ラプンツェル、母は強しで漁師に転職していた
海辺の小屋、ようやく見つけました。
桜「あった、小屋だ。」
翼「中から女性と子どもの声が聞こえるね。ここで間違いはない。」
紬「翼は冒頭の挨拶で警戒心を解く。桜は状況の説明と質問を翻訳アプリで準備。」
桜「こっちはOK、翼は?」
翼「OKだよ。行こう!」
翼「Hallo, Rapunzel! Wir wollen dir helfen!(ハーイ、ラプンツェル!何か助けになることある?)」
桜「“あなたが魔女から追放されてこの家に住んでるということを未来の本で知りました。シングルマザーで双子を育てるって大変でしょ?私たちでできることがあったら言って。私たち、あなたの味方だよ。”」
ラプンツェル「まあ、助けに来てくれる方がいるなんて、神様に毎日お祈りしていて良かった。あなた、不思議な姿をしているけど、まさか御使い様ですか?」
桜「“いいえ、私たちは未来から来た旅人です。偶然にあの魔女の塔で、三つ編みを登る王子に遭遇したので、あなたの存在を知ったのです。王子は塔から落下して怪我をしました。私たちはお城の王様たちに王子の状況を知らせたので、今ごろ救出されているでしょう。”」
ラプンツェル「まあ、王子様がそんな危険な目に...」
桜「“そのうちあなたを迎えに来ると思いますよ。しばらく待って来なかったら、私たちがお城に迎えに行きます。この子たちのパパですから知らんぷりなんかさせません。”」
翼も結局スマホを持ち出して翻訳アプリに頼ることにした。
翼「“妖精さんがパンを持ってきてくれるという話だけど、子ども2人も抱えて足りないのでは?”」
ラプンツェル「幸いにもここは海辺、海岸に出れば魚も捕れるし、海藻も貝も拾えます。それで何とかやってこれました。もう漁師ラプンツェルといっても過言ではありません。」
紬「うわー、母って強いなー。あ、そうだ!網代だ!網代を教えてあげよう!」
桜「あ、それナイスアイディア。漁獲高を倍増、いや三倍増する仕組みだ。」
翼「“漁師ラプンツェルさん、私たちの国で開発された漁業の仕組みをお教えしましょう。その名も網代、要するに魚の通り道に罠を仕掛けて一網打尽にするのです。この海に注ぎ込む河口に仕掛けるのが一番です。”」
ラプンツェル「まあ、そんな仕掛けがあるなら、この子たちにお腹いっぱい食べさせてあげられますわ。河口にご案内します。」
紬「持ってきたTシャツをつないで網の代わりにしよう。」
桜「ナイスだ、紬。」
翼「私のタイツも提供するよ。」
桜「できた!“ラプンツェルさん、毎日ここに来て、魚を掬い上げるだけです。子どもたちも栄養満点の健康優良児になりますよ。”」
ラプンツェル「ありがとうございます。これで子どもたちにお腹いっぱい魚を食べさせてあげられますわ。」
紬「“そのうち王子も来るから、魚料理をご馳走してあげると良いですよ。女子力だけじゃなくて生産力!国を率いる女は国を豊かにできると強い。”」
翼「Hey, Ihr Zwilingskinder, wie heißt ihr?(ねえ双子の君たち、名前は何て言うの?)」
Kinder「Ich heiße Licht, meine Schwester heißt Luna.(ぼくはリヒト、妹はルナだよ。)」
翼「OK, Licht und Luna, ihr bekommt leckere Süßigkeiten aus der Zukunft. Probiert, bitte! (リヒトとルナ、君たちに美味しい未来のお菓子をあげるね。食べてみて!)」
コンビニのアンパンマンキャラメルコーンとミルクボーロ、3歳児でも安心して食べられるお菓子を口にして双子の目の色が変わった。そもそも海岸での生活で甘味の喜びなどほとんど経験できなかった。新しい味覚の世界に出会って、涙を流して喜んでくれた。
桜たちが談笑していると、固いパンと山羊のミルクを持って妖精がやって来た。
