28.舞台裏
招集は、思ったよりもあっさりと終わった。
熱を帯びた言葉も、血を滾らせる檄もない。
あるのは、淡々とした状況説明と役割の整理だけだった。
シェインとギンは会議場を後にし、
さっきとは違う道を選んで歩いていた。
そこは、さっきまでの表通りとは、まるで別の街だった。
石畳は欠け、建物の壁には応急処置の痕が残っている。
窓のない家、板で塞がれた扉。
人の気配はあるのに、声がない。
ギンが眉をひそめた。
ギン
「……同じ街、だよな?」
シェイン
「みてぇだな」
角を曲がると、小さな広場があった。
そこには、十数人の人間が無言で集まっている。
誰も喋らない。
誰も泣いていない。
ただ、動かない。
その中央に、布をかけられた木箱が並んでいた。
棺――ではない。
そんな立派なものじゃない。
シェインは、すぐに理解してしまった。
シェイン
「……駐屯地組、か」
ギン
「え?」
シェイン
「前線に派遣されてたギルド員の家族だろ」
それを聞いた誰かが、小さく笑った。
女だった。
年は若いが、目だけが妙に冷めている。
女
「よくわかったね」
シェイン
「……ま、みりゃわかる」
女
「そう…。
…抵抗した町の、ね」
その言い方には、恨みも怒りもなかった。
事実を並べているだけの声だった。
女
「帝国兵が来たの」
「うちは、戦闘ギルドの拠点だったから」
ギン
「……それで?」
女
「逃げろって言われたけど、逃げなかった」
「守ってくれるって、信じたから…」
2人は女の沈黙を暫く聞いていた。
女
「結果は見ての通り」
木箱のひとつに、女は軽く触れた。
女
「ねえ。私たち、間違ってたのかな」
シェインは答えなかった。
女
「抵抗しなければ、助かったのかな。
最初から、帝国に町を渡していれば……」
その言葉を、誰も否定しなかった。
否定できなかった。
遠くから、陽気な声が聞こえてくる。
酒場から歌声と笑い声が、風に乗って届く。
ギンが歯を食いしばる。
ギン
「……なんだよ、それ」
女
「ダリウスはすごい人よ」
皮肉ではない。
事実として、女はそう言った。
女
「でもね…」
女は、初めてシェインをまっすぐ見た。
女
「戦争に行った人は、英雄になれる」
「残った人は……何になるんだろうね」
それ以上、言葉は続かなかった。
シェインは踵を返す。
ギン
「お、おい!いいのかよ!」
シェイン
「……十分だ」
二人は裏道を抜け、再び表通りへ戻る。
さっきまでと同じ光景。
同じ街。同じ国。
なのに、見え方がまるで違った。
シェイン
「なあ、ギン」
ギン
「なんだ」
シェイン
「戦争ってさ―――。
敵がどうしようもねぇ悪だと…楽だよな」
ギンは答えなかった。
その沈黙が、答えだった。
シェイン
「…行くぜ」
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