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突破口



「みんな、対策の方はどうだ? 俺はこの状況をどうにかする方法を思いついた」


「こっちはダメね、聖霊の場所を特定できるのはあんただけだから、あんた抜きでナイモの聖霊を消滅させるなんて無理。それで思いついた方法って?」



 みんなの所に戻って話しかけると、意外にもエローラの態度は穏やかだった。ディアが俺をフォローしてくれたんだろうか?



「青の審判を止めるのは無理だと思う。だから降り注ぐ青の炎を特定の地域に限定、攻撃場所を集中させる。そして、収束した青の審判の力を俺達で相殺する」


「は……? ちょっと何言ってんの? 全世界を破壊する程の力なのよ!? それを集中させて受けるなんて自殺行為よ! まぁ確かに……集中させれば、その一回分は世界を守ることは可能でしょうけど……ナイモの聖霊自体をどうにかしないと、また青の審判を発動されちゃうんじゃないの?」


「ナイモの聖霊を消滅させずに止める方法は思いついてないけど、ニモとエルが言うには、青の審判が発動したら再発動には最低でも3日は掛かるみたいだから。それまでに方法を考えたいなって。そうそう、エルは俺に憑依できるみたいだから、俺に憑依したエルと直接話してくれ。その方がスムーズに情報共有できると思う」


「え!? 憑依……? 待って? そんなことできる──」



 それじゃエル、頼んだぞ。



「はいはいなのです~!」



 俺の口で返事をするエル。エルは俺の口を使って、俺には分からない領域のことをエローラと話し始めた。ディアも時々彼女達の会話に入ってるのを見るに、ディアも理解できるとこがちょいちょいあるっぽい。


ディア達イモートの持つ技術というかテクノロジーと似たような要素が、青の審判にはあるのかもな。


それからしばらくが経って、どうやら話はまとまってきたらしい。



「青の審判が異界の存在が近いと威力と効率が上がるのは、そもそも異界の力に引き寄せられる特性があるから。つまり異界の力の強い場所に自然と集中する特性を持ってる。極端な異界由来の力が発生すれば、青の炎は小世界の壁を越えて、その大きな異界の力のある小世界に引き寄せられる。ジャンダルームの考えた、攻撃地域の限定は、不可能ではなさそうね」


「強い異界の力を発生させる事だけど、わたしなら可能だよ。他の妹、イモート達はすでにある力を増幅させたりすることはできないけど、わたしならできる。わたしは唯一、この世界にやってきた本体、本物のイズミアだからね。理論上は無限の力を生み出せる」


「え? ディアの力って無限に生み出せるの? というかずっと疑問だったんだけど、他の妹は本体でこっちに来ることはできなかったの?」


「わたしの力はお兄ちゃんのことを思う強さ次第でどこまでも強くなるよ。説明が難しいんだけど……力が変形するというか、1から無限まで力を変動させられて、その1っていうのも、元々無限の特性を持っているというか。普段はコンパクトな状態でいるけど、それは見た目上の話でしかないの」



 よく分かんないけど無限に力を出せるということだけが俺には理解できた。



「わたしは妹達の中でも特別で、わたしは伊豆宮ミヤコの純粋な力そのもの、唯一他の世界を汚染、破壊せずに力を発揮できる。他のみんなは純粋な力じゃなくて、この世界に本体が来ようとすると、その強大なエネルギーが世界ごと破壊、汚染してしまうの。だからこっちには本体で来られないんだよ。勿論、本体がやってきて何かあったら危ないって理由で来ないのもあるんだけどね」


「え……? こっちの世界に来るだけで世界滅亡しちゃうとか、そういうレベルの存在なの……!? でも、そうよね。兄に会うためにこの世界にやってきたのに、その世界を破壊してしまったら意味ないものね……」



 世界に本体がやってくるだけで世界を汚染、破壊って……とんでもなくデカい妹が、世界を踏み潰すイメージが俺の脳裏に浮かんだ。


けど純粋な力なら破壊も汚染もしないってどういう理屈なんだろ。ただシンプルに、力の大きさが変動させられるなら、俺のイメージでいう来ただけで世界を踏み潰すことは確かになさそう。人間大のサイズの力で世界に入り込めばいいわけだし。ディアにはそれができるんだろう。


 ディアの不思議な力に純粋化っていうのがあるけど、それと関係するのかな? 本来なら世界を汚染してしまう妹の力を純粋化して、無害な状態にしてるとか?



