魔術の先生登場
この前シーファの正体を知った日に同時に俺たちが魔術を学んでいることが両親にばれた。
仕方なく目の前で魔術を見せると、とんでもなく驚いて喜んでくれた。
「すごい!!お前たちは天才だよ!!」
「さっそく先生を頼みましょう!!」
親バカに感じるが、両親から褒められるなんて久々だから鼻がむず痒くなった。
三日経った。エルスによると、今日魔術の先生が来るらしい。
「兄さん、どんな人が来るだろうな?」
「声を荒気ない人なら誰でもいいよ」
「やっぱり、女性がいいよなぁ。おっぱいがあって、大きなお尻に細い腰回り。訓練がはかどるってもんだよ」
「誰でもいいって言ってるだろ」
フェルスは呆れている、お前ももう少し大人になったら分かるよ。女性の魅力ってやつをさ。
「ここが私の正念場か…それにしても何もない村だな」
若い男の気配はない、酒の匂いも。退屈しそうだな。せめて、教えがいがあるやつらならいいが。
何でもこの村の領主の息子らしい、典型的親バカによる依頼だ。期待するだけ無駄だな。
「ここか」
玄関らしき場所には大人が二人と子供が二人、きっとこの家の家族であり私の依頼人と生徒たちだ。
「いらっしゃい、お待ちしておりました」
「今回はご依頼ありがとうございます。二等魔術師のクローネと申します。私の持てるすべてをお教えしますので奥様、旦那様、坊っちゃん方、どうぞよろしくお願いします」
完璧に出来る大人の対応だ。貴族向けの挨拶も忘れずにする。まぁ、貴族ではないと思うが、敬意を示すためだ。
「では、さっそくお願い出来るかしら」
「はい、お任せください」
魔術の訓練をするには十分な広さの庭だ。土地が安いのだろう。
「じゃあ坊っちゃん方、始めましょう」
「はい、よろしくお願いします」
三歳半にしては礼儀作法が出来ている。反抗的でないのは教えやすくて助かる。
「まずは、私がお手本を見せます。その後に詠唱を真似して下さい」
大きくうなずく二人。片方は目をきらきらさせて、もう一人はやる気がなさそうだ。まぁいい、子供は実物を見れば尊敬してくるものだ。
「神よ、自然よ、猛る波の力を我に与えん【ウォーターウェーブ】!!」
五メートルはある木を根本から倒す。どうだガキ共、これが魔術だ。
ん?驚いて声も出ないか?期待した反応をしてくれると嬉しくなる。
「あの、あれ」
やる気がなさそうな方が指差す先には、倒れた木が家庭菜園を潰しているのが見えた。
「母親に殺されますよ」
ヤバい、初日で解雇はまずい。ここ以外行く宛がないのだ。
「坊っちゃん方、誤魔化すの手伝ってください!!」
あれ、ワクワクしてた方がいない。
「あぁー!!どうなってるの!?」
ニヤニヤと笑いながら母親を連れてくるガキ、こいつ後でしごいてやる。
平謝りする私を見てやる気がなさそうな方が笑っている。こいつもしごいてやる。
なんとか解雇は免れて訓練を続ける。
「じゃあ、さっきのを真似して見て」
もうタメ口でいいだろう、舐められてはいけない。
「神よ、自然よ、猛る波の力を我に与えん【ウォーターウェーブ】」
やる気がなさそうなガキの出した魔術はとても澄んだ水で作られていて、きれいな弧を描き空中で弾けた。小雨のように降る水は少し温かい。
こいつは一を知って十を知るタイプだな。俗にいう天才か。
「神よ、自然よ、猛る波の…」
荒々しいその魔術は、石塀の一角を壊すほどの威力だった。
こっちの方は豪快な魔術が好きなのだろう。私が見せたものより、角が鋭く大きな魔術だった。
「って、お前今、詠唱をちゃんとしたか?」
「いえ、聞いただけじゃ覚えられなくて」
「無詠唱で魔術を使えるなんてとんでもないぞ!!
お前たち、教えがいがあるな!!」
思わぬところで二人の天才に出会えた。こいつらを育てて、実績をたてよう!!
