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LAST ONE -Δ42-  作者: project pain


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6/6

決断

コウイチは再び病室に転送して戻ってきた。


「結論は出ましたか?」


あいかわらずオブザーバーは淡々とした言葉を並べる。


「あぁ、俺は彼女を助けたい。愛とか恋とか・・・、多分そんなんじゃないと思う。俺にしかできない事だったら、そうしたい」


「・・・そうですか。深層領域を共有すれば一度きりの人生、ラスト・ワンを選ぶ事になります。二度と若返る事はできません。それでも実行しますか?」


「あぁ」


オブザーバーはホログラフィを表示させた。


「ではこのスクリーンの承認ボタンを二度押してください」


コウイチは承認ボタンの一回目を押した。二回目を押そうとした時、オブザーバーの言葉がそれを邪魔した。


「一つだけ忠告します。深層領域を共有したからといって、彼女が一生あなたの側にいるとは限りません。今は近くにいるかもしれませんが、別れてあなたの所から離れていくかもしれない。それでもいいですか?」


「・・・構わない」


コウイチは二回目のボタンを押した。


その瞬間、周囲が光に包まれ、あまりの眩しさにコウイチは思わず目を閉じた。




──銀河中心の光が、観測窓を白く染めていた。


星々の奔流が渦を巻き、中心から吹き出すプラズマの帯が緩やかに横切っていく。その光景をブロンドの髪をした女性は窓から見ていた。そこへ監視員が報告を上げに来た。


「たった今、ラスト・ワン使用者が99,822人になりました、バートニック管理官」


「好きな死に方を選べるのが唯一の救いかもしれないわね」


「そりゃそうでしょうが・・・」


バートニックはひらりと踵を返した。


「さて、私も久々に潜ろうかな、100年くらい。起こさないでよ」


「承知しております。行ってらっしゃいませ」


そう言い残し、バートニックは肉体保存室へと歩いていく。静まり返った観測室では、銀河中心の白い光だけが変わる事なく壁面を染め続けていた。




目を開けてみると、並木道のベンチに座っていた。ユイは肩にもたれて、小さな寝息を漏らしていた。


「ん・・・」


ユイは目を起こして、周囲を見渡した。


「ここは・・・」


「俺達、戻ってきたんだ」


「それは見れば分かるけど・・・確か私、セーフゾーンで言われたの。深層領域がエラーを起こして、もう二度と普通の生活に戻れないって」


「俺が治したんだ。俺の深層領域を共有させて」


その瞬間、彼女は顔を真赤にして立ち上がった。肩が小刻みに震えているのが分かる。


「共有?!バッカじゃないの!あなた自分が何したか分かってんの?!あなたも死ぬのよ!死んじゃうのよ!」


「・・・これでいいんだ、これで」


その瞬間、ユイはうずくまって大粒の涙を流した。


「何て事するのよ・・・私なんかの為に命張る事ないじゃない・・・。私は・・・誰かの為って言い訳しながら自分を押し殺して、自分じゃない顔で生きてきただけ。そんな私に魂を共有される資格なんて・・・ないのよ・・・」


「な、一緒に行こう」


ユイに手を差し伸べると彼女はその手を取って立ち上がった。


「・・・・・・うん」


二人は並んで、並木道の先へ歩き出した。


「これからどうしたい?」


ユイの問い掛けにコウイチは頭を掻いた。


「ちゃんと大学に行って、いい職場見付けて・・・」


「ちーがーうー。私と何がしたいかって聞いてんの」


「えっと・・・誕生日のプレゼントを買ってあげたい」


「私はご飯作ってあげたい」


「夏は海に行きたい」


「一緒にお昼寝したい」


「結婚して、子供もほしい」


「・・・今のプロポーズ?」


「だったらどうするよ?」


「うん、よろしくお願いしますって答えてあげたい」


データではなく、記録ではなく、若返りでもない。


この先、ずっと一緒にいられる保証なんてどこにもない。それでも今は隣にいる。たった一度きりの、二人で選んだ未来がここから始まる。

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