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転移しまくるJKトリオ――港区の実家は太い  作者: 青い水


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19/39

待って!最後の下着まで脱いじゃダメ!

ラプンツェルをハッピーエンドに導いたかと思ったら、前に来た汎用ヨーロッパ中世村に転移しちゃいました。

桜「あれ?ここは赤ずきんとかが出てきた村じゃない?」


翼「ホントだ。女神、場所を使い回す気だな。」


紬「制作費削減か。」


桜「あ、あそこに貧しそうな女の子がいる。」


翼「わざと私たちに見せつけてるってことは、あれが次のイベントかな。」


紬「あ、今気付いたけど、勝手にJK制服に戻ってる。」


桜「女神のくせに制服好きって、おっさん臭い。」


翼「あの子、手にパンを持ってるよ。何か最後の食糧って顔してる。」



 少女に同じように貧しい身なりの男が近づいた。



男「ああ、お腹が空いて死にそうだ。何か食べるものくれないか?」


少女「このパンで良いならどうぞ。神の祝福がありますように。」



桜「あの子、大事にとっておいたパンをおじさんにあげちゃったよ。」


翼「カツアゲしたわけじゃないから良いんじゃない。善意からの施し。」


紬「さすがキリスト教徒、小さいのに神の祝福とか言ってる。」



 おじさんが去ったあと、次は子どもがやって来た。


子ども「頭が寒いよ。何か頭にかぶるものちょうだい。」


少女「この頭巾で良いならどうぞ。」


 子どもはありがとうも言わずに頭巾をかぶって満足そうに去って行った。また別の子どもがやって来た。


子ども「寒いよ寒いよ、服がないから寒くて死にそう。」


少女「かわいそうに。私の上着で良かったらどうぞ。」


 子どもは上着を着て満足そうに駆け去った。そこに女の子がやって来た。


女の子「下半身がスースーして寒い。何かちょうだい。」


少女「私のスカートで良いならどうぞ。」


 女の子はスカートを履いて、スキップして去って行った。



桜「あ、これあかんやつだ。」


翼「善意を利用してすべて奪い取る。」


紬「あの子、もう下着1枚だよ。」


桜「もうこの時点でコンプライアンス的にアウトだ。」


翼「AIは画像生成を拒否するね。」


桜「あ、女の子がどこかへ行く。」


翼「あっちは確か森だったはず。」


紬「あんな格好で森になんか行ったら危ないよ。」


桜「行こう。ほっとけない。」



 森の中に女の子はいた。そしてまた善意のカツアゲに遭っていた。



謎の子ども「なあ、その下着をくれよ。」


桜「待った!それ以上はダメ!」


翼「児童ポルノ法違反で逮捕する。」



 女の子がスリップを脱ごうとして胸までたくし上げたとき、満天の星空が一瞬輝いて、空から金貨が降ってきた。謎の子どもは消えて、女の子だけが残った。



紬「あー、この既視感...星の金貨だね。」


桜「全裸の覚悟を決めたら超リッチになる。」


翼「ねえ、何だかいやらしい意味になりそうだからそれやめて。」


紬「これは...試練だったんだね。女神はこれを見せたかったんだ。」



桜「あ、また転移しそう。」


翼「うん、何度もやってると、アストラル体になる前にむずむずしてわかっちゃうね。」


紬「あ、いっちゃう、みたいな。」


桜「おい、言い方!」



翼「あ、ここは前に来たギリシャ神話っぽい場所だ。」


紬「女神はまた使い回しだ。」


桜「ということは、またショートだな。」


紬「サクッと終わらせて次行こう。」


桜「次をこなしたら東京に帰れる気がする。」



 3人はしばらく歩くと、美しい泉の畔に出た。美少年が複数のニンフたちにモテまくっている。だが美少年は意に介さない。



挿絵(By みてみん)



紬「あ、私の大好物だ。泉と美少年といったら...ナルキッソス!」


桜「モテまくってるみたいだけど、ちっともうれしそうじゃないね。」


翼「古代ギリシャ語だから何言ってるかわからないけど、たぶん、ウザいからあっち行け、みたいな感じ?」


桜「あー、あれはないわ。美少年を鼻にかけて女子に辛く当たるタイプ。」


紬「いや、そこが良いのです。わかんないかなあ。」


翼「あ、ついにキレてニンフたちを押しのけた。」


桜「うーわ、暴力男。」


紬「暴力までは行ってないでしょ。こっちに入ってくるなという意思表示。」


翼「紬の特異で危険な性癖。」


桜「ニンフたちを追い出して一心不乱に泉に映った自分を見てるよ。」


翼「あ、元祖ナルシスト。」


紬「受験生になる君たちに教えておくけど、英語ではnarcissist、“シ”がひとつ多いからね。」


桜「得意分野への異常なこだわり。」


紬「あ、思い出した。これあかんやつだ。」



 紬は泉の畔で這うようにして水面を凝視するナルキッソスに駆け寄った。



紬「Non non, mon beau garçon, tu vas mourir!(ダメだ、美少年、死んじゃうよ!)」



とっさに出た紬のフランス語、火事場の馬鹿力は、もちろんナルキッソスには通じなかったが、たぶん日本語で言うよりは響きから何を言いたいのか伝わったのだろう。ナルキッソスは振り向いて紬を確認した。紬は泉に手を突っ込んで、風呂に入る前のようにかき混ぜた。水面は乱れ、そこに映し出されていた風景は壊れた。紬はスマホを出して、ナルキッソスの写真を撮った。大胆だ。本人の目前で盗撮だ。紬はナルキッソスの写真を指差して、それからナルキッソスを指差し、これがあなたよ、と伝えた。紬はそれから石を拾ってきて泉に落とし、深く沈む様をナルキッソスに見せた。そして、両手で×印を作って、ここに入ったら死ぬぞと警告した。警告が効いたかどうかわからないが、ナルキッソスは首をひねりながら帰って行った。


桜「あいつ、何やってた?」


翼「落ちたら死ぬぞって伝えたかったんじゃない。」


桜「いつもと違ってすごく敏捷だったな。」


翼「推しの命がかかってたからね。」


桜「あー、また来そう!」


翼「アストラルになる~!」


桜「どこだ、ここは。」


翼「あきらかに日本だね。日本語が聞こえる。」


紬「でもたぶん昭和の日本だよ。走ってる車が違う。」


桜「本当だ。着てる服も違う。」


翼「昭和日本なら楽勝だ。」


紬「いや、違うね。うちらここでは文無しだよ。」


桜「何で?ペイペイが使えないのはわかるけど、財布に現金を持ってるよ。」


紬「今ここでそれを出すと、わけがわからない子ども銀行券にしか見えない。」


翼「あー、そうだった。渋沢栄一、まだお札になってない。」



ショート2本立てで目まぐるしかったですね。グリム童話には危険な箇所がたくさんあります。ちなみにグリム童話の「ラプンツェル」は妊娠しません。なにしろ本のタイトルが「子どもと家庭の民話」ですからね。

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