「それで、その司祭は異端調査官の——
「それで、その司祭は異端調査官の出向を求めているのかね?」
「そうなんですよ、議員。怪しげな新興宗教の指導者が殺された。何か宗教絡みだと」
「宗務院が絡むと、急進党の共和主義議員たちがうるさい。連中は我々がいまだに魔女を焼くための薪を秘密の倉庫にたくわえていると信じている」
「〈岩の君主〉はあまりいい報告が上がらない場所です。今回の要請は流してしまおうと思うのですが、閣下はどう思いますか?」
「むしろ受けて、ひとり、派遣すべきだと思う。共和主義者たちは宗務院の教会組織を押さえつけるためなら、信仰の自由を唱えて異端の新興団体すら利用する。あなたたちがその布教団の、なんと言いましたか?」
「ウッリチェッラという男です」
「そのウッリチェッラを殺した犯人を異端調査官がきちんと挙げれば、宗務院が公平であることをアピールできる。共和主義者たちは宗務院と教会が偏見に満ちた捜査をすれば、サンドイッチにして食ってしまおうと身構えている。だから、裏をかくんだ」
「そうですか。それとなると、ひとり優秀なのを送りましょう。アントニーノ・ピッコロミニかアルトゥーロ・ヴェンヴェネート」
「ピッコロミニがいいだろう」
「確かに仕事はできますし、独身者です。すぐ、向かわせましょう」