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出会いの季節。それが春。

私はモブAである。モブの代表者だ。

家はなんか凄いらしいが、しかし私はモブである。


前世の記憶は無いし、不思議な力は使えないし、ここは現代でスマホはあるが魔法は無いし、神も仏も私に冷たい。


そんな私だが、前の席の子は、さながら女神だ。

可愛いし、綺麗だし、賢いし。後、抱擁力が半端ない。この子を神とした宗教があったっておかしくない。


しかし、そんな彼女に、私は苦言を呈したいことが1つだけある。



あなたの侍らせてる女神のせいで、黒板見えないんだけど!!??



これは、最高にモブな私と最高に女神な彼女と最高に邪魔な女神。そして、沢山の色濃い仲間たち(投げやり)が送る、ハートフル☆ドッタンバッタン青春ストーリーである!!

※主人公たちの通う学校は女子校です。




.˚⊹⁺‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⁺ ⊹˚.

はじめまして。初投稿する者です。

見切り発車とはこの事、とばかりの作品です。定期試験中あるある、こういう時ほど案が降りてくるをやらかしました。

そして、衝動のままに作品を投稿しました。

バカと呼んでください。


私の事など不要でしょう。

しかし、作品は何卒よろしくお願いします。


百合はないつもりです。

女子校生だって青春を謳歌できるはずなんです。

隠し味はミステリーです。



それでは、ごゆるりとお楽しみくださいませ__

我が家はお寺である。


全く有名じゃない、田舎の、近所のご老齢しか来ないようなお寺だ。小さいこじんまりとしたその建物は、無駄に山の上にある。


しかし、血筋だけは立派であった。

代々、優秀な和尚やら住職、時には庵主や霊媒師を輩出してきた(らしい)。仏に教えを受けた者がいたやら、古の強力な霊を倒した者がいたやら、御伽噺のような話をよく父から聞かされてきた。


まあ、嘘だとは思う。

と、言うのも。私は霊なんて見えない。熱心に、それはもうウザイほど話をしてくれる父も見えない。嫁いできただけの母も、当たり前だが見えない。


そういう訳で、私は今まで散々父をバカにしてきた。


その歳で、なに作り話に本気になってんだ、と。


__しかし、今。私は父の話を信じるしか他ない状況に瀕している。


白藤 歌鈴(はくとう かりん)です。えっと…よろしく?」


そう言って控えめに手を出す目の前の女の子は、女神のような人を背負っていた。






.˚⊹⁺‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧⁺ ⊹˚.

桜舞う、春の匂いと未来への夢いっぱいのその日。

ここ、東宮(ひがしのみや)女子中学・高等学校では、入学式が行われていた。


大きな体育館内で、中学受験という小学生に強いちゃいけないくらいの地獄を乗り越え、ようやっと偏差値70くらいのこの学校に合格した者達が、馬鹿な小学生達に別れを告げた喜びに、桜に負けない花を咲かせている(きっと私以外にもいるはず)。


そう、私、(はちす) (あかり)も入学生モブ代表(自称)としてこの体育館内にいるのだ!入学式という大舞台、腕がなるぜ…!


なーんて、お巫山戯もそこそこに、新入生代表のスピーチがやっとこさ終わったので拍手を贈る。


よく出来るよね。私だったら心臓吐いてた。

でもごめんね、スピーチは聞いてなかった。


まぁ…?スピーチとかってちゃんと聞かれてる方が緊張するだろうし…?やっぱ、これも1つの思いやりっていうかぁ……


しかし、本当に新入生代表の子は尊敬するよ。新入生の中で、名簿番号が1番だからって代表スピーチさせらて、それをこうも見事こなしたんだから。


私ならブッチしてたね。

いや、そんな勇気は無いね。死にそうになりながら、いや最早死にながらヘロヘロなスピーチをしてたね。


しかし!私はモブA。モブを代表する女!!

名簿番号は真ん中よりちょっと後ろ!成績は真ん中よりちょっと下!

