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秘密



「──ふわぁ~あ、うーん……」


「お兄ちゃんおはよう」



 目を開いてすぐ、俺の視界に写ったのは大きな袋……じゃないなこれ。ディアの胸かこれ、俺……ディアに膝枕されて寝てたのか。



「どれぐらい寝てた?」


「いつも通り、きっかり8時間だよ。ハルポンさんとミュシャちゃんも疲れてたから地面にたどり着いてからは寝てたんだよ? 流石に二人は緊張であまり眠れなかったみたいだけど」


「そうですよ! ジャンさんこんな状況でよくこんなぐっすり寝れますね。肝が太いというか」



 ハルポンが俺を不思議なモノを見るような目で見ている。でも少し前より穏やかで、安心が見える顔だ。


ミュシャの方はと言うと少し眠そうだ。眠りが浅かったから、まだ眠いんだろう。そもそも子供からすればハードな一日だった。いや大人でもそうか……



「頑張ったなミュシャ、ディア。けど8時間経ったってことは夜か? いや下手すると朝か? ──ん? ちょっと待て、これは……魔法板? しかも共通語で書かれてるな。隣にあるのは暗号文字のだ……下に落ちて、俺達は秘密の部屋へとたどり着いたってわけか」



 俺達が落ちることで辿り着いた秘密の部屋、そこは大量の魔法板でぎっしりな広い空間だった。魔法板は成人男性の胸辺りまでの大きさで、時々青く光る。



「壁画ではなく魔法板……上にあったのは砂魔石と石で構築された壁画だったが、ここは違う。イモータルブレイカーが引き寄せられてたのはこれか、あれらに反応してる。さてと、みんなはこのまま休んでてくれ。俺はあの魔法板を見てくる」


「え……? ジャンさんあれ分かるんですか? 共通語の方はともかく、上の壁画にもあった、あの見たこともない文字、読めるんですか?」


「ああ、実は俺には特別な力があってな、どんな言語も瞬時に理解することができるんだ。読み書きから会話まで、なんでもだ」


「え、ええええええええ!? そんな凄い能力が!? 魔法? いや魔術? とにかく、そんなことができる人なんて聞いたことがない」


「この力は神の祝福、つまりは加護だ。この力を手に入れるのに凄い苦労したよ。あの時はまだ13ぐらいのガキだったし、魔族の領域の神の加護だから、人間の俺にはハードルが高かった」


「は? ま、ままま、魔族の領域の神? そんな、嘘でしょう? だって魔族が人間を受け入れるわけがない」


「そんなこと言われてもなぁ……本当のことなんだからしょうがないだろ。でも、大変だったけど、楽しくもあった。魔族語を憶えて旅をして、食料を確保するのも命がけ、だけど歩みを進めれば進めるほどに、俺を受け入れてくれる魔族も増えていった。魔族の領域の奥地には人間なんていないから。人間が嫌いなんて感情もなくて、俺は最終的には、変わった一人の魔族みたいな扱いだった。人間の世界じゃ、魔族のことを悪く言う事も多いけど、実際に飛び込んでみたら案外みんな普通だった」


「はは、凄いこと言ってるのに、なんだか分かっちゃうな。ジャンさんを受け入れた魔族達の気持ち」


「そうだね。お兄ちゃん楽しいとかワクワクとか、そういう気持ちでいっぱいで、喧嘩してやろうって人も、喧嘩するのが馬鹿らしくなっちゃう」



 ドヤ顔で胸を張るディア。かわいいヤツだ。



「ま、なんだ。とにかく俺はどんな言葉も分かる。きっとダガーランは俺がこの暗号文字が読めないと踏んだんだろうが、ははは、残念ながら読めてしまうんだ」



 俺は自動メモを起動し、秘密の部屋に満たされた、あらゆる文を記録していく。魔法板の表面の文字を記録したら、魔法板に触れる、すると魔法板は青く光り、ページをめくってくれる。


