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転移しまくるJKトリオ――港区の実家は太い  作者: 青い水


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腹の中でゲリラ兵が蜂起、そしてポテトレヴォリューション

はい、白湯を飲んだくらいではリセットできませんね。良い教訓になりました。

***************************************


女神「時代によって味は進化するのか。そりゃそうだな。もっと昔は生のドングリとか食べていただろうし。」


青水「どこまで昔に遡るんだよ。」


翡翠「私、転移先ではできるだけ食べないようにしていました。衛生観念が違いすぎますから。」


青水「そうだな。消毒という概念ができたのは19世紀後半だ。そもそも水が致命的。」


女神「あいつら、白湯を飲んだくらいで細菌をリセットできたのだろうか?」


***************************************


桜「翼、トイレからなかなか戻ってこないね。」


紬「お腹痛いって言ってた。」


桜「私もなんとなく消化器が落ち着かない。胃腸薬を飲んでおこう。」


紬「旅先の水に注意とは良く言われていたけど、私たち、生水は飲んでない。」


桜「あの料理が原因かも。もう転移先の料理食べるのやめよう。」


 翼がふらふらと戻ってきた。げっそりしている。


翼「ふう、ひどい目に遭った。体内に侵入したゲリラ兵たちが一斉蜂起した。」


桜「はい、白湯と胃腸薬。」


翼「ありがとう。だいぶ落ち着いたよ。もう転移先のものは食べない。」


桜「落ち着いたら服を買いに行こう。」


紬「えーと、18世紀末、パリ、古着.....ダメだ、検索結果にろくなものがない。さすがにこんなニッチな目的だと日本語じゃ無理かな。英語で試してみよう.....あった、Halle Centrale(中央市場)、現在のレ・アルにあった何でも市場に古着屋がいっぱい出店してたんだって。貴族のお古を市民が買って着るシステムだったみたい。英語なので細かいことはわかんないけど、だいたいそんな感じ。」


桜「行ってみよう。それにしてもタクシーがないと不便ね。電車も走ってないし。」


紬「辻馬車フィアークルがあるよ。エキュ1枚を掴ませれば喜んで運んでくれると思う。」



桜「やっと着いた。馬車の御者、すごく愛想が良かったね。何言ってるかわからなかったけど、やたらとマドモワゼルって。」


紬「検索したらエキュ1枚で一般労働者の数日分の稼ぎに相当するらしいよ。」


翼「万札出して釣りはいらねえ、って感じだったのね。」


桜「古着の中でもわりと良いのが買えそう。」


紬「あそこ見て、古着の山だ。行ってみよう。」



 3人は古着の中から、臭いがきつくないものを選んだ。古着も食事と同じように衛生観念が違うので、着ると病気になりそうなものがたくさんあった。



桜「せっかく中央市場に来たので、今度はペンダントを10個売ってみよう。エキュが半分になっちゃったから補充しないと。」


翼「またポップを書いて沈黙商法。」


紬「幸福を呼ぶペンダント。」


 ターブの簡易ショップでペンダントは指輪よりも早く捌けた。手に取りやすい、汎用性が高いというのが理由だろう。3人は転売グッズの選択について知恵を付けた。



桜「10分もかからずにエキュが10枚、これで軍資金ができたね。」


翼「パルマンティエさんにジャガイモの美味しい食べ方を提案するための食材を買って帰ろう。」


紬「さっそく検索だ。作るのはポタージュとフライドポテト。えーと、すべて高級なものを選ぶとして、バターと生クリームとミルク、タマネギ、パセリ、タイム、塩と黒胡椒。なんだかうちら料理人になったみたい。」


翼「待って。ポタージュを作るなら漉し器が必要なんだけど。」


紬「これ以上は私たちじゃ無理ね。パルマンティエさんに相談してこの時代の人の知恵を借りよう。」


桜「それじゃ一旦ホテルに戻って着替えてから出発だ。リュックは目立つから、材料は買い物用のトートバッグに入れて運ぼう。」



挿絵(By みてみん)



桜「あ、辻馬車だ。あれに乗ろう。行き先はPlaine des Sablons。行き先を告げる役は紬だよ。」


紬「わかったわよ。ちょっと離れてるからエキュ1枚で大丈夫か訊くね。……プレーヌ・ド・サブロン....(エキュを見せて)...サヴァ?」


御者「ウィ、メドモワゼル、サヴァ・ビヤン!モンテ!」


翼「なんか超低コストの会話だった。」



 馬車に揺られてJKトリオはパリ北西部のサブロン平原に到着した。ここにパルマンティエは実験農場を持っていて、ジャガイモを栽培している。等間隔に並んだ緑の葉が広大な土地を覆っている。あれがジャガイモ畑だ。数名の兵士が畑を警備していて、その向こうで立派な服を着た男性が泥だらけになって畑作業をしている。



