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俺の生まれた場所



「この痣は“雷炎の刻印”つってな、俺様の一族に一定の割合で発現するもんだ。こいつを発現するヤツは戦士として最高の肉体を持って生まれてる。まぁ、ジャンつったか? お前は戦士にはまるで向いちゃいねーようだが。これを発現したヤツを放って置くことはできねぇ」


「え? ジャンさんは戦いに向いていないのですか? 確かにおじさんと比べたらちょっと弱いかもしれませんが、それでもすっごく強いと思うのです」



 おそらく俺の血縁上のパパであるロンドは、体型も俺と結構似てる。俺もロンドも細身だが、関節周りがしっかりしている。俺よりもロンドの方が筋肉がついていて、俺より日に焼けていない。


ロンドはなんというか、チャライおっさんな感じだ。イケオジって感じでもない……おそらく年齢もまだ40代ぐらいだろうが、纏う雰囲気が見た目よりも若々しく、“危険”な男と感じた。


危険というのは、女性にとって危険だろうという意味で、どうみても肉食系というか、実際多くの女性を相手にしてきたように見える。


 お、俺は……こんなオスって感じの人から生まれてきたのか……ロンドは自信に満ち溢れていて、それを隠そうともしない。



「肉体的に言えば、本来ジャンは俺様よりも恵まれてるだろうよ。だけどなちびっ子、戦士に最も重要なのは闘争心だ。相手をぶっ殺すという覚悟を持てるかどうかだ。その点、こいつはそういった闘争心がまるでないように見える。こんなバケモンみたいなスライム相手でさえ、殺意を向けられなかった。命を奪う迷いがあった。そんなヤツは自分を鍛え、強くなるというモチベーションを保てないし、ギリギリの戦い、命と命のせめぎ合いで勝つことはできん」


「うっ……」



 お、おいおい……まだ会ったばっかりなのに、俺のことをそこまで分析できてしまうのか……ロンドの戦士として生きてきた経験値が、一瞬の戦い方を見ただけで、俺という人間を理解させたってのか?



「お兄ちゃんはそれでいいんです! 殺すことばっかり考えないから、それ以外の選択肢を、優しい未来を選べるんです!」


「お兄ちゃん~? お前ジャンの妹なのか? でも俺の血縁者には見えんな。まぁそう怒るな、馬鹿にしたわけじゃねーからよ。人には向き不向きがある、ただあまりにも勿体ないから、小言が出ちまっただけだ」



 あれ……? 推定ヤリチンであるロンドがディアやエローラに反応していない? 一般的に言ったら二人共絶世の美女、美少女? であるはずだが……



「ハッ、そんな心配すんなジャン。流石の俺でも息子の女には手ぇ出さねーよ。そもそも、俺は本能的に無理な女は無理って分かるし、こいつらからは厄介な雰囲気を感じるから、正直関わりたくねぇと思ってる」


「ちょ、ちょ! アタシはこいつの女なんかじゃないんですけど!? というか! 厄介な雰囲気ってなによ! 失礼なんじゃないの!?」



 ……う~ん。



「ちょっとお兄ちゃん!? その顔! 確かにそうだなとか思ってるの!? もう!」


「ははは……まぁ厄介でもいいじゃない。いろんな人がいた方が面白いよ、世の中」



 俺の言葉はフォローになってなかったらしく、ディアとエローラの頬はふくれている。エルはそんな二人を見てクスクスと笑っている。



「でも本能的に見たら、その人が無理かどうか分かるって本当なんです? どんな感じで分かるの?」


「そんな理屈じゃねーよ。体が分かるんだ。なんかこう、互いに、本能的に求めてるのがよ。そういう意味じゃ、ジャンとあいつは……本来だったら無理な女との子だったな」


「え……? 俺の母親が誰かまで分かるんですか!?」


「……ん? お兄ちゃんなんでそんな驚いてるの? 子供をその、授かったなら、相手ぐらい普通わかることでしょ?」


「なんだお前、こいつらに自分の地元のこと話してないのか。いいか、ジャンの地元、アルピウス村はアルピネスの集落だ。アルピネス、知らないか? 女戦士だけで構成される、戦士と神秘の部族だ」


「えっ!? アルピネス!? ジャンダルームそうなの!? え!? でもジャンダルームは男でしょ……? アルピネスは女しかいないんじゃないの!? 確かにアルピウスって、アルピネスみたいな響きだなって思ってたけど、そういうことだったの!?」



