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迫りくる時代



「ジャン兄さんは、神だ!」

「違う、俺は神じゃなーい!!」



 ボロボロの廃墟だったデスランド開拓拠点は元通りというか、むしろ豪華になってしまった。エーレックスが一瞬で街を修復改造してしまったのだ。ちなみにエーレックスは蘇生しておらず、ゾンビ状態のままでもない。あいつはちゃっかり自分も転生していた。


びっくりしたよ。なんか腹が張ってるし腹が痛いな~とか思ってたら、俺の腹が裂けてエーレックスが生まれてくるんだもんな。魔人化してなければ出産のダメージで死んでたな……どうやらエーレックスはイモータルブレイカーを見て「これだ!」と思ったらしい。妹でも姉でもなく、俺の娘として生きようと俺の体を使って転生しやがった。まぁ、いいんだけどね? でも相談ぐらいしておくれ……びっくりしちゃうよ。



「ではこの場にジャン兄さんが神であることに異議のある者はいるか!?」

「異議ありませーん!!」

「異議なし!」

「異議なしであります!」

「異議なしなのです!」


 おいエル! しれっとオーブの取り巻きに混ざって便乗するんじゃないよ!



「お前なぁ、そういう多数決はよくないよ? お前の影響力っていうか、権力を考えろよ。みんなにはみんなの考えが、自由があるんだから」

「いや、普通に神だと思ってますけど。ねぇ? あんなの人間にはできないですよ。ねぇみんな」

「そ、そんな……目の前の現実を見てくれよ! ほら! ただの人にしか見えないだろ……? ただの人だって。肉の塊でしかないって」


 デスランドの死者とかつてのオーブの仲間達が復活したことにより、オーブにとって俺は神、ということになってしまった。エグい信仰心という忠義心というか、とにかく凄い感じになってしまった。やっぱりトランが復活したのがヤバかったんだろうな。二人はいつも一緒にいるし仲が異常に良い。そのせいで二人が実は恋仲だとかそういうデマが領内で蔓延っている。が、本人達はあまり気にしていないようだ。



「おいジャンダルーム。お前に貰った尻尾これは中々いいぞ。見ろ、先端からビームが出せる!! ワハハハ!」



 アグニウィルムはダモスの女神との戦いで尻尾を失い、俺はその尻尾をどうにかしろとアグニウィルムに言われていた。なので俺はディアに相談した。すると何故かエスフィアからアグニウィルム用の義手ならぬ義尻尾? が届いた。


エスフィアは連絡の取れなくなっていたインレーダ族の面倒を見てくれていたアグニウィルムに感謝していると、その御礼に届けてくれた。



「お前には立派なブレスがあるんだから尻尾のビームなんていらなくないか?」

「やれやれこれだから素人は困る。尻尾からビームが出れば、後方への攻撃がしやすいではないか。空中で後方への攻撃手段というのはお前の想像以上に強力なのだ。空中では後ろの取り合いが肝要故な」



 アグニウィルムがご機嫌ならそれでいいか。インレーダ族とデスランド開拓拠点の人々は完全に和解。というのも、今までインレーダ族との戦いで死んでいった者達が、あの大蘇生現象に巻き込まれ復活したからだ。インレーダ族の方もみなコアが無事だったからみんな復活して元気だし、もう互いを恨む必要もない。同盟も結んでるから、そういう意味でも大丈夫だろう。



「不思議だな。みんな思う所はあったはずなんだけど……」

「みんな生き返らせてくれたお兄ちゃんを困らせたくないんだよ」

「それで納得してくれるものなのか? 俺のせいで巻き込まれたようなもんなのに」



 ディアはやれやれといった感じで、わざとらしくため息をつく。



「みんな、結果だけを見てるわけじゃないんだよ? お兄ちゃんが心の底から本気で、誰かの為に頑張ってるのを見てたんだよ? だったらわたし達も納得しなきゃねって、そう考えるのは自然なことでしょ?」

「そっか、そう言われると、そう、かも? 何にせよいい感じに終わってよかったよ。デスランドも、これで終わりだな。そろそろデスランドの改名式典が開かれるんだけっか」



 デスランドという名はもうこの土地に相応しくなくなった。デスランドはアグニウィルムが人間を拒絶する為にわざと厳しい環境にしていた。けれどアグニウィルムと人間が和解し共生するようになって、デスランドは緑あふれる、豊かで住みやすい土地になった。そんなこともあり、デスランドという不吉な名前はやめようという話になった。



