ラプンツェルを探しに行くよ、でも、洗濯はお花を摘んでから
海辺というヒントだけを頼りにラプンツェルを探しに行くJK旅団。何が待ち受けているのでしょう?
桜「さて、私たちもラプンツェルを探しに行こうか。」
翼「海辺といってもざっくり過ぎてどこなのかわからない。」
紬「ここはメルヘンの世界だから、現実の地理は無関係なんじゃないのかな。」
桜「確かに。ドイツっぽいというだけで、この森の先がどうなってるのかもわからないし。」
翼「前に来た独仏混合の村は狭かったよ。村を出ると森、森に入るとすぐ物語のイベント。」
紬「シンデレラの城だって...いや、あれは女神の馬車で行ったから近いか遠いかわからない。」
桜「近いでしょ。だって乗ってすぐ着いたもの。」
紬「なるほど、距離の概念がご都合主義なわけね。」
翼「この森を抜ければすぐ海があったりして。」
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女神「あいつら、あんなこと言ってるけど。」
青水「概ね正しいんじゃないのか。メルヘンで移動時間が長すぎて途中でいろいろハプニングが起こると、聴いてる子どもたちが混乱して筋がわからなくなる。」
翡翠「そうですね。私も長編小説や現実の歴史に介入したときは、移動に手間取って話が長くなりましたが、こういう物語は小さな閉じた世界で起こるので、移動の苦労という概念はありませんでした。桃太郎の実家と浦島太郎の家もすぐ近くだったし、シンデレラの家とお城も分身は馬車も使わず簡単に行き来してました。」
青水「フランスの古典主義演劇では、三統一というルールがあって、舞台は同一の場所、出来事は24時間以内、筋はひとつだけ。そうしないと観客が理性的に楽しめないということだった。メルヘンのルールはこれに限定されはしないけれど、理屈は似てるかも知れない。JK旅団の移動は短く、新たなイベントの発生もないだろう。」
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桜「森を抜けて視界が広がったけど、海じゃないな。」
翼「広い丘陵地帯だ。」
紬「あの丘の上にお城があるよ。」
桜「ははーん、あれはきっと王子の実家だ。どうする?」
翼「王子が倒れていることを伝えてあげるのが良き市民の勤めだね。」
紬「うん、あのままあそこに寝かせておくと狼の餌食になるかもしれないし。」
桜「良し、行こう!」
翼は門番にたどたどしい挨拶をして警戒心を解き、次に桜の高速入力で状況を伝えた。事態の深刻さを理解した門番たちはすぐに事情を上に報告し、10人ほどの探索隊が組織された。廷臣らしき人物が出てきて、JKトリオを場内へいざなった。
廷臣「王が謁見をお許しになるそうです。どうぞこちらへ。」
桜「“ありがとうございます。ただ、見ておわかりのように、私たち、異国の人間なので謁見のマナーを知りません。マナー違反があっても牢につないだり首をはねたりはしないでくださいね。”」
廷臣「もちろんです。王も王妃もお優しい方々、王子の危機を知らせてくれた恩人にそんなひどいことをするはずがありません。ご安心を。」
玉座の間に通された3人は、優しそうな微笑みを浮かべた王と王妃に出迎えられた。
王「我が城に良くいらっしゃった。愚息の危機を知らせていただいたこと、感謝します。」
王妃「あなたたちのご厚意がなければ息子は命を失ったかも知れません。感謝してもしきれません。」
王「何か褒美を取らせたい。欲しいものはあるかね?」
桜「私たち、見ての通り、旅人です。安心して旅を続けられるよう、この国の地図が欲しいのです。道に迷うと命の危機に通じますから。」
王「なるほど、たしかに旅人には地図が必須だな。よろしい、家臣に用意させるので、別室で茶を飲みながら待たれよ。」
翼「Wir bedanken uns, Ihre Majestät!(感謝いたします、陛下!)」
