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選定! 黄金郷代表



「勝者、グラトン・ゴルディアス、この者を魔力料理の領地対抗戦、ゴールドテンパランス代表とする!」



 魔力料理の領地対抗戦の二ヶ月前、黄金郷の代表が決まった。グラトン・ゴルディアス、金髪で病的な青白い肌の、シャドウピクシー混じりのサキュバスだ。


 シャドウピクシー、俺が会ったのは女しかいなかったけど……実は男もいるのか? それともシャドウピクシーは女同士でも子孫を残せるのか?


無論、シャドウピクシーが混じっているということは、グラトンのサイズはシャドウピクシーの大きさだ。なので彼女は魔力で人サイズの腕を作り、それを使って器用に調理をしていた。



「どもども~~! それなりにがんばるんだよ~」



 なんだかゆるい印象を受けるグラトンに若干の不安を覚えつつも、俺とグラミューズは彼女を料理人として強くする為、空いた時間は全部彼女に付きっきりとなった。



「どすか~? わりといい感じだと思うんだよ~」



 毎日、グラトンの料理を味見するわけだが、グラトンの料理は人間の俺が食べても普通に美味しいと感じられるものだった。一応社会的欲求を満たすように魔力を込めているらしいが、これがどの程度の効果があるのか……そこはサキュバスじゃないと分からない。


だから俺はグラミューズを見て判断をするわけだけど、グラミューズはずっと難しい顔をしている。その割にはグラトンに何を言うでもなく、何か迷っているように感じられた。



「グラミューズ、何か思う所があるのか? それなら言ってくれないか? 何がヒントになるかわからないし」


「そうなんだよ魔王さま~」


「……このやり方では足りない気がするのだ。サキュバスの社会的欲求を満たす方式は、おそらくマニュール陣営もやれるだろう。それどころか、さらに発展させた形である可能性が高い……だとすると、こちらも更に発展性を見出さければならないのだが……余には具体的な案が思いつかん」


「そっか~、でもそれなら簡単なんだよ~! マニュール様ができないことをこっちがやればいいんだよ~」



 グラトンの言うことは一理ある。だけどマニュールにできないことってなんだ?



「我々にあって、奴らの陣営にないモノ……あ、愛とか……?」



 えっ、愛!? グラミューズが俺をチラチラと見ている。地面と俺を交互に……



「なるほど~! 確かにマニュール様はそういうの興味なさそうなんだよ~、でもグラトンには愛が分からないんだよ~」


「うおっほん、それならば我がお前に料理で教えるしかあるまい。よし、というわけでダ、シャンカールよ、手伝ってもらうぞ」


「えぇ? 手伝うってどうやって?」


「こう、余が料理をするから、お前は余を後ろから抱きしめるのだ」


「わかった、これでいいか?」



 ぶしゅーーーー! グラミューズに俺が抱きついた瞬間、グラミューズは真っ赤になって湯気を出し、倒れてしまった。



「ちょ! えぇっ!? だ、大丈夫かグラミューズ!」


「だ、大丈夫……死んではいない。ダメだ……自分から行くのはいいけど、ダーリンの方から来られると、もうダメ……頭おかしくなっちゃう……」



 攻撃力は高いけど防御力が低いモンスターかな?



「じゃあ俺が前でグラミューズが俺に抱きつけばいいんじゃないのか? グラミューズも魔力の腕を生やせるし、それで料理できるだろ」


「まぁそうですけど……ダーリンからというのをもっと試してほしい。だってこっちの方が愛の力が出せそうな気がしますので」



 口調がおかしくなっているグラミューズが上目遣いで俺を見てくる。正直、トキメキよりも危機感を抱くが、理屈は分かるので俺は従うことにした。



「じゃあ、後ろからだと覚悟ができないかもしれないから、向かい合って俺から──ってちょ、向かい合っただけで倒れた!?」


「シャンカールさんツヨ~い! 魔王様ざこざこなんだよ~」



 その後もグラミューズは何度も倒れては立ち上がり、どの方式なら耐えられるのかを探っていった。


そうして最終的にたどり着いた答え……



「本当にこれで大丈夫なのか? 見えないから誘導してくれよ」


「う、うん……」



 それは俺が目隠しをして、横からグラミューズに抱きつくという方式だった。スイカ割りの如く、俺はグラミューズの指示に従って動く。


どうやら不意打ち気味にやられるのと、俺に見られているという認識がグラミューズには危険らしく、俺の姿が確認できつつ俺がグラミューズを視認できないというこのやり方が採用となった。


実際、今のところグラミューズは倒れること無く、料理の音が響き続けている。



「なぁ、なんか料理長くないか? いつもならとっくに終わってる気が」


「ちょっと、つ、次の料理もこのまま、試したいなぁ~って」


「魔王様~、グラトンはもう飽きたんだよ~もう空の鍋をかき混ぜるのはやめてほしいんだよ~」


「なっ、グラトン余計なことを言って!」


「え……?」



 グラトンの発言が気になり俺が目隠しを外すと、グラミューズが空の鍋を木べらでかき混ぜていた。これはどういうことだと、グラミューズの顔を見ると──ぶしゅーーと湯気を出し、赤くなってグラミューズはやはり倒れてしまった。



「魔王様はシャンカールさんとイチャイチャするのに職権濫用するのはやめてほしいんだよ~」


「全くだ、どうだ? グラミューズの料理は、愛の感覚が再現されてるのか?」



 もぐもぐとグラミューズの作った肉の煮込み料理を食べるグラトン、数回もぐもぐとした所で、グラトンが目を見開いた。



「たぶんされてるんだよ~! シャンカールさんも食べてみるんだよ~!」


「──む、むぐぅ!?」



 グラトンがぎこちない箸さばきで肉を俺の口元へと運び、押し込んだ。



「こ、これは……なんだ? 包まれるような、体が軽くなるような、幸せな感覚……これが、グラミューズが調理中に感じていた感覚なのか……? これが、愛、なのか……?」



 正直に言うと、俺はこの感覚を知らなかった。だけど、それは心地の良い感覚だった。



「あんまし、解説しないで……ダーリン、恥ずかしいから……」



 意識を取り戻したグラミューズが悶えて地面を転がっている。



「そうは言ってもだろ! 勝つためには再現が、分析が必要でしょうが!」


「は、はいぃ……おっしゃる通りでございます」



 それからグラトンと共にこのグラミューズの料理を分析していった。正確に言えば、グラミューズの愛を。その間、グラミューズは赤面、いやド赤面していた。真っ赤も真っ赤だ。



「うーん、多分グラミューズ様の愛の再現は危険なんだよ~だから不採用なんだよ~」


「そうだな、俺もその方がいいと思う」


「えっ!? 待って! なんで!? わたし、二人にわたしの愛を分析されて、死ぬほど恥ずかしかったのに……なのに、ダメなの!? そんなのって、ないよ~!」



 グラミューズは涙目だ。もう魔王としての威厳は保つ気がないらしい。



「いや、何度か食べて分かったんだけど、確かに幸せな感覚で満たされるんだけど……視野が狭まるというか、心が暴走するというか」


「そうなんだよ~勝負には勝てるかもだけど、グラミューズ様が演説で言ってたような未来には繋がらないんだよ~」


「と、言うわけだから、愛は愛でも親愛の情、友情だとか家族愛、隣人愛の方向でいこう。そっちは社会的欲求を満たす方式とも相性良さそうだし」



 グダグダがありつつも、どの武器で領地対抗戦に挑むか、それが決まった。社会的欲求を満たす感覚と友情の再現で勝負する。





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