 ディアはアルピネスのことを知らなかったようだが、エローラは俺がアルピネスだと知ってかなり驚いている。


アルピネスは、俺の前世で言うとアマゾネスの概念に近い。俺は女しか生まれないはずのアマゾネス集団に生まれた男、異質な存在なのだ。



「ディアに説明しないとな。俺の出身部族、アルピネスは基本的には女の人しか生まれないんだ。でも時々男が生まれることがある。アルピネスにとって男は貴重だ。アルピウス村は普段人が近づかない秘境にあるから余計にね……アルピネスは時々やってくる旅人の男や、遠征して男を攫って交わり、子孫を残すんだ。一度捕まったら、一定数子孫を残さないと男は解放してもらえない。だから男は複数のアルピネスの父親になるわけだ、俺には同い年の姉弟が15人いる。多分……みんなロンドの子供で、勿論母親、産んだのは全員別の人」


「お兄ちゃんの出身地、そんな凄まじい所だったんだ……」


「え? 待ってジャンダルーム、男が貴重なのに、あんたはどうしてアルピウス村の外にいるのよ。そういう部族だって言うなら普通、あんたは村に閉じ込められて一生種馬として生きることになるんじゃないの?」


「エローラの想像は正しいよ。アルピネスの男は滅多に生まれない、だから特別で、神聖な存在として扱われてる。14までは大事に育てられて、15になったら、それからは一生村で種馬として生きることになる。村からは出られない……俺は一生をそんな風に生きるのは嫌だったし、考古学者になるという夢があったから、俺は……アルピウス村から逃げたんだ。俺が12の時、一人でね。それからずっと旅をして、今に至るのさ」


「じゅ、12で……一人で、旅を? そんな……あんた……大変だったのね……」



 エローラとディアは俺の境遇に同情して涙ぐんでいる。ロンドは目頭を手で抑え、しばらくすると、俺に向き直った。



「やっぱりあいつから聞いてた兄貴ってのは、お前で間違いないな」


「ロンドさん、あいつって? 誰の──」


「──お~い! パパーン、こんなとこにいたのかよ~! あれ、え? 嘘だろ……兄貴、なのか? シャンの兄貴なの!? え……あ、兄貴ぃいいい!! 会いたかったよ~~!」



 青年が一人、俺に向かって走ってきて、俺に抱きついた。俺は、この青年を知っている。



「ルンゼ! お前、ルンゼなのか!? どうしてお前がここに、お前も村から逃げられたのか?」


「シャンの兄貴、おいらは村長と交渉して村を出られたんだよ」



 ルンゼ、俺より後に生まれた兄弟、俺の弟だ。ルンゼは俺よりも背が低く、幼い印象があるが、俺と年の差はなく、半年後に生まれただけだ。



「えっ!? 今度はジャンダルームの弟!? ていうかシャンってなによ!!」


「シャンは俺の子供の頃の名前だ。シャンカールが俺の幼名、アルピネスは15で成人したら名を変えるんだ。変えるっていうか、変わってしまうって言うほうが正しいか」


「名前が変わっちゃう? お兄ちゃん、それってどういうこと?」


「アルピネスは生まれた時に、魔術を仕込まれるんだ。命名の魔術と言って、成人した時に、自分に合った成人名が頭の中に浮かんでくる。自分の生き方に応じて、どんな名前が与えられるかが決まる。ルンゼはどんな成人名になったんだ? 俺はジャンダルームだ」


「おいらの成人名はチャウスになったよ。これからはシャンじゃなくて、ジャンの兄貴って呼ぶね、兄貴もおいらのことはチャウスって呼んでよ」


「ああ、分かった。会えて嬉しいよ、ほんと……もう二度と会えないかと……思って、たから……」



 ルンゼ、今はチャウスだったか。チャウスに会えて俺は、涙を堪えられない。完全に不意打ちだ、俺はチャウスにまた会えるなんて思ってなかった。


二度と会えないと思っていた、俺の弟であり親友だった者との再開は、俺の心の中に仕舞い込んでいた弱い気持ちを引っ張り出した。


子供だった頃の、旅の中で感じた不安や恐怖、郷愁、様々な気持ちが一度に溢れてしまった。



「ジャンの兄貴、おいらも嬉しいよ。でもおいらは泣かないよ、だって兄貴に会うために村から出たんだから、絶対いつか会えると思ってた」


「俺に会うために村を? というかそうだ! 村長と交渉したって、どうやったんだ?」


「ああ、作った子供三人につき1年外に出られるんだよ。だからあと20年は外にいられる」


「え? 三人につき1年……20年掛ける3でろ、60!? えっ!? えええええええええええ!?」



 驚きの余り、俺は尻もちをついた……俺の弟は、俺が一族の掟から逃げて旅をしている間に、きちんと掟を遂行し、しまくった結果、60人も子供を作っていた。



「はははは! 流石俺様の子だよなぁ!! チャウスは俺様によく似てる! ガキみたいな見た目してるが、こいつはとんだ野獣だぜ」



 流石俺様の子、ロンドのこの言葉が意味することはつまり……ロンドには他にも沢山の子がいるということだろう。


俺やチャウス、アルピウス村の姉弟15人以外に、沢山の兄弟がいる。





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