無謀に挑む蟻
『エーレックス! 聞こえるか?』
『うん聞こえるよ~。まさかディアと精神パスを繋げることになるなんてね~。それで~兄ちゃんはボクに何をしてほしいの~?』
不死者として復活したエーレックスを俺達とテレパシーで会話できるようにした。その為にはディアとエーレックスが精神的な繋がりを構築する必要があった。互いに思う所はあっただろうが、二人とも了承してくれた。
『ああ、エーレックス、お前に頼みたいことは──』
◆◆◆
『ッフ、狂化の魔法がここまで効果的に働くと、中々楽しくなってくるではないか。かつて、ただの魔法使いであった頃より、自分の思うがまま、力を振るえる。ククク、まさに無敵、ジャンダルームよ、もう諦めた方が懸命だぞ?』
インレーダ族の戦闘要員の殆どがバルサーリオットの狂化の魔法によって倒れた。残ったのは女王と一部の精鋭だけだ。つまり、バルサーリオットの攻撃を迎撃することはもう厳しくなってくる。テルミヌスが使えないこの状況では、個々が己の身を守るのに徹するぐらいしかできないだろう。
「お前が無敵だって、そいつは大嘘だな。お前が本当に無敵なら、虫人を、インレーダ族の存在なんて気にしない。お前は焦っている。俺達に時間を与えるべきじゃない、そう思ってる」
『何を馬鹿な、ワレにそのような揺さぶりは通じぬ。足りぬ力を口で補うことなどできんぞ?』
「──お前、お前はどうして俺ばかりに意識を向けている? かつてのお前を葬ったのは、人間ではなく、イモートだろう? そんなお前が何故、俺を警戒する」
『何を言うかと思えばそのような事か。ジャンダルーム、貴様がお前達をまとめ上げる中心、リーダーであることは明白、頭を取れば戦いは終わる、当然の摂理ではないか』
「いいや、理由として不十分だなそれは。俺以外を効果的に狙えるタイミングでも、お前は俺を無意識的に優先して攻撃していた。インレーダ達が救援に来たタイミングでの攻撃、もし俺がお前の立場だったらもっと上手くやれたぜ。俺への攻撃を囮とし、他の仲間を狙う。そうすれば俺達の戦力を確実に削れた。だが、お前は俺しか狙っていなかった」
バルサーリオットの勇者レギオンの顔が歪む。焦りと緊張の色が見えた。
「お前は賢く、強いんだろう。だが、自分自身を完全に制御するのは難しい。お前の直感は、俺を生かしてはマズイと判断している。思い出したか? ジーネットリブの顔を、滅びた時の感覚を」
『黙れ!! たかが魔人程度が調子に乗るな!! 貴様ではジーネットリブには遠く及ばぬ。ワレが貴様ごときを恐れる訳が無い!!』
──掛かった。バルサーリオットは俺の挑発に乗った。勇者レギオンの意識の殆どはバルサーリオットのものだ。魂をバルサーリオットのコピーとして書き換えられた大量の古代エルシャリオン人達、彼らの意識も全てバルサーリオットと同じ感覚、記憶を共有している。
意識の大きさ、量で言えば、勇者レギオンと生前のただのバルサーリオット個人では比べるべくもないだろう。肉体的にも深く繋がった彼らとバルサーリオットは肥大化したエゴを集約し、バルサーリオットの特性、本能を強化する。己に制御しきれない、過剰な意識が生じる。
──であれば、バルサーリオットの抱く恐怖、死の記憶、トラウマもまた、強化される。トラウマによって冷静さを失うべきではない、そう理性が訴えかけても、バルサーリオットは本能に、抗えない。
どういうわけか、バルサーリオットは俺を最初から意識していた。俺の名を真っ先に呼び、俺をずっと見ていた。だからといって、バルサーリオットのトラウマを俺が呼び起こすことができるとは限らなかったが、この賭けに俺は勝った。
『──死ねぇえええええええええええええ!!!!』
勇者レギオンがまた、あの攻撃を再開する。大量の触手から大量のビームを放つ。その全ては俺だけを狙う。俺以外を牽制するだとか、そんな意識は全くない。バルサーリオットの怒りと恐怖を乗せて俺を狙う。
