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罪と真実



「っく……キリがない! あいつの魔力は無限なのか……?」



 勇者レギオン、バルサーリオットとの戦闘が始まって数十分が経過した。俺、龍装化したテルミヌスのミーティア・シャワーでバルサーリオットの拡散ビーム攻撃を相殺し続け、分かったことは、バルサーリオットの魔力は殆ど無限に近いということ、そして龍装化テルミヌスのミーティア・シャワーでの攻撃の相殺では相手の方が有利であることだった。


元々、そんな気はしていた。テルミヌスのミーティア・シャワーは明らかに消耗が激しい。せめて燃費をどうにかしないと、いずれ全ての攻撃を迎撃できなくなってしまう。



『ジャンさん、エルの青き炎の力を使うのです! アグニウィルムの龍の炎の力じゃなく、青き炎の力を使えば、効率よく攻撃を相殺できると思うのです!』


『そうか! 青き炎は、異界の力を弾く作用、そして異界の力を引き寄せる特性がある。力が衝突する瞬間に強く反発してこの世界から消し去る。バルサーリオットが個の世界化を行ったならば、今の奴は自身の異界化を行ったってことだ』



 エルの助言を聞いて俺はミーティア・シャワーの出力を絞り、代わりにエルの青き炎の力を織り交ぜた。エルシャリオンから続いた歴史、その結晶がエルシャリオンの亡霊を打つ力となる。なんとも皮肉な話だ。



『よし! いいぞ、いける。これならいくらでも相殺し続けられる』

『なんだ、この力は……! 異界の、イモートの、力ではない……?』


「中々に鋭いなバルサーリオット。この力は、お前が排斥した純血でないエルシャ人達が生み出した力だ。お前が捨てた、可能性だ!」



 そうだ、エルの力は元を辿ればエルシャリオンの技術。魂やより高度な次元への干渉技術はエルシャリオンの技術を発展させ、昇華させたもの。そしてかつてイモートを打ち倒す為に作られたこの力は、今、イモートと手を取り合い、さらなる進化を遂げている。誰もが想像しえなかった領域へ。


エルシャリオン人達も、自分達の技術がこんな形で使われるなんて……──



 ──エルシャリオン人? 勇者レギオンの主人格はエルシャリオン皇帝バルサーリオットだ。そして推測になるが、奴が勇者レギオンの核となれているのは、勇者レギオンを構成する魂、怨霊の大半がかつてジーネによって虐殺された純血のエルシャリオン人達の後押しがあるからだ。


つまり、エルシャリオン人の怨霊達の賛同がなければ、バルサーリオットはこの勇者レギオンの核とはなれない。


このバルサーリオットが果たして、民に支持されるだけの器を持っているだろうか? 否、それはありえない。帝国主義によって世界支配を順調に進めていった段階ならば、皇帝の支持はありえただろう。


しかし、ジーネの存在によって帝国が敗北の未来に傾いた時、その責を問われるのは皇帝となる。古代の大戦の末期では、バルサーリオットを支持する者は減っていたはずだ。



 生きる為の防衛戦争ならば、まだわかる。だが、必要以上の権威拡大の為の戦となれば、人々の心情はついてこない。教育やプロパガンダにだって限界がある。ましてや、帝国であれば他民族、他国家を吸収しているのだ。他国から見た自国の視点も、同時に帝国へと吸収される。


世界にとって、エルシャリオン帝国が“悪党”となっていたのは、嫌でも理解してしまう。エルシャリオン人は、そんな現実を勝利によって逃避する他ない。


 人は愚かであると、学者達は言うが、俺はそうは思わない。確かに人間の行動は、時に愚かな結果を引き起こす。感情を、熱狂を、権力者に利用されることで。だが、その後必ず、それを正そうとする力が働く。


勝者が歴史を作っても、文化は作れない。


権力者が行動を支配しても、その心までは支配できない。戦の後は、必ず戦を嫌う人々が生まれる。戦を盤上から眺めるだけの権力者には分からない。命懸けで戦うことが、どれだけ人々の心を疲弊させるかを。


戦を経験した親が子に繋いでいく。戦による悲しみを。戦で親を失った子が心に刻む、戦による喪失感を。



 死した怨念は憶えているはずだ。バルサーリオットの愚かさを。であれば、可能かもしれない。バルサーリオットを勇者レギオンの核から引きずり下ろすことが!



