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這いずる希望



『ヌルいヌルい、イモートの奴隷種族程度がワレに逆らうなど、身の程知らずよ。貴様らの言葉を理解したワレに勝てると思うな!!』


「勇者レギオンが思念波を!! テルミヌスがやられちゃったみたいに、あの子達が!」



 ディアが叫ぶ、どうやらバルサーリオットが思念波をインレーダ族達に放ったらしい。俺には見えないが──



『なにッ……!? 何故だ、まさか耐性があるのか?』


「効いてない……? テルミヌスを崩壊させたあの攻撃を、耐えた?」



 バルサーリオットとディアが驚き、戸惑っている。インレーダ族は元はイモートの技術で生まれた存在。彼女達が持っている力も、実際、イモート達と同じ超能力由来のものが殆どだ。


であれば、バルサーリオットのテルミヌスを崩壊へと導いた、思念妨害攻撃もインレーダ族に対して有効なはずだ。しかし、現実、そうはなっていない。



『──インレーダ族はアグニウィルムの加護がある。それに、創造主であるエスフィアとの通信が途絶えてから、インレーダ族はこのオトマキアで独自の進化を遂げた。この世界と深く混ざりあったんだ』



 テレパシーで俺の考えをみんなに共有する。俺の予測が正しいなら……



『お兄ちゃん、それってイモートの超能力とインレーダ族の超能力では何か違いがあるってこと? 魔力、魔法への適応とか?』


『どうだろうな。だけど魔法だとか魔力だとか、そんな次元の話じゃない気がするな。バルサーリオットは魂の領域へ干渉するような、とんでもない奴だぞ? 単純な魔力の影響なら簡単に対処するだろう』


『あ、エル分かったかもなのです! 多分インレーダ族の魂がオトマキアと、世界と完全に同化してるからなのです! インレーダ族の超能力はオトマキア側から認識され認められた概念なのです! この世界と超能力の繋がりが強くて、近いから簡単に無効化できないのです!』



 世界に認められた概念……?



『エル、ちょっとまって! 世界に認められた概念ってどういうこと?』



 俺と同じ疑問をエローラがエルに問う。



『皆さん、ジャンさんが古代エルシャリオン語を使って、旧世界に移動しちゃった時のことを憶えていますよね?』

『ああ。それがどうかしたのか』

『あれは旧世界、そして旧世界の概念をジャンさんが理解、認識した結果起きた現象なのです。あれは旧世界側がジャンさんを自分の一部だと認識したから起きた、と言い換えることも可能なのです。世界、そして自分が相互に認識することで繋がりが生まれ、同化することで、法則は共有されるのです』



 なんだか難しい話になってきたな……



『なるほどねぇ~。つまりこの世界の住民として認められたら、そいつが持ってた力が常識というか、あって当然なものとして認められて、この世界で扱いやすくなるってことね。だとしたら納得、この世界のモノだと認識されているなら、同じくこの世界の力である魔力と混ざり合い、強化することだってできる』



 なんとなく俺にも分かってきたぞ。つまり世界に仲間として認められると、仲間で道具が共有されたり、組み合わせて強化したりできるって感じか。



『じゃあ個の世界化を行って、自分を隔離したバルサーリオットは、世界との繋がりを薄くして、魔法の威力が下がっちゃってるんじゃないのか?』

『だから魔力だけを使ってこっちの世界に干渉してるのよ。魔力って概念自体は、

この世界にとって自然なもの、異界から魔力が来た所で、世界に魔力を馴染ませるのにそう手間は掛からないはずよ』



 ってことはバルサーリオット側には特にデメリットはないのか。なんかずっこいな。



『面倒な、ならばやり方を変えてやろう。ワレに手間を掛けさせたのだ、光栄に思うが良い!』



 ──っ! 俺達が作戦会議をしている間にバルサーリオットが動き始めた。バルサーリオットから赤色の魔力が放出され、インレーダ族達に浸透していく。そして──



 ──バギィイイン! ガッ、ガガガ!!



「マジかよ……っ!! 狂化の、魔法!」



 バルサーリオットの放った魔法がなんであったか、それはすぐに分かった。インレーダ族が同士討ちを始めたからだ。狂化の魔法、バーサークは掛かった者は魔法が使えず、眼の前にいる存在を敵味方関係なく攻撃してしまう。精神干渉系の魔法だ。


俺達は対抗できたが、インレーダ族では女王の雷花石と一部の精鋭しかバーサークに対抗できなかったようだ。



『閃光石とアグニウィルム、アルズとピエルレも狂化を防げたみたい』

『狂化の魔法は強い精神力や高い魔力、存在としての格の高さで防げる。エルは聖霊で神みたいなものだし、エローラは高い魔力が、ディアもエルと同じで存在の格で防げた。俺は魔人だから魔人の精神干渉耐性で防げた。ある意味盲点だったな、俺達は大丈夫でも、俺達以外が……こんな同時に狂化させられたら、対処なんて……』



 バルサーリオットの狂化の魔法は恐ろしい程に効果的だった。狂化すると魔法を使えなくなるが、“超能力”は使える。インレーダ族は超能力由来の高い攻撃力で同士討ちをさせられた。故に、極短時間のうちに、多くのインレーダ達が死亡した。


空間ごと切り裂くサイキックブレードが互いの体を撫で斬りにした。狂化は攻撃させるだけで、防御はさせない。攻撃に対して、完全に無防備な状態で互いの体を切合い、刹那の内に絶命する。戦いではない、一方的な殺戮を互いに行う、狂った宴のようだった。



「ああ……お前達……許さん! 許さんぞバルサーリオットォ!!!」



 アグニウィルムが激昂する。今にもバルサーリオットに、勇者レギオンに突撃してしまいそうな勢いだ。



「落ち着けアグニウィルム! まだ核は無事だ!! まだ、勝ち目はある! お前は、生きなきゃいけない! また生まれてくる彼女達を、お前は抱きしめてやらないといけないだろ!」


「──っ、ジャンダルーム……! っく、だが勝ち目とはなんだ。攻撃の通らぬ無敵の、あやつをどう殺すというのだ!!」


「希望ならあるさ、今、復活した所だ!」



 俺の見つけた希望、俺の目に映る存在。


ゆらりと、ゆっくりと、躰を大地から引き剥がし、立ち上がった。



──エーレクッスフレンテ。ピエルレの負傷と共に力を失っていた彼女は、ピエルレの死の力に汚染されたデスランドの法則によって動き出す。自然に独りでに、当然のように動き出す。



「エーレックス! 俺に力を貸してくれ!!」


「うん! 兄ちゃん!」



 エーレックスが笑顔で頷いた。





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