これは魔法板の一般的な機能、魔法板はその表面を魔法の光で光らせていて、それが文字や図として表現される。魔法板に触れると、魔法の光による文字が、異なる内容、本で言う次のページへと切り替わる。



「大体一枚100ページぐらいか、ていうか……ヤバいなこれ、記録したら不味いかもな」


「お兄ちゃん、そんなにヤバい内容なの?」


「ああ、なんか歴代のエドナイル王のプライベートとか、内心が書かれてる。上の方にあった壁画は、表向きの政治や事実が書かれていたけど、こっちはその時の気持ちだとかを書いてる、いや書かれてるんだ」


「書かれてる? お兄ちゃんそれってどういうこと?」


「どれも本人でないと書けないような内容なんだけど、これを記しているのは歴代の王達じゃない。レーラ神が自動でここに記録してるんだと思う。時々レーラ神の気持ちだとかも書かれてる。ほら、前言ってた、エドナイルの王朝が不倫で断絶してる説で目をつけてた王、ウダルス王の記録だと、はっきり書かれてる。ウダルスは王妃の不倫に気づいているが、ウダルスもまた不倫をしていた為、強く言うことができなかった。これに関してレーラ神の内心の記述がこうだ──」


『“ウダルスも王妃も愚かだけど、ウダルスがこうなるのも仕方がない、ウダルスは偉大な先王、父のオルダンといつも比較されて苦しんでいた。そんなウダルスの気持ちに寄り添ったのは侍女のミーテシアだけだった。ウダルスがこの王の間に来て、私の記録を読んでくれたなら、これも防げたかもしれない。どの王にも苦労があったことがわかっただろうから。寂しい気持ちも紛れたはず。やれやれ、オルダンは偉大な王だったが、調子に乗って、私と王国の関係を希薄にしてしまった。そのせいでダガーランの者に付け入る隙を与えた。もう、エドナイル王家は終わってしまうのだろうか……”』


「え!? レーラ神て、神様なのに、結構親しみやすい感じなんだ。それにこの不倫の記述って、お兄ちゃんの予測が当たってたってことだよね?」


「そうだ、しかもダガーランの名も書いてある。ウダルス王の王妃、フェリテ王妃の不倫相手はダガーランだ、と他のページにはしっかり記録してある。けど重要なのはそれだけじゃない。ウダルスがこの王の間、おそらくこの秘密の部屋のことだ、“この部屋の私の記録を読んでくれたなら”この記述だ。これはウダルスがこの秘密の部屋に一度も来ていないことを言っているんだ。ウダルス王の時代から、この秘密の部屋には誰一人入っていないということなんだ。けどな、あれを見ろ、一番新しい魔法板だ」



 俺は一番奥の方にある魔法板を指さした。俺は小走りでその魔法板へと近づく。ディアとハルポン、ミュシャも俺に続いて、魔法板の側へとやってきた。



「こ、これって……新しい文字が記述されていってる。それにこの文字、暗号文字じゃなくて共通語。お兄ちゃん!」



『“ありがとうジャンダルーム・アルピウス、ディーアーム、ミュシャ、そしてハルポン・ナイルドッポ。私はここに辿り着く者達を、待っていた”』


「わ、うわあああ!! 凄い! これってレーラ神が今、今書き込んでるってことですよね!? ジャンさん!!」


「ああハルポン、レーラ神の言葉だ。そして記されているのはレーラ神の言葉だけじゃない、この最も新しい魔法板、これに記録される王は──」


「──あ! 現王マダルガ様ってことですよね! じゃあマダルガ様の考えとかもわか──」


「──ハルポン・ナイルドッポだ」


「え? はい、僕はハルポン・ナイルドッポですけど。いきなりどうしたんですか? ジャンさん」


「だからこの魔法板の、最も新しい王、それがハルポン、ハルポン・ナイルドッポなんだよ」


「え? ええええええええええええええええええええええ!!?」



 腰を抜かし、顎を外し、大声で叫ぶハルポン。俺も、驚いた。






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