「時の傷!! オーバーループ!!」
俺は時の傷──否定の魔力によって時を空間から追い出す魔術を行使する。超魔人となり、魔法の領域を扱えるようになった今の俺ならば、こいつを強く使える。
それは時の傷を同時に産み出し、それらを連携させることで、互いを加速、強化させる。否定の魔力でできた、回転する歯車が、魔力の機械を生み出す。
──オーバーループ、否定の魔力の渦は嵐となり、敵の攻撃を引き寄せて吸収し、それと同時に回転によって空間の歪みを生じさせる。
時のない空間で、超回転をする魔力は、膨大なエネルギーを空間に溜め込む、敵の攻撃のエネルギーさえも利用して。そして──やがて時は動き出す。
「──解放!! 超反射──オーバーリフレクト!!」
オーバーループによって生じる空間の歪みに意図的な角度を持たせる。敵を狙うように角度を。すると、空間の時が戻ると同時に空間に溜め込んだ膨大なエネルギーは狙った場所へ放出される。
都市を一撃で崩壊へと導くであろうバルサーリオットのビーム攻撃、その百倍の火力で反射する。空間を歪ませられるということは──異界も狙える、ということだ。
──ズシャァアアアアア!!
『ぐわあああああああああっ!!??』
「まさか、最初にお前にダメージを与えるのが俺になるなんてな」
次元を超えた干渉が可能なディアの補助があれば、ディアの指定する異界の座標を狙う角度を付けられる。
今まで無敵だったバルサーリオットはダメージを負った。バルサーリオットの右肩が消滅し、奴は激痛に悶えている。
「もう傷が治るのか。凄い再生能力だ。回復魔法……無限に近いであろう魔力を持つお前がそれできんの、マジでヤバいな」
『貴様、貴様ァアアアアアアアッ!! 許さん! 許さんぞ!!』
勇者レギオンは俺の付けた傷をすぐに治してしまった。ダメージは通せたが、バルサーリオットからすればなんの問題にもならないだろう。都市を破壊する火力の百倍だから……大国をを一撃で崩壊させる威力があったはずだが……右肩を吹き飛ばして終わり……?
どうなってんだよ……明らかにおかしくないか? 全身巻き込んで消滅させる規模になるはずだろ、普通……
『お兄ちゃん、あのダメージの受け方。わたし達が見てるこの勇者レギオンの幻影より、本体の勇者レギオンはかなり大きいってことだと思う。少なくとも小世界一個分の大きさはあるはず』
『世界規模の万年の恨みの集合体ってなると、そのぐらいデカくても不思議はないけど……あいつ、こっちで受肉した後、個の世界化をして、本体は成長を続けてた。そんな所か』
ディアの分析がマジなら、勇者レギオンは今まで戦ったどの存在よりも巨大だ。だけど、本体を晒すと殺されるからこっちに出てこられないんだ。だから魔力による間接的な干渉しかできなくて、その巨体をパワーを活かしきれない。
敵からすれば歯がゆいことだろう。イモートさえいなければ文字通り手のひらで大地を撫でるだけで世界を征服できる。まぁ、こっちとしてもあの異常なタフネスは厄介過ぎるけど……
やはり俺の力ではどうしようもない。いまのは本当にダニが巨人を噛んだ程度のもんだ。だけどバルサーリオットはマジギレして頭をフル回転させることだろう。
俺をさっさと排除しないとマズイって、心の底から思ったはずだ。そこは奴の理性も直感も判断が一致したことだろう。
「さて次はどんな攻撃で来る? お前も二度も同じ失敗はしないだろ? 反射されないように工夫して、それは実際に有効なんだろうな」
『このワレに超神であるワレを傷つけた罪!! 百億回殺し、すり潰しても足らぬ大罪……!! チッ、後悔するがいい。ワレは傲慢を捨てる。貴様を倒す為ならば!』
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