表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/142

闇の顕れ



「──ッ! なんなんだこれは、一般兵が魔法クラスの攻撃をするなんて……」



 味方陣地の立て直しの時間を稼ぐ為、ダモス兵の実力を測る為、一人戦場を駆けるオーブ。オーブが戦場で見たモノ、それはオーブの理外のものであった。


オーブはダモス兵達のブレのない機敏な動きから、彼らは精鋭クラスの実力を持っているだろうと予測していた。そしてオーブの予測は当たっていた。


──けれども、剣を交わしたその瞬間に、オーブは未知の感覚を味わった。振るった剣が、当然のように弾かれた。さらにはまるで魔法のような光球がダモス兵から放たれ、地を穿った。自身の剣技が世界最高峰の剣であると自負を持つオーブにとって、それは想定外のことであり、己の剣を弾いたダモス兵に“技巧”を感じなかった事が、何よりの違和感だった。


人間らしさのない、無機質な超反応と、魔力ではない“何か”が剣を弾く、不快感。理外の現実が、悪寒がオーブの思考を鈍らせようとする中で、オーブは思い出す。



「──僕は、何を弱気になっているんだ! 皆に啖呵を切ったのは誰だ! 僕は、見つけなきゃいけないんだ。こいつらに勝つ方法を」



 ダモス兵がオーブを囲み隙のない連携攻撃を仕掛ける。ダモス兵の前衛が槍でオーブを誘導し、後衛が誘導したポイントに光球を放つ。人間離れした完璧な連携は、人間には不可避の攻撃だった──本来であれば。


──しかし、オーブドラスは人を“超えている”


──故に、敵の想定を超えて、刹那を超えた“零”の斬撃を行うことを可能としていた。



 オーブにダモス兵が理解できないように、ダモス兵もまた、オーブの技を理解できなかった。オーブが何をしたのか、それすらも理解できぬまま、兵の躯は三つに分かたれていた。



「──サード・ゼロ・ベルスーズ。認識できなければ、流石に弾けないか。でも、こんな技、部下達は真似できない……僕だって、アグニウィルムの強化を受けて初めてできたんだ──待てよ? 認識できなければ弾けない?」



 オーブは地面に剣を叩きつけ、土埃で周囲の視界を遮った。そしてそのままダモス兵を切る。



「よし! 弾かれなかった。しかも、反応速度も遅かった。あの人間らしさのない動き、きっと決められた動きしかできないんだ。だから相手の動作予測が不確定な状態では、動かない。反射で直前にしか動けないなら、あの謎の弾く力は間に合わせられない。でも……だとしても、まだ足りない。このまま戦えば兵も民も、全滅だ……今は派手に動いて引き付けるしかないな」



 オーブは敵を切るスピードを上げた。わざと大きな音を立て、土煙を撒き散らし、己の存在を敵にアピールする。


意思持たぬダモスの兵は、愚かな木偶人形のように、オーブに引き寄せられていく。危険な存在をいち早く排除する為に。




◆◆◆




「誰にも止められないなんて、意図的に通された、ってことか。アルズリップ、ピエルレトゥース、エーレックスフレンテ。俺と、話をして欲しい」



 ダモスの三女神、俺の妹達は、ダモスの改造船の上で座り、俺達を見下ろしている。最初彼女達は緊張した面持ちだったが、俺が話しかけると一瞬だけニコニコと、ご機嫌になっていた。


その一瞬見せた表情は、俺の記憶にあるディアの表情と同じだった。こんな表情を見せたあと、照れ隠しでスンとする所までセット……同じだ。ああ、この子達は、間違いなく俺の妹なんだ。



「戦いをやめろ。にぃにはそう言いたいんでしょ?」


「そうだ。でも、それはそれとして、アルズ、教えて欲しいんだ。どうしてお前達がこんな選択をしたのか」


「別に、ピエルレもエーレックスも、ウチに巻き込まれただけなんだから……」


「そうだけどーピエルレ達はピエルレ達で理由があるからー。さみしくないよ」



 ピエルレがバツが悪そうなアルズの頭を撫でて慰めている。なんかいい子だな、この子が本当に封印されるようなヤバい妹なのか? 俺がそんな事を思っていると、三人目のダモスの妹が口を開いた。



「え~っと~、面倒だから~ボクが先話しとこ~。ボクはね~兄ちゃんのお姉ちゃんになりたいんだ~! だからその為には~兄ちゃんの魂を改造する必要があるんだ~心からボクがお姉ちゃんなんだって思えるようにね~」


「ええええっ!? そんな理由でウチに協力してたの!?」


「そだよ~」



 妹であることに飽きたんだろうか? 俺を魂レベルで弟にする為、俺を改造したいというエーレックス。まぁ確かに、倫理観が欠如していそうだなこの子は……悪気はなさそうなのが余計にヤバい……でも俺が提案を受け入れれば問題はなくなりそうだな。



「ついでに~ボクの言う事を何でも言うこときくようにしちゃうんだ~! えへへ~ナイスアイディアでしょ~?」



 駄目だこれ……提案を飲んだら……ヤバい予感しかしない……こんなの他の妹が絶対黙ってないものな……妹同士の大戦争に発展しかねない……



「はいはいー! じゃあ次はピエルレねー! ピエルレはー、にぃ様を究極のゾンビにしてぇーずーっと遊んでもらうのー!」


「究極のゾンビ? え? ゾンビって、じゃあ俺、死ぬの?」


「うん!」



 ものすごい元気なYESがピエルレから返ってきた。でもこれって……



「ピエルレの考えって、もしかして他の妹、封印されてない妹達とあんま変わらないんじゃないのか?」


「うん、ジーネ達、妹の主流派閥である永遠派とピエルレの考えは殆ど同じ。お兄ちゃんを永遠に生きる存在へと改造して、永久にお兄ちゃんと一緒になるのが目的。ただ、ピエルレの方法だとお兄ちゃんを一度死ぬ必要があるし、ピエルレは他の妹もゾンビ化させようとしてるから……」