心に固く誓い、お近づきの印にと手を握る。
こいつらには優しくしよう、大切な教え子だ。
「なぁ、あの人かな」
「あれはいつもパンをくれるルーデルさんだ」
「あれじゃないか」
「あれは村一の巨乳のイーリスさんだ」
「何!?そんな人がいるのか!?」
「父様が教えてくれたんだ」
ハルクがエルスに殴られた。まぁ、フェルスに教えたのがいけない。次からは俺に教えてくれよな。
「ん?あれじゃないか?」
「ああ、多分あれだな」
ついに来た!!身長は高く、ゆらゆらと長い髪をなびかせ、右手には杖を持っている。やはり、杖が魔術には必要なのか。
「今回はご依頼ありがとうございます。二等魔術師のクローネと申します。私の持てるすべてをお教えしますので奥様、旦那様、坊っちゃん方、どうぞよろしくお願いします」
すごい礼儀正しい人だ。きっと高名な魔術師なのだろう。
「はい、よろしくお願いします」
庭に出ていよいよ訓練が始まる。ワクワクした気持ちを抑えながら、フェルスと共に挨拶をする。
「神よ、自然よ、猛る波の力を我に与えん【ウォーターウェーブ】!!」
杖から放出された魔術は一本の木へとまっすぐ進む。その木はエルスの家庭菜園に倒れこんだ。
ヤバい、これはヤバい。エルスはキレるだろう。よし、面白そうだし報告に行こう。頭を抱えるクローネの前にエルスを連れていく。
フェルスは笑っていた。謝罪し続けるクローネの姿は面白かったからだろう。
「じゃあ、さっきのを真似して見て」
遂にきた!!まずは、フェルスから見せる。
クローネよりも澄んだ水で目を追いたくなるきれいな魔術だ。さすがフェルス、自慢の兄だ。
よし、俺の番だ。詠唱は覚えている。厨二チックなセリフは一度聞けば覚えられる。これが俺が前世で会得したスキルといっていいだろう。
「猛る波の…」途中まで言ったところで気がついた!
あれは、村一番の巨乳のイーリス!家に帰っていくのかさっき来た道を戻っている。石塀が低いお陰で、歩く度に揺れる豊満なバストに目を奪われてしまった。
やってしまった。石塀に向けて撃ってしまい、驚いたイーリスが足早に行ってしまった。
くそっ!次こそはもっと長く目に焼き付けてやる!
心に新たな野望を抱いていると、
「お前今、詠唱をちゃんとしたか?」
無詠唱でやるつもりはなかったが結果的にやってしまった。隣ではフェルスが何してんだと額に手をついている。
「いえ、聞いただけじゃ覚えられなくて」とっさに嘘をつき、ごまかした。
「無詠唱で魔術を使えるなんてとんでもないぞ!!
お前たち、教えがいがあるな!!」
どうやら、やる気になったようだ。イーリスは表情豊かに感情を表現するから見ていて面白い。
「あの、イーリス先生。無詠唱はすごいことなんですか?」
「ああ、私の知り合いにも数人しか出来るやつはいない。しかも、そいつらはみんな世界でも指折りの魔術師として名が知られている」
無詠唱が特別チートではないなら、これからは無詠唱で魔術を使っても大丈夫だろう。良かった、詠唱は結構恥ずかしいんだよね。
「よし、お前たちこれからよろしくな!!」
いつの間にかタメ口になっているがそんなことは気にならない。俺たちの手を握るイーリスの笑顔は、日光を受け輝いていた。
俺たちはその笑顔に見とれていたのか、二人して声が出なかった。
その日の夜、エルスから今日の訓練について聞かれた。
「今日の訓練はどうだった?」
「クローネ先生はすごい人で教えるのがすごい上手だった!!」
「フェルス、あなたは?」
「うん、楽しかった」
恥ずかしそうに答えるフェルスと興奮している俺を見て、エルスとハルクは嬉しそうだ。
「そうだ、父さん。俺たちに村のことを教えてくれない?」
俺はこの家の外のことはほとんど何も知らない。ここらでこの村のことをもう少し知りたかった。
「いいぞ、なら明日村を散策するか」
「いいわね、お昼ご飯は外で食べましょう!!」
無事に提案が通ったので、満足した俺はごちそうさまと言い部屋へと戻る。
すぐに部屋に戻ってきたフェルスに一つ質問する。
「兄さん、イーリスさんの生乳を見るためにはどうすれば良いと思う?」
「バカなこと言わないで早く寝ろよ」
興味無さそうなフェルスにアドバイスをもらったので、アドバイス通りベッドに入る。
「…まぁ、子供がいるらしいからその子と仲良くなったら良いんじゃない?」
隣で眠ろうとするフェルスが呟いた。
やっぱり俺の兄さんは最高だ!!明日の楽しみを見つけ、目を瞑る。
エロゲで培った知識を披露出来る日がきたな!!と考えていると眠ってしまった。
ああ、早く明日にならないかな。
三話目になります。
ゆっくりと進んでいきますが、長くお付き合いしてくださると幸いです。