「今日よりこの大地の名は変わる。デスランドの名はここで終わり、これよりはこう呼ぼう──シャンダルーミア。シャンダルーミアと! ジャンダルーム神、アグニウィルム神、二柱の神によって生まれたこの大地で、僕達は生きていく! より良い未来を往こうではないか!」



 デスランドの改名式典にオーブの声が響く。風の魔力が全ての人々に声を届ける──って……



「お、おいっ、シャンダルーミアって、どう考えても俺の名前のもじりじゃねーか!!」

「あはは、お兄ちゃん歴史に残ったね!」

「ったく、しょうがねぇ奴等だな。まぁあんだけいい顔されちゃ、俺も文句は言えねぇよ」



 デスランド改めシャンダルーミア。その名を人々が叫ぶ。元気に、嬉しそうに、その名を呼ぶ。


「「「シャンダルーミア! シャンダルーミア! シャンダルーミア──」」」



 納得するしかないよな。お前らが嬉しいなら、俺だって嬉しい。彼らの笑顔を見ていると、自然と明るい未来を信じられた。



「おい、とんんでもないなお前! もう後回しにはできん。ジャンダルーム、お前を正式にナスラムの皇子として認め、領地を与えねばならん」

「ちょ、ロンドアークさん? お父さん? 俺旅をしたいから、そういう面倒なのはちょっと」


 改名式典にはロンドも来ており、式典が終わるなり俺に詰め寄り、この発言をしてきた。



「父さん、僕はジャン兄さんをナスラムの皇族とするのは反対です。帝国皇族の身分など、兄さんの身分とするにはあまりに低く、価値のないもの。帝国に兄さんを縛り付けるなど、傲慢と言わざるを得ない」

「お、オーブ? お前、ど、どうしたんだ。お前の様子がおかしくなったのは聞いてたが……」



 はは、ロンドもオーブの変わりように困惑してるな。そりゃそうだ、俺だって困惑してるんだから。



「まぁ聞け、話を。ジャンダルーム、お前の話はすでに世界中で話題だ。世界中の大国がお前をどうにか取り込もうと躍起になってるって話だ。だが血統的に見れば、お前はナスラム帝国の血筋、正当性がある。帝国は強大だ、帝国に所属しているとなれば、お前に変なちょっかいを掛けてくる奴も減る。お前ヤバいぞ? 状況ちゃんと分かってるか? お前今あれだぞ? 神々の戦いを制し、死者を蘇らせ魔神を打倒した生きた神、そんな風に噂されてんだぞ?」



 おかしい、俺だけでこうなったわけじゃないのに……なんか俺の手柄、俺が殆どやったみたいな話の伝わり方してる?



「ッハ、その感じじゃ納得いかねぇみたいだな。だが、その方が都合がいいだろ。俺様も色々と情報は集めてる。そっちの事情も少しは知ってる。イモート、この存在は隠しておくべきだ。お前の手柄の殆どは、イモートの存在がなければなし得なかった、その事実は知られるべきではない。無駄な混乱を生む、だからお前が矢面に立ち、誤魔化したほうがいい。お前もそこそこ口が回る。そんぐらいやれるだろ?」

「ふーん、じゃあ噂の一部はあんたが流したってわけか。イモートの存在を隠す為に、先に自分達に都合の良い噂を流した」


「中々に理解が早いなジャン。そうだ、一部の噂は俺が流させた。だが実際の所はちょっと違うな。俺様が噂を流させるころには、すでに事実と異なる改変された噂がかなり出回っていた。どういうわけかわからんがな。当てずっぽうでいいならだが、俺様はイモートが行った隠蔽工作だと睨んでる。やたらとお前を称賛するような内容だったからな」



 隠蔽工作、そうか……アルズリップが先に噂を流してたのか。確かにあの子の能力ならそれぐらい朝飯前だもんな。……ん? まさか、ロンドアーク、こいつ。



「ロンドアーク、あんた俺を使って帝国をイモートの脅威から守ろうって考えか? だとしたら考え直したほうがいいぞ。あの子達は俺が利用されることを快く思わない」


「んなこたぁ、分かってるよ。だとしても国のトップとして出来ることはやっておく必要がある。密約が必要になるなら、それも辞さない。仮にジャンダルーム、お前が帝国の影の皇帝となるとしてもだ。イモートとの永久的な不戦協定、俺様はそれが欲しい」



