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結婚式と相棒



「カラーテル! ミルズちゃん、結婚おめでとうっす! いやぁ、ここまで来るまで長かったすよホント~」


「カラーテルおめでとう!」



 カラーテルとミルズちゃんの婚姻の儀はカラーテルがガーロッドに決闘で勝利した一週間後に行われた。


この婚姻の儀にはクリスタルガーデンの魔神族達だけでなく、シャドウバレーやその他の小世界に住む、二人の知り合いもやってきた。


狭い村社会のようなクリスタルガーデンで、住民全員で婚姻を祝うというのは予測していたが、同族以外の者たちがこんなに集まるとは思っていなかった。その数は約2000人、人口の割に広すぎたクリスタルガーデンも、少し賑やかさが感じられた。


驚きだったのはミルズちゃんよりもカラーテルの知り合いの方が多くやってきたことで、シャドウピクシー達やかつてカラーテルの力を借りた者、そしてカラーテルの生み出した作品のファン達だった。



「あ、おお、おおお! う、嬉しいでし、こんな幸せなことが現実だなんて、信じられないでし……! う、うぅ……これも、全部シャンくんのおかげでし! シャンくんはボクの大恩人でし!」


「もう! だから現実だって何度も言ってるでしょ! けどホントありがとうねシャンカール。あんたがいなかったら、私達はどうなっていたことか……」


「カラーテルもミルズちゃんも……そ、そんな大袈裟な……俺はカラーテルを連れてきただけだし」


「だからそれが大事だってことっすよ。この二人は何百年もあんな調子で、二人の関係はずっと止まったままだった。それがシャンくん、君の登場で、二人の時は動き出したんだ。自分が大したことをしていないと思っても、当人にとっては大事なことなんて、いっぱいあることっすよ?」


「そ、そういうものか……」



 トリーデスの言うことも分からなくはないが……それにしたって極端な気もする。やっぱあれかな? 長命種にとって変化は稀なことなんだろうか? その変化のきっかけが、彼らにとっては凄く大事に思える。


こんなに感謝されると、なんだか騙しているような気がしてしまう。過剰に感謝の気持ちをせしめているような……


それにしても、カラーテルの流す涙……これは、なんだ? 冷気を纏っていて冷たいはずだけど、凍っていない……


実体はちゃんとあって、魔力だけのものではない……



「あ! ぼ、ボク泣いてるでし!? うわっ、は、初めて見たでし! ボクの涙!」


「ほ、ホントだわ! か、カラーテルの涙ってこれ! ちょ、早く、トリーデス! あんた瓶とか持ってないの!?」


「いやいや、そんな急に言われても持ってるわけないっしょ~? あ! あれ! カラーテルが使った巨人用のコップ、あれなら入るんじゃないっすか?」


 トリーデスがカラーテルが使っていたコップを指差すと、カラーテルがそれを手に持ち、こっちの方に置いた。


するとトリーデス、ミルズちゃん、カラーテルがカラーテルの涙を掴んでコップの中に入れた。



「え……? その涙、掴めるの!? ていうか、みんな何をやってるの? カラーテルの涙がどうしたっていうんだ?」


「シャンくん、ボクが氷の巨人、アイスジャイアントの魔神族から邪神になったのはわかると思うでし。実はアイスジャイアントの涙はとっても珍しいものなんでし、普通、ボクらの涙は凍ったり、乾いてしまって消えてしまうでし。でも、氷の巨人の魂が、心が大きく動いた時、決して凍らない特別な涙が出ることがあるんでし」


「そっか、確かにそうだよな。カラーテルの纏う冷気なら、普通は涙なんて凍ってしまうよな。だとするとただ珍しいってだけじゃなく、力があるってことか?」


「そうでし! 高濃度魔力が固体と液体の両方の特性を併せ持たせているんでし。高濃度魔力にはその氷の巨人の力が宿り、命を持つんでし」


「命を……持つ? この涙は生きてるのか?」


「そうでし! 涙は生きてる、ボクの分身のようなものでし。うん、決めたでし! ミルズちゃん、この涙の一部を」


「わかってるわ。あたしも同じ考えよ。シャンカール、カラーテルの涙を、氷の魔神の涙を受け取ってちょうだい。きっと、旅の役に立つから」


「え? 貴重なものなんだろ? いいの? というか、この涙、どうやって使うものなの……?」



 涙を貰う、なんとも不思議な感じだ。俺はカラーテルの涙を改めて観察してみる。確かに、よく見ると微かに動いていて、意思のようなものを感じる。



「シャンくん涙に触ってみて欲しいでし。涙は所持者の意思に従い、形を変えると言われてるでし。こいつはボクの分身でしからね、きっとボクの代わりに、ボクのやりたいことをやってくれるでし! 実は思ってたんでし、シャンくんの旅に同行して恩返しをしたいって。でも結婚したばっかりだし、それは無理だって。ボクもミルズちゃんと離れたくなかったでしから……でも、どうやら両方叶えられそうでし」


「そんな風に思ってくれてたのか。じゃあ受け取るよ、カラーテルの力を借りる。ありがとう」



 俺はカラーテルの涙に、氷の魔神の涙に触れる。


巨大なコップいっぱいに入っていた涙はコップの中心に吸い込まれるように縮んでいき、小さな小刀となって俺の手元に吸い付いた。



「よろしくな、えっと、どう呼んだらいいんだ?」


「ボクの分身でしから、そのままでいいんじゃないでしか?」


「そっか、確かに。その方が大事にしなきゃって実感も持てそうだ。よろしくカラーテル、氷魔刀カラーテル!」



 こうして俺は相棒と出会った。この先の旅で、数え切れない程に俺を救い、力となってくれた相棒に。





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