新たな神の誕生
「なにが、一体何が起きてるんだ……!? これは、なんだ? 裂け目?」
俺とバルサーリオット、勇者レギオンしかいない世界が、突如として揺れ始め、俺もバルサーリオットも状況の理解ができないでいた。
そんな中、追い打ちを掛けるように、世界の変化が生じる。世界に、穴が空いた。それに──これは光……?
──チャリーン!
え? この音……俺は首にいつも掛けているエドナイル銅貨、覇王イモータルブレイカーを手探りで探す──ないっ!? え? じゃあ、この音って──
「──我が名は覇王イモータルブレイカー! 世界を超えて、やってきたのだ!」
「え……? イモータルブレイカー……?」
元気な声が響いた。そして目が見える。さっきまでは魔力による存在の把握しかできなかったこの世界に、光がある。元気な声の持ち主が通ってきた裂け目から光が流れ込んでいる。
初めて見るはずだ。俺の目の前にいるこの子を、俺は知らないはずなのに、知っていた。茶髪で碧眼の龍の翼と天使の翼の生えた女の子。覇王イモータルブレイカー。
俺の窮地を何度も救ってくれた、落ち込んだ俺を慰めてくれた、あの子だ。それが分かってしまう。姿がまるで違うのに、俺があのエドナイル銅貨から感じていたのと全く同じ雰囲気が感じられたからだ。
「やっとこの姿で会えたのだ! パパ!」
「ぱ、パパぁ!?」
「ちょっとお兄ちゃん!? パパってどういうことなの!?」
イモータルブレイカーが俺をパパと呼んで抱きついた。異界からディアの怒りの声が響く。いや俺だって知らないよ!! 心当たりないよ!
「われは運命の女神とパパの子供なのだ。ずっとパパに会いたかったけど、世界の壁が厚くてこっちに来られなかったのだ。だけど、さっき次元の壁がすごーく壊れたから、こっちに来られたのだ」
「運命の女神と俺の子……? でも俺、運命の女神と会ったことなんて……」
「ママはパパの事が好きになったらいつの間にか、われを身籠ったらしいのだ。オトマキアの神界も、ママのいる超神界と比べれば浅瀬なのだ。深き魂の世界では、魂の繋がりは何よりも深い繋がり故、俗世の者達と違って肉体的な繋がりを必要としないのだ」
「え……? じゃあ、運命の女神の想像妊娠で生まれたのがイモータルブレイカーってこと?」
運命の女神との魂の繋がりってなんだ……? 確かに運命の女神に啖呵を切ったり、祈ったりはあるけど……そんなの世界中にあるだろ。というか! 勝手に妊娠して勝手に子供が生まれてるってどういうコトッ!?
「まぁそんな所なのだ! ママは力が強過ぎるから想像したことが具象化してしまうのだ。さて、と。パパ、とりあえずここを出るのだ。みんなの所へ戻るのだ!」
「え? ここ出られるのか?」
「っふ、われは覇王イモータルブレイカーであるぞ! すでに肉体の具象化は終わった、故に世界の超越など容易なのだ! ゆくのだ!」
「わ、ちょ! 待って、あ、うわあああああああああああ!!!」
イモータルブレイカーが俺を抱えると、何も無い空間に黄金の渦が現れ、俺達はその渦に入っていく。渦に入る前、唖然とする勇者レギオンの姿が見えた。
「ついたのだ!」
「え? もう? マジだ……」
「お兄ちゃん!」
「にぃに!」
「兄ちゃん!」
俺は気づけば元の世界、みんなのいるデスランドに戻ってきていた。ディアとアルズ、エーレックスが俺に抱きつく。そんな俺をイモータルブレイカーが笑顔で見守っている。そうか、イモータルブレイカーからするとディア達って……──
「おばさん達、嬉しいのは分かるけど、今はあいつをどうにかするのが先だと思うのだ」
「おばっ!? おばさんじゃないんですけど!? わたしはあなたがお兄ちゃんの子だって認めてないからね!」
イモータルブレイカーのおばさん呼びにディアが戦慄している。とんでもない衝撃だったらしい。まぁ実際年齢的にはおばさんどころじゃないけどな。
「ちょっとお兄ちゃん!? 今失礼なこと考えたでしょ? 運命の女神だかなんだか知らないけど、勝手に女を作って! 許せない!」
「そんなこと言われても俺だって知らなかったんだよ!! 俺にはどうしようもない。はぁ、どうなってんだよ世界は」
「わぁ~本当に覇王イモータルブレイカーなのです! 銅貨の時と同じ感じがするのです。じゃあエルが銅貨だったイモちゃんを見た時にはすでに特別な存在だったのですね」
「そうなのだ! 話せなかったけど、生まれてからずっとみんなと一緒に旅をしていたのだ。エルちゃんはよくわれのことを磨いてくれたから好きなのだ」
え……? エル、そんなことしてたの? いつの間に……俺の寝てる間にか?
「──兄ちゃん。完了したよ~頼まれごと」
「エーレックス! ありがとう! これで俺達は、戦える! ディア!」
「うん、お兄ちゃん!」
俺はバルサーリオットの世界に拉致られる前、エーレックスにある頼み事をしていた。それは──
「「──無限より来たれり太極の陽炎、光輝の糸を紡ぎ境界とす、其は境界の制定者、絶望を隔て、希望と世界を繋ぐ者、神彩の調停者──来たれ、境界の抱神、テルミヌス・アルプス・オートマキア!」」
『っふ、愚か者が、貴様らの巨神はワレが無効化できることを忘れ──』
「聞こえなかったか? 希望と世界を繋ぐと!!」
『何……?』
テルミヌス・アルプスが構築されていく。俺とディアの詠唱によって、俺達の想像/創造によって、この世界で、生まれる。
エーレックスの能力、混濁と改造によって、“この世界で”テルミヌスの素材、パーツを生み出した。
それはアグニウィルムのアダマスタブレスによって強化された素材によって作られる。このデスランドに溜め込まれた、魔法の世界の力。
鉄がアダマンタイトに、銀はミスリルに、銅はオリハルコンに。デスランド開拓拠点に集められたそれらを、合体させる。超能力と魔法の力が、融合する。
「この世界で生きていく。その決意さえあれば、世界は広がっていく。バルサーリオットお前は負ける」
『っく、この世界で巨神を生み出すだと……!? だとして、どうワレを倒す! どう負ける、貴様が勝つ道理が、どこにあるッ!』
「お前の求める未来は悲しいからさ。痛みや苦しみから逃れたい、そんな思いで到達するのは虚無だ。創造とは程遠い、真に幸福を目指すなら、お前は前に進むべきだった。他者を蹴落とすのではなく、共に、歩むべきだった! 俺は先に行く、お前の想像の先へ!」
みんなで新たなテルミヌス、アルプス・オートマキアに乗り込む。アダマンタイトの黒とミスリルの銀色、二色の輝きを取り込んだテルミヌスは力強く光る。
異なる世界の力が、確執を超えたその先で融合した。存在そのものが奇跡の体現であるそれは、俺達の旅の軌跡を見るかのようだった。
「バルサーリオット! お前を解き放つ! 人々を縛る妄執と悲しみを、ここで終わらせる!!」
少しでも「良かった!」「続きが気になる!」という所があれば
↓↓↓の方から評価、ブクマお願いします! 連載の励みになります!
感想などもあれば気軽にお願いします! 滅茶苦茶喜びます!




