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砂漠、そして自称妹




「ふぁ~ぁ、よく寝たぁ~……ってうわッ!? ディア!? びっくりした……」



 朝起きて一秒も待たず、俺の眼の前には美少女がいた。パジャマ姿で、俺に添い寝をするようにして、俺のことをじーっと見ている。



「あ、お兄ちゃん! おはよう。朝ご飯用意しておいたから一緒に食べよう?」



 俺のことをお兄ちゃんと呼ぶ、白髪の美少女。名前はディーアーム、俺は彼女をディアと呼んでいるが……俺の記憶が正しければ、俺に妹はいない。


 だから彼女は俺の妹ではないはずなのだが……彼女は俺を兄と呼び、俺と親しい関係かのように振る舞う……そう妹? 妹ともちょっと違う気もするが、なんとなくそんな感じの、兄妹的な関係性が、彼女の中には構築されているらしい。



「え? また作ってくれたの!? ありがとうディア。いやぁ……最近はディアに助けてもらいっぱなしだな。俺からはディアに何も返せていないのに……」


「気にしなくていーの! わたしはお兄ちゃんと一緒にいられることが、何よりも幸せなんだから! お兄ちゃんが幸せに生きる手助けをするのが、わたしの幸せ! それにね、お兄ちゃんの朝ご飯作るの、わたし大好きなんだー!」



 ニコニコ笑顔で指で髪をくるくると回し、ご機嫌なディア。彼女の表情を見るに言葉に嘘はないのだと分かるが……俺としては腑に落ちないというか、困惑する部分もある。だが、俺はそれはそれとして、そんな彼女を受け入れることにした。



「そ、そうなの? ディアは料理好きなのか?」


「料理自体は普通だよ。でもね、お兄ちゃんが美味しいって言って食べてくれるから。また美味しいって言われるのを想像しながら作るのが、幸せなんだ~! ふふっ、おかげでいくらでも頑張れちゃう! このままだと世界一料理が上手い妹になっちゃうね! わたし!」



 この子は良い子だ。俺に対して悪意はないどころか、俺の為に行動してくれている。料理だけじゃない、俺の仕事、考古学者……が本来のやりたい事なのだが……俺は今、ほとんど冒険者として活動している。その冒険者としての活動、冒険の為の旅支度から戦闘、身の回りの雑事……挙げれば切りがない、ディアはきっと俺が止めなければ、俺の行うすべてを手伝おうとするだろう。


 はっきり言って異常だ。普通ではない、重々しい感情が、彼女の行動の裏にはある気がする。ディアは快活に振る舞うが、どこか儚さというか、危うさを感じる。そんな彼女を見ていると俺は……なぜだか放っておけない気持ちになる。俺は彼女の兄ではないはずだが……俺の心は、まるで彼女のお兄ちゃんであるかのように、振る舞おうとする。


 そう普通なら、美少女とはいえ、知らない人物が身に覚えのない理由で、一方的に慕ってくれば恐怖を感じるだろう。実際、違和感はあるし、ちょっと不安はある。でも……そんな感情を、“そんなこと”で片付けてしまうぐらいには、俺は彼女を受け入れてしまっている。



「お兄ちゃん、今日はどうするの? 情報収集?」


「うん、エドナイル王国の図書館は一般人には使えないみたいだから、現地の人に聞き取り調査だね。それより朝ご飯だ朝ご飯! 食べよっか!」


「うん! じゃあ、わたしが食べさせてあげるね!」


「いや流石に自分で食べるよ……」



 残念そうな顔をするディア。ディアの作った朝ご飯は肉を使った煮込み料理、まるで数時間煮込んだかのような濃厚な味わい、濃厚なのに後味はすっきりで、重くない……これを朝ご飯で? 朝ご飯を作る手間でこれを……? まさか、ディアは本当に料理の天才だったりするのか……?


 料理は最高に美味かった。俺は朝からこんなに幸せでいいのだろうか?




◆◆◆




 エドナイル王国、3000年ほど続くエドナイル王家が統治する国。エドナイルはその殆どが砂漠地帯で、雰囲気はそう、前世の記憶で例えるならエジプトっぽい国だ。俺、ジャンダルーム・アルピウスには前世の記憶がある。


 前世の俺は地球という星の、日本という国で生きていた。その時の俺は考古学者になりたかったんだけど、貧しい家計を支える為に、俺はその夢を諦めた。


 父に言われた。


『金になんのかよ? 金にならねぇならやるな』


 悔しかった……俺は夢と家族を天秤にかけて、結局、家族を支えることを選んだ。高校を卒業して、期間工として働いて、最低限の金を手元に残して、それ以外を家族に仕送りした。


 父のことは、正直に言えば好きではなかった。嫌いとまではいかないが……けれど母と二人の弟のことは大切に思っていた。だから頑張った。頑張って、頑張り続ければ、いつか道は開ける、そう自分に言い聞かせて日々を過ごした。


 けれど俺は死んでしまった。車に轢かれそうになっていた子供を助けようとして、死んでしまった。前日、仕事場の先輩が作業をサボったから、俺がその尻拭いをする為に無理な残業をして、寝不足だった。体はダルいし、気分も最悪、けれども、気づけば子供を助けようとしていた。


 危ないのは分かってた。死ぬかもしれないと、直感的に分かってた。けどそれは、俺が、死んでも構わないと思っていたからなのかもしれない……辛い現実が終わり、同時に子供が助かるのなら、それも悪くないと。


 子供が助かったかはわからない。俺には車に引かれた後の記憶がないから。助かっていればいいが……


 ま、何にせよ前世の俺にも妹はいなかった。弟は居たが、妹はいない。だからディアは前世の妹とか、そういうのでもない……はずだ。


 考古学者になれず、モヤモヤしたまま死んでしまった俺は、別の新たな世界で生まれた。ここはまるでファンタジー作品のような世界だ。魔術や魔法があって、奇妙な生物がいて、個が戦場で無双する剣の世界だ。


 そしてそんな世界には、そんな世界だからこその古き時代の遺物、遺跡がある。俺はこの世界で考古学者として生きると決めた。この生は絶対に、全力で、己の求めるままに、世界を冒険し、謎を解き明かし、過去の人々の想いを、歴史という形で人々に伝えるのだ。





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