 ロンドの顔つきが真剣なものに変わる。引く気もなければ妥協する気もないって感じだな。



「俺は人間だからいずれ死ぬ。そうなったら不戦協定は終わる。イモート側もそれを見越して帝国の傀儡化を狙うと思うぞ」


「ジャン、お前は甘いな。俺様も魔人だ。だから知っている。魔人の寿命は普通の人間よりも遥かに長い。さらに言えばお前は人間族でも長命なアルピネスの血筋だ。少なく見積もってもあと500年は生きる。その500年の間にイモート達はお前の不老にすることも可能だろう、と俺様は睨んでる」


「魔人の寿命が、長い? そうなのか? でも、歴史上の魔人ぽい英雄達はみんな……そうか、みんな、戦いの中で死んだから寿命がどれくらいだったかなんて……」


「そこまで知ってんなら話が早い。英雄ピトナイ、お前も当然知ってる大英雄だが、奴は戦死だ。ジーネドレの魔法使いと戦って死んだ。問題はその年齢だ。150歳のジジイだった。そんなジジイが剣を担いで魔法使いと死闘を繰り広げたんだぜ? しかもピトナイは130の時にガキを作ってる。そしてそのガキが俺様達の先祖だ」



 ピトナイ……ナスラム帝国の皇家の血統であり当時の騎士団長を務めた英雄。彼の息子がナスラム皇帝となってからずっと、ピトナイの血筋がナスラム皇帝となり続けている。俺は……ナスラム帝国のピトナイ英雄譚を眉唾だと思っていた。


権力者が正当性を示す為に先祖の話を盛る、なんてことはよくあることだからだ。だが……魔人という存在を考えれば、今まで眉唾扱いしていた話も、真実味を帯びる。



 ピトナイを殺したのは、おそらく俺達がエドナイルで倒した魔法使い、ヘルドルムだろう。あいつ、滅茶苦茶強かったんだよな。あいつと死闘を繰り広げたってことは、ピトナイとあいつはある程度力が拮抗していたってことだ。


強化された状態のオーブならヘルドルムに勝てるだろうが、される前は無理だろうな。となるとヘルドルムに敗北したピトナイの実力はアグニウィルムに強化される前のオーブに近いと考えていいだろう。ピトナイは魔人化して、殆ど全盛期に近い状態でヘルドルムと戦った可能性が高い、か? じゃあピトナイは戦死しなければ150歳以上、200歳ぐらいは生きてもおかしくなかったかもな。



「待ってくれ、魔人の寿命が長いなら、お父さんはどうして代替わりを、オーブを皇帝にしようとしてるんだ? まだまだ皇帝を続けられるはずだ」


「俺様は皇帝をさっさとやめて自由になりてぇんだよってのが半分、ジジイが居座り続けると国が腐るってのが半分だ。そもそもオーブは俺様よりも才能があるからな。だったら代替わりした方が国の為になるってもんよ。俺様は魔人だ、ナスラムの国神ガラムフェスとの契約がある。だから俺様は国の為になることしかできえねぇのさ。ガラムフェスがああしろこうしろって直接言ってくるのは稀だが、今、その稀なことが起きてるんだ」


「その稀なことって言うのが──」


「──ああ、イモートとの不戦協定を望んでいるのはガラムフェス神だ。お前を帝都に呼び、直接話させろと、神は言っている」



 デスランド改めシャンダルーミアでの戦いが終わり、一息つく間もなく、面倒事はやってきた。


実感がある。今の俺には実感がある。今俺が相手にしてるのは人ではない──時代だ。時代の流れ、歴史を紡ぐ運命の流れだ。


歴史が、時代が、オーブを逃さなかったように、俺のことを逃すまいと、運命が迫っている。運命、運命か……俺の娘を自称する覇王イモータルブレイカー。あの子の母親は運命の女神らしいが……


これは彼女の──運命の女神の望みか、それとも……俺が元々持っていた宿命なのか。何にせよ、俺は、己が流れる血の片割れ、その故郷に往く定めのようだ。





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