3.魔獣の力
獣人間「くっ―――」
シェイン「さっきまでの威勢はどうしたよ。
まだやれんだろ?ほら、立てよ。
その程度で縄張りを主張してたのか?」
視界が揺れる。膝が笑う。
だが―――折れてはいない。
ーーーーーー
森を叩く衝突音。土煙。
最初の数合は、俺は確かに"押していた"。
いや、そう思い込んでいた。
刀の振り方なんざ誰にも教わってねぇ。
でも力なら誰にも負けねぇ。
なのに―――
(こいつ、防いでやがる…!俺の全力を、片手で安々と…!)
それでも何度もぶつかり、血が飛び、
シェインに一瞬だけ"隙"ができた。
(勝てる…!いや…)
その瞬間―――
俺の目の前に地を這う斬撃の波が見えた。
少しは食らうが何とか避けられると思った。
避けたはずが、身体が切り刻まれ、
視界が白く飛び、気がつけば仰向けで青空を見上げていた。
(何が……起きた……?)
隙は見せられた。囮だった。
それには気づいた。すぐに反応できた。
だけど、これが…この斬撃が本命の囮。
"そっちに意識を向けた瞬間、もう懐にいた"
理解が追いつかない速さ。
だけど理解できたことが一つあった。
(俺が弱ぇんじゃねぇ。
こいつが…こいつの方が化け物なんだ…
どれだけ強者と戦えばこの域までいけるっていうんだよ…)
ーーーーーー
獣人間「……まだだ。まだ終わってねぇ……!」
シェイン「ほぉ、アレだけ食らってまだ立つか。
だがそれ以上は止めとけ。死ぬ気か?」
獣人間「お前みたいな…強者とやり合って…
死ねるなら本望だ…!!」
シェイン「なら、俺がいつでもお前の首を掻っ切ってやるから。
だからよ…
お前の命、俺に預けてくれねぇか?」
獣人間「…んだよ…っ!意味わかんねぇ…何が言いてぇ…!」
シェイン「簡単だ。俺と一緒に来い」
口をパクパクさせるしかなかった。
強者の"誘い"なんて、想像すらしなかった。
そして――シェインは、唐突に言った。
シェイン「そういや、お前。名前は?」
獣人間「……銀の刃だ」
シェイン「ギンノヤイバ? 変な名前だな。じゃあ――ギンな!」
ギン「るっせぇ!! 勝手に略すんじゃねぇ!!」
シェインは豪快に笑った。
シェイン「いいじゃねぇか。名前までナンバー2みてぇでさ!」
ギン「ふざけんな!!」
シェイン「じゃあ決まりだ。
巨獣ギンノヤイバはここで死んだ。俺に殺されたんだ。
だから、今からお前は――俺の仲間のギンだ」
ギンは息を呑んだ。
久しく自分の"名前"を聞いていなかった。
呼ばれることも名乗ることもなかった。
出会ったらただ殺すだけ。
そんな俺の獣の力に怯え、恐れられ、追われるだけだった。
なのに――
(何なんだこいつ……
敵かと思えば……
次の瞬間には手を伸ばしてきやがる……)
乱暴で、無茶苦茶で、意味が分からない。
だが、不思議と胸が熱くなる。
ギン「……勝手に決めんじゃねぇよ、お前は誰なんだよ……」
そう言いつつ――
ギンはその名を、拒まなかった。
シェイン「そう言えばさ、ギン。
お前変な力使ってるよな?魔獣が戦ってるみたいな」
ギン「あ?あぁ、これのことか。
多分…祠を壊したせいだ…」
シェイン「なんで祠なんて壊したんだよ。普通やらねぇぞ?」
ギン「いや、その、まああんまり覚えてない」
シェイン「ふーん、そうかよ。まあいいわ。
とりあえず、町に行くぞ。
ボロボロで立つのもやっとなお前を連れ歩けねぇからな」
ギン「なあ、その、本当にいいのかよ…
俺なんて仲間にして…。自分より弱い奴仲間にして…何になんだよ」
シェイン「ごちゃごちゃうるせぇ。
黙ってついてきやがれ。
お前より強い俺がお前の力を見込んでやってんだからよ!」
ギン「……て…だら…いい…?」
シェイン「はぁ?なんだよ、聞こえねぇよ」
ギン「てめぇの名は何だって聞いてんだよ!!」
シェイン「あ?あぁ、名乗ってなかったな!
俺はシェインだ!これからよろしくな!」
こうして―――。
巨獣と恐れられた"ギンノヤイバ"は死に、
新たに"ギン"が生まれた。
二人の旅が、ここから始まる。
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