「思い出せ! エルシャリオン人よ! バルサーリオットは、帝国を滅びへと導いた者だということを! 恨むべきは、本当にイモートだったのか? 止まれたはずの覇道を、止めなかった故の悲劇、そうじゃないのか?」





『──貴様は、何を言っておるのだ?』


「なっ……まさか、お前の覇道が、人々に支持されていたって言うのか? それだけの理由が、あったって言うのか?」


『……? ジャンダルーム、貴様が何を言っているのか理解に苦しむ。なぜ──下々の者に理解され、支持される必要がある?』



 なんだ……? バルサーリオットのこの態度はなんなんだ? どうにも話が噛み合わない。どこか、致命的なすれ違いがあるような、そんな気がする……



『──臣民はワレだ。ワレと一つになり、究極であるワレと一体化し、共に究極の存在となったのだ。不満などあるはずがない』


「は……? お前、何を、言って……」


『ック、ハハハハ!!! そうかそうか、そういうことか。貴様の言動の意図が理解できなかったが、そうか。貴様らは、この時代の者達は──我らの存在を正確に記憶していないようだな』



 勇者レギオンが嗤う。俺を、テルミヌスを見て。



『──純血のエルシャリオン人は皆、ワレになったのだ。魂を書き換え、ワレと同一化し、記憶、意思、全てを共有した究極の生命となったのだ。天才であるワレと一体化することで、全ての民は才気溢れる超人となり、究極の幸福を感じることができたのだ』


「お前……お前は、何を言ってる……っ! 何を、言ってるんだ……っ!」



 頭が、脳が、こいつの、バルサーリオットが吐いた、言葉の理解を……拒む。底しれぬ恐怖と不快感が、俺の胸を締め付ける。



『全ての人々を究極の幸福へと導けるはずだった。ワレという人類最高の到達点と一体化すれば、それ即ち、人類のゴールだよ。最高の幸福の中で生き、死ぬということ。それを、あやつが、ジーネットリブが邪魔をした!! まぁ、奴に追い詰められたからこそ、思いついたことではあるがなぁ』



 は……? なんなんだ、こいつは……魂を、書き換えたって、言ったよな? こいつ……どうして、そんなことをして、自分を肯定できる。自分を疑わない?


反省の色なんて、まるでない。自分が悪いことをしたなんて思っちゃいない。むしろ、良いことをしたって、思っている。


魂を書き換えて、その、人の意思……生きた証、記憶を、歴史を……こいつは、消したのか。全部消してしまったのか……?


あいつに取り込まれた、エルシャリオン人達は、もう、自分がされた事を、怒ることも、悲しむこともできないというのか……!? ッッッ──!!



こんな、こんな残酷なことが、あるのか……死さえ、救いにならない。書き換えられた魂達は、今も、自分がバルサーリオットだと、思い、込んで……っく、クソ、クソがッ!!



【お兄ちゃん……】



『奴に追い詰められたワレは考えた。奴の、ジーネの弱点をなぁ。あやつは強い力を持っていた。それこそ世界を今すぐに支配できる程の力を、だが、それを有効活用できない愚か者であった。道徳だの倫理だの、奴は言っていたが、そんなものは究極へ至る為の足枷でしかない。だから奴の道徳、倫理を盾にすることとした──純血のエルシャリオン人全てをワレと同化させた。魔術であろうと、奴等の超能力であろうと、覆せない、不可逆な術式でな』



「お前は、お前はクソ野郎だ!! バルサーリオット!!」


『ククク、ハハハハ! 貴様もジーネと同じことを言うのだなァ? 奴もそう言って、ワレを罵倒した。しかし、想定外だった。ワレもジーネが純血のエルシャリオン人全てを皆殺しにするとは思わなかった。道徳や倫理というものが大事であるなら、ありえないことだと、宰相から聞いたのだがなぁ。だからこそ、実行したのに、奴はワレが取り込んだ純血のエルシャリオン人全てを、ワレらを絶滅させてしまった』


「そうか……そういうこと、だったのか……なぜ、ジーネがそんな虐殺をしたのか、ずっと、理解できなかった。だが、今、やっと、分かった……」


『貴様、泣いておるのか? 何故貴様が泣く必要がある? 敵が死んだ理由を聞いて泣く意味がないだろう?』


「意味……っ、意味だと……? 泣いているのは理屈じゃない、いつだって心だ。お前は、心のない、怪物だ……っ! この、問答すら、無意味なんだろう。お前の心に響くことはない、伝わることはないのだろう……! だとしても、俺は言葉を紡ぐことはやめない。せめて、泣くこともできない、お前達の為に、俺が怒ってやる。泣いてやる。お前達を、解き放ってやる!!」



 エルシャリオン人は結局、純血であろうとなかろうと、皇帝の奴隷だった。否、奴隷よりも酷い。


人としての尊厳を全て奪われた、哀れな被害者でしかなかった。かつて純血以外を奴隷扱いした彼らだが、自業自得で済ませるには、あまりにも哀れだ。


だとすれば、俺にできることはただ一つ、バルサーリオットという存在を、概念を消し去り、バルサーリオットに取り込まれた彼らの魂を解放することだけだ。




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