29.ノルヴァーン帝国
シェイン達は、アークスの攻撃隊とは一度離れ、
旅人としてノルヴァーン帝国に入国していた。
アークスが攻め込んでくるとは思っていないのだろう。
入国に制限などはなく、簡単に入ることができた。
ノルヴァーン帝国。
市民はあまり外を歩いていない。
代わりに兵士の巡回が多い。
通りを歩く兵士は口々に命令を交わし、通行人を厳しく監視している。
民の目はどこか怯えていた。
ギン
「なーんか、雰囲気わりーな。
アークス見てからだからそう思うのかもだけどよ…」
シェイン
「いや、気のせいじゃねぇよ。
こんだけ街に兵が出てりゃ息も詰まるだろうよ」
ギン
「こんだけ人が少なくて店とかやってんのかね?」
シェイン
「どうせ見てみねぇとなんもわかんねぇんだ。
商店街の方に行ってみっか!」
商業区、住宅区などあらゆる場所に赴いてみたが、
どの区画もどこか暗く重苦しい空気で押し潰されそうだった。
唯一明るさを感じられたのは、兵舎近くの酒場だった。
ギン
「なんか、兵士たちはすげー楽しそうだよな」
シェイン
「あぁ。これが国と民の関係性なんだろうな」
ギン
「―――なんかあっちの方、騒がしくねーか?広場の方か」
シェイン
「こんなに離れてても騒がしいのがわかるなんてな…。
ま、見に行こうぜ」
帝国兵A
「オラァ!お前ら!祭りの時間だぜー!」
帝国兵たちは歓声で湧いた。
その光景を市民は遠目に見ている。
場を回している帝国兵は、
汚れた服を着た人を踏みつけながら鼓舞していた。
そして、何のためらいもなく、剣を太ももに突き刺した。
苦痛にむせぶ声が響き渡る。
帝国兵A
「ヒャッハッハ!アークスのゴミクズ野郎が!
ほら!もっと!鳴きやがれ!オラァ!」
そこからは、
アークスの捕虜と思われる人物のうめき声が響くだけだった。
ギン
「な、なんだよこれ…!」
シェイン
「こいつら…!人の命をなんだと思ってやがる…!」
ギン
「止めに行くぞ!!」
シェイン
「待て!ギン!
今行ったら悪目立ちしちまう!」
ギン
「そんなこと言ってる場合かよ!
あいつ死んじまうぞ!」
シェイン
「ちゃんと考えてっから!少しは落ち着け!
許せねぇのは俺も同じだ…!」
ギン
「チッ…悪かったよ。で、考えってなんだ…?」
シェインは思いついた作戦をギンに伝えた。
ギン
「お前、頭いいのかと思ってたけど、案外バカなのか?」
シェイン
「うるせぇ。こんぐらいしかやれることがねぇんだよ。
つべこべ言わずに持ち場に行きやがれ!」
ギン
「へっ!わかったよ。また後でな」
ギンはシェインの元から離れていった。
シェインは羽織っていた外套のフードを深く被り、
群衆の影へと移動した。
捕虜はもう限界だった。
出血が酷い中、ずっといたぶられている。
帝国兵のエスカレートした一撃が振り下ろされようとした時。
彼らの周りに炎の球が着弾した。
帝国兵A
「ま、魔法か!?誰だ!やりやがったのは!
そっちの方だな!待ちやがれ!ぶっ殺してやるよ!」
炎の球の次は水の球が着弾。
それが四方八方から無数に放たれ、辺りは蒸気に包まれていた。
帝国兵A
「クソ!どこ行きやがった!
何も見えねぇじゃねぇか!!」
帝国兵B
「お、おい!捕虜もいねぇぞ!ヤバいって!全員探せ!」
ギンは蒸気で視界が悪い中、捕虜までの道をひたすら突っ走り、
抱えてその場から逃げていた。
シェイン
「おい!ギン!良くやったな!」
ギン
「結局はこれかよ!」
2人は走りながら称え合った。
シェイン
「とりあえずこの先の路地裏に行くぞ!
それまで頑張れ!ギン!」
ギン
「お前…!くそ…!かわりやがれ…!」
シェイン
「はあ…はあ…。ここまで来れば…一先ず安心だろ…」
ギン
「もう…動けねぇ…ぞ…?
おい、アンタ。意識はあるか?大丈夫か?」
捕虜
「あ……、あぁ……。なん…とか……な」
シェイン
「応急処置ぐらいはできっから、落ち着いたら話してくれ。
くそ…!あいつら……ぜってぇ許せねぇ…!」
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