「とにかく、わたしがお兄ちゃんを強く思えば、異界の力はどこまでも増幅させられる。他のイモートの力は固定されているから、圧倒的なお兄ちゃんへの想いで力を極端に増幅させれば、青の審判の攻撃はわたしのいる所にしかやってこない。確かに青き炎はわたしにダメージを与えられるけど、操られた人と戦闘した感じ、避けられないわけじゃない。攻撃を誘導しながら全力で回避運動をすれば、誰も被害を受けないで済むかも」


「確かにそれならいけそうか。でも不思議な話だよな~、異界を拒絶して弾く力なのに、その異界の力に引き寄せられるなんて。引き寄せられてくっつくなら分けるけど、弾くんだもんな。ちょっと矛盾してるっていうか」


「まぁ問題は、このモイナガオンを囲む嵐ね。嵐に閉じ込められたままじゃ、青の審判の攻撃を回避しきるのは難しいし、住民と街を確実に巻き込んでしまうわ」


「あのさ、それどうにかできるかも」


「え?」



 俺は嵐をどうにかする方法を思いついてしまった。エルが俺に憑依して喋ってる間、俺は嵐をどうするか、その事ばかりを考えていた。



「エルは俺に憑依できる。エルを俺に憑依させれば、ナイモの霊塔のシステムと聖霊に、俺をエルと誤認させられるかもしれない。エルが生きていると錯覚させられれば、霊塔のシステムを動かして、ナイモの聖霊や嵐に干渉できるかもしれない」


「憑依……普通ならそんな方法じゃ無理って言う所だけど……どうもモイナガオンというか、古代エルシャリオンの技術っていうのは、精神や魂に作用するのが多いみたいなのよね。ホムンクルスには本来魂はないけれど、古代エルシャリオンの技術なら偽物の魂、心を持たない空っぽの、魂の外枠ぐらいなら作れたかもしれないわ。実際、アタシがエルの魂を精霊化させた時、人とは形が違ったし不安定ではあったけど、そこには形を持った魂があったわ」


『ふむ、この子はよく分かってるね。そうだ、実はエルには偽物の魂、偽魂を入れて生み出したんだ。中身は空っぽで、心は持たないが、その偽魂の外枠と内側に情報を書き込むことができた。これにより霊塔のシステムの管理、ナイモの聖霊への干渉の為の鍵を、エルは持つことができたんだ。聖霊は魂、精神的な存在だからね、聖霊にアクセスするにも、魂の要素が必要だったんだ。もっとも、アクセスする為に必要なだけだから、魂の外枠さえあればよかったし、心を持たせるとこまでは技術的にできなかったがね』



 ニモが俺の認識を通じて、エローラの言葉に応え、俺の心の中で話す。勿論それを俺がエローラ達に伝えるわけだが、ニモは俺に憑依ってできないんだろうか?



「偽魂ね……外枠はすでに出来てたなら、その中身が生まれるきっかけさえあれば、エルは心を持ってもおかしくないわね。どうして心を持てたのかは、やっぱり分からないけど……それにしても、エルはジャンダルームに憑依できるのよね。悪霊化した霊魂が人に憑依してとか、神々が人間に憑依して操るとかはあるけど、エルはそのどちらでもないし。もしかして……エルの魂が精霊化してる? それなら説明がつくわ。精霊なら人と調和するような形で憑依することができる。お互いの信頼関係、互いを受け入れる心が必要だけど、それはクリアしてると思うわ」


『多分、そういうことなのです。エルは死んでしまって、気がついた時には、自由に動けなくなってたのです。でもジャンさんをディアさんの所に連れて行かなきゃって思ったのです。それでエローラさんの精霊化の術のことを思い出したら、自由に動けるようになって、ジャンさんの所に行けたのです!』


 えっ!? 思い出したら術を再現できたの? そんなことが……? でも魂だけの存在になったら、そういったことも可能なのか? 生前、エルが精霊化した経験が、精霊になる感覚を……?



「怪我の功名、怪我どころじゃないが……エローラのせいでエルの死が早まったが、この絶望的な状況に活路を見出す道筋もまた、エローラが作っていたのか。確か、死後の魂の精霊化は、生きた状態の精霊化と違って一時的ではないんだよな。エルが精霊化したって言うなら、エルはずっと精霊のままだ。そして精霊ならば、魔力によって姿を現すこともできる。エル、俺の魔力を使って顕現できるか試してみてくれないか?」


『了解なのです!』



 エルが「ぬぅうううう!」と唸りながら俺とエルの魔力を練り上げる。そして──



「おお! できたのです! 鏡で姿を確認できるのです! 青いカラス、結構カッコイイのです。ふふふ」



 エルは青いカラスの精霊として姿を現した。



「エルちゃん!」


「エル! ごめんね、う、うぅ……!!」



 今のエルは、俺だけでなく、他の人にも見える。魔力を使って、話すことができる。



 ──バサバサ、バサ。エルは俺の肩に乗って、俺の頭に顎を乗せた。



「ジャンさん! 凄いのです! 触れた感触もあるのです!」



 小躍りする青いカラスの精霊に、エルの笑顔が重なって見えた。





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