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デスランド



「──で、その後俺は海奈落でマニュールを頼って、あそこの人間世界との直通遠球境を通って、こっちにやってきて、そこから本格的に旅を始めたってわけ。そこからも色々あったけど、俺の旅の原点、俺がどう旅をするのか、それを決めたのは、やっぱあの、最初の魔族領の旅なんだ」



 俺にとっては懐かしい思い出話、隠してたわけじゃないけど、思えば殆ど自分の過去を話したことはなかったな。あの頃は、今の自分がこんな旅をしてるだなんて、想像してなかったな。


俺に実は妹がいて、一緒に旅をして、他にも旅の仲間ができて、相変わらず人に助けてもらってばかりの旅だけど、俺なりに本気で生きてきた。



「ぐ、ぐぬぬぬぬっ!!! うがあああああぁ!!」


「ちょ、どうしたんだよディア!? めっちゃ怒ってる!?」



 ディアが物凄い不機嫌になりながら俺に抱きついて離さない。



「もう! なによそのグラミューズとかいう女!! わたしを差し置いてお兄ちゃんと婚約するだなんて!! 大体! お兄ちゃんが嫌がってるのに、そ、そんな、だ、ダーリンなんて呼んで!! ぐぬぅううう!! もぉおおーーーーーー!!」


「あはは、こんなにおこなディアさん初めて見たのです~!」



 エルはお気楽に笑っているがディアは明らかに俺に体重を乗せていて、ちょっとしんどい……それでも遠球境の内部では浮いていて落ちることはない、ホント不思議な空間だ。



「まぁまぁ、ジャンと魔王さんの婚約は解消されたんだろ? しかしあれだな、ジャンも大変だな、厄介な女ばかりにモテるとは……俺様の血が変な感じで出たかぁ?」



 ナスラム帝国へと続く遠球境、ここに入って数時間経つ、本当に長いなこの遠球境は。これなら偉大な無名様──ロンドの話も聞けるか?



「むぅ~! そういう問題じゃなーい! お兄ちゃんは妹以外とイチャイチャするのは禁止! 禁止! 禁止です! けど……グラミューズが黄金に光ってたって……まさかね……そんなわけないよね……」



 なんだディア? グラミューズが黄金に光ってたのが何か問題でもあるのか? 多分神化しそうになってただけだと思うんだけど。グラミューズが神化したらめっちゃ強いライバルになっちゃうとか、そういう話か?



「あ、景色の色変わってきた、外の色が混じってきたから、もうすぐ到着っぽいわね」


「あホントだ! ジャンの兄貴! もうナスラム帝国だよ! ナスラム帝国領、第二開拓域、デスランドだ!」



 俺の地元、アルピウス村の親友にして俺の弟、チャウスと何故か旅に同行している硝子のエルフ──エローラがこの不思議なトンネルの終わりを告げる。


マジ? これじゃあまたロンドの話を聞けそうにないな──っと。



「ここがデスランド、名前の割に発展してるっぽいけど、ここが開拓地なのか?」



 遠球境から出て、たどり着いたデスランド、名前的に荒廃している人の住めなさそうな場所を想像していたが、見たところ乾燥気味ではあるものの、緑がないわけじゃない。


屋根が頑丈そうな金属板で強化された建物が立ち並ぶ、人の営みが見える街。変わった所を探すなら、寒いのにヤシの木に似た木が大量に生えていることと、よく見ると地面がボコボコなことだ。



「ほら、地面がボコボコだろ? こいつは全部火山の噴石だ。かなりの頻度で悪意ある噴火が起こるのさ、このデスランドではな」


「悪意ある、噴火?」


「ああ、ナスラムがこのデスランドを手を入れてから実に3000年、それが今でも“開拓地”な理由の一つだ。大昔から今までこの地を己が物としようと様々な種族、民族が争った。元々は滅多に噴火もない、温暖な土地だったが、このデスランドで争うもの達に怒った火山の神竜──アグニウィルムが火山を操り、争うものを排除し始めた。火山で噴火させりゃあ、普通は熱くなるもんだが……ヤツはこの小世界の熱を吸収して、噴火の次弾を装填する。おかげでこの地は寒くて危険な場所に生まれ変わった」



 マジ? ロンドの話が本当ならそのアグニウィルムは3000年怒りっぱなしってこと……?



「マジかよ……でもなんだってこんな土地を未だに開拓しようとしてるんだ? こんな大変な土地、無理して開拓するメリットなんてなさそうだけど」


「デスランドには宝があんのさ」


「宝? え!? それってどんな」


「神竜の息吹、アダマスタブレス。存在に生命力を与え、力を育む神力が、この小世界を満たしている。まぁ簡単に言えば、この小世界にある存在は強く成長するってこった。生物無機物問わずな。ほら、ここらの建築は屋根が金属だろ? あれは全部アダマンタイトだ、ただし──元々は鉄の、だがな。外から持ち込んだ、ただの鉄が進化してアダマンタイトになった」


「あ、ははは、そりゃ滅茶苦茶だ。誰だって危険だろうと欲しくなるね」



 アダマンタイト、この大世界オトマキアにおいて最強格の金属の一つ、それが鉄をこの土地に置いておくだけで量産できてしまう……けど、強化するのは生物無機物問わずって、ロンドは言った。ならば当然、アグニウィルムからすれば侵略者である、この地を狙う者たちも強化してしまう。


アダマスタブレスは多分、そのアグニウィルム由来の力、現象だろう。だとすると、アグニウィルムは自分の敵を強くしてしまう、そんな自己矛盾を抱えている。


だが、アダマスタブレスによって強化された侵略者達でも、少なくとも3000年、この地を支配できないでいる。ま、普通に考えたら神竜とその眷属に人間が敵うわけないしな。俺がエドナイルで戦ったゴーレムドラゴンですら国を滅ぼす力を持っていた。その強化版がいると考えれば……なんか、むしろ……だいぶお目溢しを貰ってる気がしてきたぞ……?


だって、どう考えてもアグニウィルムがやる気だしたら、人間なんて簡単に全滅するものな……



「ま、アダマスタブレスがあって、複数の遠球境があってだからなぁ。大変な土地だが、この地を支配できたら、全世界を制覇するのは難しくねぇ、投資する価値はある。さて、んじゃ領主の屋敷に行くぞ。ここじゃ噴石で危ない──」



 ──バゴォオオオン!!



「う、うわあああああああああ!! いってるそばから、噴火してるー!!」



 おそらく噴火と思われる爆音、轟音が響いた。音のする方を見て、俺は初めて火山の存在に気がついた、見つけることができた。なだらかで超巨大なその火山の上で、巨大な竜がジャンプして踏みつけているのが見えた。



「急ぐぞ!! ダッシュだダッシュ!」



 俺達は降り注ぐ噴石から逃げながら領主の屋敷へと走った。振り返ると、アダマンタイトの屋根できたはずの家々の一部は噴石に耐えられず崩壊していた。ひ、ひぃ……


こういうことか……噴火が治まるまで適当な建物に避難すればいいんじゃ? 逃げながらそう思ってた俺だけど……これは適当な建物じゃあ駄目だ。最高クラスの魔術による強化の施される領主の屋敷でなければ、安心はない。領主の屋敷でもちょっと不安だが……ここはロンドの判断を信じる他ない。





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