紬「やった、地図ゲットだ。RPGでよくあるやつだ。」
3人は別室でお茶を飲みながら、しかし菓子には手を出さずに待っていると、やがて家臣がいかにもゲームに出てきそうな地図を持ってきて、うやうやしく3人に渡した。JKトリオはそれを受け取り、王と王妃に暇を告げた。そして、ふと思いついて王妃にだけこっそり伝えた。
桜「“王子のママ、あなたの息子さんは激しい恋の虜です。おそらく怪我が癒えれば思い人を探しに行くでしょう。止めないであげてください。ただ、落ち着いてしっかりと話を聞いてあげてください。素直な性格のようなので、きっとすべて打ち明けてくれると思います。”」
王妃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに柔和な笑顔で頷いた。
桜「良し、これで移動の問題は解決した。」
翼「地図の縮尺がわからないけどね。」
紬「森が真ん中に広がっていて、東にお城、森の中心から北に向かうと海だから、城と塔の位置を結ぶ直線と塔と海を結ぶ直線を二辺とする二等辺三角形の底辺を進めば最短だよ。スマホで東西南北はわかるし。」
桜「さすが、うちらの中で一番数学の点数が高い紬様。」
紬「うちらの中って、私立文系コースだから全然たいしたことないよ。」
桜「それではスマホと地図を頼りに進もう!」
翼&紬「おーっ!」
桜「そろそろ半分ぐらい進んだけど、小川が見えるので、ここでランチ休憩しよう。」
翼「朝に焼き魚食べただけだからお腹が空いた。」
紬「昨日から気付いていたんだけど、獣や鳥だけじゃなくて虫もいないね、この世界。」
桜「魚はいたんだけど、不思議だね。」
翼「猪が出たりすると物語が破綻するからじゃない?」
桜「なるほど、安全設計か。じゃあ、ここで着替えていこうか。」
紬「賛成!私、ジャージだけど、この世界じゃ悪目立ちもしないと思う。」
桜「小川があるから、今着てるジオラインメッシュのアンダー、ささっと洗ってささっと乾かそう。」
翼「待って。川に入る前に、私、お花を摘みたい。」
桜「なるほど、合理的ね。では乙女の花摘みタイムにしよう。誰も来ないと思うけど、1人が見張りに立って交替だ。」
紬「ラジャー!」
桜「では散開。私がここで見張りに立つよ。」
桜「ふう、スッキリした。思えば朝にニンフ遊びをしたとき以来、出していなかった。」
翼「溜めると膀胱炎になりやすいから注意だね。」
桜「さて、それでは洗濯タイム、始めますか。」
翼「いいね、高性能キャンプ用アンダーウェアの実力を見せてもらおう。」
JKトリオはささっと上下の下着を脱いで全裸になり、小川の中でハンドソープを使ってジオラインメッシュの上下をゴシゴシ洗った。そして、洗って絞った下着を手に持ってグルグル空中で回したら、嘘のように乾いた。
桜「おお、科学の素材、おまえの実力は十分に見せてもらったぞ。」
紬「これ、おいくらまんえんだったの?」
桜「ブラが6300円、ショーツが3800円。」
紬「ほお、きれいに1万円ちょいになった。3人分で3万円。桜に全部おんぶに抱っこでかまわないの?」
桜「かまわないよ。うちら、金貨を稼いだし、東京に戻ったら大きくプラスになる。」
翼「ありがてー。」
桜「さて、パンツとブラも着けたし、フリーズドライのリゾットも美味しくいただいたから出発しよう。」
小一時間ほど歩くと平野に出た。かすかに潮の香りも感じられる。
桜「海が近いね。」
紬「ね、ラプンツェルはここにある小屋で子どもを産むんでしょ?生活はどうしたの?食べ物、飲み物、最低限の着るもの...」
翼「魔女は追放したけど、死なれるのはイヤだったので、手下の妖精を使って食糧など最低限の生活物資を届けさせていたみたい。」
桜「なんかその先の陰謀の匂いがする。生まれた赤ん坊を狙っていたに違いない。」
紬「あ、それありえるかも。」
清々しいですね。お花を摘んでから全裸で洗濯。清々しい以外の何者でもありません。