桜「着いたみたい。なんだか人がいっぱいいる。」


翼「なんか不穏な雰囲気だよ。兵士と睨み合ってる。」


紬「怒ってるね、あの人たち。良くわかんないけど、ポワゾンって聞こえたから毒って言ってるみたい。」


桜「ジャガイモを毒って言ってるのかな。たしかに皮を剥くときに芽をしっかり取らないと毒だって料理実習の先生が言ってたな。」


翼「パルマンティエさんみたいな人が出てきて、抗議している人たちと何か喋ってるよ。紬、何て言ってるの?」


紬「わかるわけないじゃない。毒じゃないってのは聴き取れたけど。」


桜「紛糾してるね。JKの笑顔で何とかならないかな?」


翼「3人まとめれば何とかなるかも。」


紬「介入する前にパルマンティエさんに見せる文章をスマホに準備しなくっちゃ。」


桜「おお、用意周到娘。」



紬「良し、できた。じゃあみんな、最高のJKスマイル!」


桜「みなさーん!こっち見てくださーい!」


 見てくださいという日本語がわからなくても、みんなが桜に注目した。


紬「Pas de battre, s'il vous plaît!」


翼「ノー・バトルよ、ノー・バトル!」


一瞬みんながあっけにとられている間に紬はパルマンティエの袖を引っ張ってスマホの画面を見せた。そこには、ジャガイモを驚異的に美味しく料理するレシピを持ってきたので、試食してもらうから1時間待つようにと書いてあった。驚異的に美味しく?パルマンティエは一瞬固まって、すぐに相好を崩して笑顔になった。パルマンティエは群衆に向かって笑顔で説明した。欺されたと思って1時間後に来てくれと。群衆は突然現れた笑顔がキラキラの少女たちに圧倒された感じでブツブツ言いながら去って行った。


紬「ラ・クィジーヌ、ウ?」


翼「わかんないけど、たぶんひどいフランス語なんだと思う。」


紬「通じれば良いのよ。」



 実験農場に敷設された実験室兼台所で、3人はとりあえずすぐに作れるフライドポテトの調理に取りかかった。エプロンがないのが残念だが、どうせ捨てる古着だからまあ良い。料理と無縁のJK3人だが、スマホの動画を参考に、理科の実験の手順で、極上のフライドポテトが完成した。


紬「スィルヴプレ!あ、その前に手を洗って!Lave les mains!」


 なんとなく文法が間違っているような気がしたし、思わず失礼にも親称の命令文を言ってしまったが、このビジュアルだから微笑ましいと思ってくれるだろう。


 パルマンティエは手を洗ってから1本を手に取って食べた。トレ・ビヤン!ベタな反応だったのは、相手を思いやってのことなのだろう。



桜「良し、大成功だ。調理法をパルマンティエさんと共有して大々的に広めてもらおう。簡単だし、きっと流行る。」


翼「フライドポテトをフレンチポテトと言ってた時代もあったらしい。」


紬「本当はベルギー発祥だからベルジャンポテトなんだけど、その名前では広まらなかったね、きっと。店で噛みそう。」


 桜が高速入力でパルマンティエに今後の展開を指示した。これから押し寄せてくる人たちに試食させて、レシピを丁寧に説明する。大事なのは牛脂を惜しまないこと。できるだけ上等な塩をかけること。試してみたいなら、いろいろソースをかけても楽しいかも。肉料理の付け合わせにピッタリ。中央市場で屋台をやれば大儲けのチャンスかもしれない。


 群衆がガヤガヤと言葉を交わしながら戻ってきた。3人のJKは満面の笑顔で大皿に載せたフライドポテトを持って試食サービスに努めた。さっきまで喧嘩腰だった群衆がみんな笑顔になった。警備の兵士たちもむさぼり食べた。パルマンティエは手書きでレシピを書いて、リーダー格の男に渡し、ジャガイモの山を指差して、「好きなだけ持って帰って良いんだよ」と言った。ジャガイモの山はあっという間に空になった。



挿絵(By みてみん)



 桜が再び高速のスマホ入力で、“明日はポタージュを作るので、ここに材料を置いていくけど、足りなくなりそうだからもっと買い足しておいて。それから漉し器を作りたいので、作り方を考えておいて。明日はポテトレヴォリューションの2日目だよ。”とフランス語に訳してパルマンティエに示した。彼は再びあっけにとられ、それから大いに喜び、跪いて桜の手に口づけした。


桜「良し、帰ろう...って、ここじゃ辻馬車が拾えない!」


紬「ムッシュー、On ne trouve pas de fiacre ici.」


 パルマンティエは笑顔で自分の馬車を呼び、3人を乗せてホテルに運んだ。


紬「ムッシュー・パルマンティエ。Peut-être, besoin de beaucoup de lait demain.」


桜「紬、何て言った?」


紬「ジャガイモを入れたシチューも良いかなと思ってミルクを発注した。」


桜「それなら鶏肉と人参もだろ。あと、あればブロッコリーとか。」


紬「はい、それは桜が高速入力で示してあげて。私のボキャブラリーは在庫が少ない。」


 パルマンティエは手帳にメモしてから、3人と別れて去って行った。


パリジェンヌに擬態してフライドポテトを振る舞うJKトリオ。なかなか様になっています。次回はレヴォリューション2日目。

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