「ちょっと倫理面で行き過ぎてるから強調できないってことか。ま、別に俺はゾンビになってもいいけど」


「駄目だよお兄ちゃん!!」


「そうだよ! 何言ってんのにぃに!? ゾンビになったら赤ちゃん作れなくなっちゃうでしょ!?」


「赤ちゃん……?」


「あ! ああ、ああああ! 違うよ!? ウチはにぃにとの赤ちゃんが欲しいとか、そんなことは思ってないんだからね!」



 これ、思ってらっしゃるヤツだ……アルズリップ。


ディアの顔を見ると、俺から目を逸らした。しかも、ディアの心が読めない……あ、これ……



「は、はは……やれやれだな」


「ジャンさん大変なのです! 一人許したらみんな来て、きっと大変になっちゃうのです。終わりなき生殖の日々、その先の未来では、この世界の住人の殆どがジャンさんの子どもになっているに違いないのです」



 他人事のように笑うエル。こいつもなんというか、タフになったな。エローラの方はもうずっとさっきから赤面状態で、地面だけを見つめている。きっとエッチなことを考えているんだろう。



「えぇーにぃ様はゾンビOKって言ってるのにー。まー、いっかー、万が一死んじゃったらーゾンビにする感じでー。だからーアルズも失敗して大丈夫だよー? ゾンビにしてあげるー、それでずっと一緒ー! ふふ」



 やっぱりピエルレは考え方がズレてるだけで、いい子そうだな。多分死の捉え方が、他の妹達と違うだけだ。



「それで、首謀者のアルズはどうして、なんだ?」


「う、ウチは……ウチは、もう我慢できないの! 全部、全部ディアが悪い! ウチは、ウチはにぃにの為に全部我慢しようって決めてたんだから! なのに、なのに、ディアはウチを、仲間を、裏切った! ディアを殺して、ウチは、にぃにと結婚する! ずっとずっと一緒にいるの。ずっとずっと、待ってたんだから、苦しかったんだから! だから、ねぇ……!? いいでしょ? にぃに?」



 アルズリップは縋るような目で俺を見る。


涙に濡れる目で、不安そうな声で、紡がれたその言葉は。


俺の胸を、重く、重く、突き刺した。



 ──自覚が、やってきた。さっきまで、お気楽に会話していた自分を、殺したくなる程に、胸が、苦しくなる。


だって、きっと……この言葉は、アルズだけのものじゃないから。



 ディアも、ジーネも、俺の全ての妹が、思っていたこと。俺を求めて、苦しんだ。ずっと、ずっと、気の遠くなる程の長い年月を。


俺はかつて彼女達の兄であった頃の記憶すら忘れ、苦しみを知らず、のうのうと生きてきた。


記憶はない、ないのに……何かが、胸の奥底で、深い深いどこかで、ざわついてしまう。このざわつきこそが、きっと俺が彼女達の兄である証明なのだろう。魂に刻まれた、絆の印。



「お兄ちゃん! お兄ちゃんは何も悪くないよ! だって、お兄ちゃんにはどうしようもなかったことで……」



 ディア、俺の心が伝わっているのなら、分かるだろう? 仕方のない事、どうしようもない事、そんな風に、割り切ることなんて、俺にも、お前達にも──妹達にもできないって。



「お前達が望むなら、俺は永遠を受け入れる。ずっと一緒にいる。だから、もう、戦いはやめよう」


「──やだ。いや、やめないんだから。ディアは殺す、絶対に!」


「な、なんでだよ! アルズ! ディアだって、俺の大事な妹なんだ! お前も、ピエルレも、エーレックスも! 二人もアルズを止めてくれよ! 俺だって妹が殺し合うのは嫌だ、見たくない!」


「ピエルレは止めないよー? だってー、死んでからゾンビで仲直りすればいいでしょー?」


「ボクも止める気ないかな~? ボクはディアのこと嫌いだし~? 卑怯者の癖して、純粋を司るって、喧嘩売ってるでしょ~? ねぇ~ディア~? 自分でも、おかしいって、自覚あるでしょ~?」



 なんでだよ……なんでこいつら、ディアを殺すことにだけ、こんな纏まってんだよ……



「ま、そういうことだから~。はいど~ん──」



 ど~ん、と、間の抜けた声でエーレックスが言ったその時、ダモスの改造船の船首が変形し、巨大な砲身を露出した。


そしてそのまま、まばゆい光を放ち、光は線となってデスランド開拓拠点を薙ぎ払い──


──廃墟へと変えた。


建物の殆どが一瞬にして崩壊し、沢山の命が、一瞬にして消えてしまった。



 う、嘘だ……嘘だ……なんで、なんで……本当に、本当に殺したのか? 


こんな、こんな自問に意味はない。わかってる……わかってる……何が起きたのかぐらい……でも、こんなの、こんなの信じたくない……



俺が……お前達をそうさせてしまったのか?


孤独が、苦しみが、お前を怪物にしてしまったのか? エーレックス……!





少しでも「良かった!」「続きが気になる!」という所があれば


↓↓↓の方から評価、ブクマお願いします! 連載の励みになります!


感想などもあれば気軽にお願いします! 滅茶苦茶喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