妖精「おや、珍しいね。ラプンツェルにお客かい?」
ラプンツェル「いつもありがとうございます。」
妖精「ふん、魔女様の言いつけだからやってるだけさ。お、双子はずいぶん育ったじゃないか。」
ラプンツェル「おかげさまで病気もせずに。」
妖精「どれ、魔女様に報告に行くとしよう。」
ラプンツェル「報告ですか?」
妖精「ああ、子どもが育ったら報告するように言われてるからな。」
ラプンツェル「まさか....この子たちを...」
妖精「あたしゃ何も知らんよ。報告するだけさ。それじゃあな。」
妖精はそれだけ言うと飛び去った。
ラプンツェル「ああ、どうしましょう?魔女はこの子たちをさらいに来るわ。」
桜「私たちが追い返してやるよ。」
************************************
女神「ああ、こりゃ荒事になるかもな。」
翡翠「魔女は子どもたちをどうするのでしょう?」
青水「そもそもだが、魔女はラプンツェルを独占したかったわけだ。赤ん坊から大人になるまで外の世界に触れさせずに塔に幽閉していた。異様な独占欲が魔女の行動原理。」
翡翠「いまいち理解できかねます。ただ手元に置いて独占したいだけなんて。」
女神「コレクターの欲望なのかな。歪んだ愛情なのかも知れない。まあいずれにしても迷惑な感情だ。」
***************************************
妖精が立ち去ってしばらくすると、天候が変わり、黒雲が立ち込め海が荒れ始めた。
紬「あれ?なんかやばい感じ。」
桜「だいたいこういうときって悪いことが起こるよね。」
翼「警戒しよう。」
雷鳴が轟き稲妻が光った。双子は怯えて母親にしがみついている。扉を叩く音がする。
ラプンツェル「どなたです?」
返事はなく、ドアが乱暴に開けられた。
魔女「ほう、なかなか美味そうに育ったじゃないか。」
ラプンツェル「帰ってください!」
魔女「ああ、その双子を連れておとなしく帰るとしよう。」
桜「ちょ、ちょっと!それ、誘拐だから。」
翼「私たちが阻止するよ。」
紬「熊に効くこのスプレーガンで。」
3人は熊スプレーを構えて魔女を威嚇した。
魔女「何じゃ、それは魔道具か?ふん、固まれ!」
魔女が短く呪文を唱えると、3人は金縛りに遭い身動きが取れなくなった。
桜「あ、それ逮捕監禁罪だ。通報するよ。」
翼「通報しても誰も助けに来ないけど.....」
紬「てか、動けないのでスマホも触れない。」
桜「え?詰んだ?」
魔女が勝利を確信したとき、背後から蹴り倒された。
王子「ラプンツェル!」
魔女は兵士たちに捕まり手足を拘束され猿ぐつわをかけられた。もう呪文は唱えられない。桜たちの麻痺も解けた。
ラプンツェル「ああ、王子様....見てください...あなたの子どもたちですよ。」
王子は双子に駆けより抱き上げた。知らない男性に抱き上げられたので双子は泣き出した。王子は苦笑いして双子を母親に託した。
桜「王子、ズルい。それヒーロームーブじゃん。」
翼「そーだそーだ、塔から墜ちてエンエン泣いてたくせに。」
紬「でも、ちょっとかっこよかったよ。」
桜「新米パパ、まあ頑張れ。」
王子「3人の美しき娘たち、我妻と我が子を守ってくれて本当にありがとう。」
桜「これまで放置した分、しっかり家族に尽くしなよ。」
翼「家族優先、仕事は二の次。」
紬「いや、それはそれでちょっとまずいから。ワークライフバランス頑張れ。」
桜「家族の再会でハッピーエンドみたいだから、うちらは帰るね。」
翼「そろそろお迎えが来そうな予感。」
紬「てか、もうアストラル体になりつつある。」
桜&翼&紬「アウフヴィーダーゼーエン!」
伊東線の駅名としてインプットされていた「網代」、定置網のローカルスタイルなんですかね。駅を通過するばかりで降りたことはありませんが、美味しい魚が食べられそうな地名です。ラプンツェルが王室に入ると、国の漁獲高が増えそうですね。




