこのあとどうするのでしょう?

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