そんな私に、スピーチなんて大役は回ってこない訳である。


そうなると、入学式なんて暇なだけなのだ。校歌とかも全然知らないから歌えないし。

入学式という晴れ舞台で早速、体育館の寝心地を確認してらっしゃる方もいるけど…


勇気あるなあの子…是非とも友達になりたいな……ハッ


今までのほほんとしていた灯に衝撃走る!!そう、実はこれから友達作りという超ハードル高高イベントを乗り越えなくてはならないのだ!!


いや、気づいてたけど…!思い出したくなかっただけだけど…!!


え、だってさぁ…ボッチはさぁ、嫌なわけでさぁ…

でもさぁ、こちとら人見知りな訳でさぁ…やっぱ知らない人に自分から話しかけるとかさぁ…無理ゲーってやつでさぁ…

担任がさぁ、何かのさぁ、気の迷いでさぁ、自己紹介とかさせてきた時にゃあさぁ、死んじゃうわけでさぁ……


しかし、時は進む一方。

先程までゆっくり流れていたはずの時間は、私がいじけている間にさっさと過ぎ去ってしまい、もう退場のお時間=教室へ向かうお時間である。

もう既に先生達は動き出しており、「ここからここの子は、僕に着いてきてねー!」なんて元気な声が体育館内に響いている。


あれ、先生に元気って言葉使うっけ…

まあ、使うか。先生の仕事がブラックだなんてそんな、ねぇ?そんな悲しいことは言いませんよ。

ところで、その声の大きな陽キャ(偏見)先生が私達を先導しているというのは事実かな?


文句は言えどもここでウダウダしたら目立つので、従順に周りに流されて体育館を出てクラスへ向かう訳だが、これからを思うと泣けてくる。



拝啓、神様仏様御先祖様。

助けてくれなきゃ信じません。



お寺の子とは思えない不信仰さを披露したところで、私は席に着いた。


陽キャ先生は手際が大変によく、名簿順に並んでいた私達新入生に歩きながら座席の説明をしていた。それはもう声の大きさを最大限に活用して。

しかし、そのお陰で私達はそれはもう俊敏に席につけた訳である。

陽キャ先生が有能だった件。好評未売中!


全6列中窓際から3列目、1列7人中1番後ろの席で乾いた笑いを出している私は、周りから見ればさぞかし変なことだろう。

友達出来なかったら嫌だから、やめよ。


私がスンッと真顔に戻った丁度その時、前の席の子が振り返った。

その手には、小さな冊子。きっと明日から始まる授業についてやら、クラブについてやら、体育を休む時のきまりやらが纏められているのだろう。


前から送られてきたのであろうそれを受け取り、渡してくれた子は前を向き直った。

そうして、私は気づいたのだ。私、今すげー真顔だった、と。


……私、友達出来るかなぁ…

いや、まあ、これからだから。勝負はこれから。まだ第一印象が決まってしまっただけだから……

……第一印象って大事って言うよね。死んじゃったかな。もう、ダメかも。



「よし、それじゃあこれから自己紹介をしてもらう!各々、興味あるやつと話してけー!今日はこれで解散だから、さっき配った冊子ちゃんと見とけよー!」



先生の煩…元気な声が教室に響いた。今まで全ての先生の言葉を聞き流していた私だが、こればっかりは聞き逃せない。

自己紹介という単語に心臓が止まりかけたが、“興味あるやつと”なる言葉を聞いた瞬間、ちょっとだけまた働きだした。


流石優秀な陽キャ先生…分かってやがる。

そうだよね、唐突に皆の前でとか全人類が嫌な奴だもんね!!


いやぁ、流石だぜ。我らが担任。抜かりないヤツめ!



さぁて、誰か話しかけてくれるかなぁ。



そんな人任せな思いで待つこと1分。誰も来ません。

死んじゃった。


笑 顔 で 待 つ 以 外 に 私 に ど う し ろ と ?


自分から、話しかける?無理に決まってるだろ、馬鹿にしてんのか。

逆に無関心そうに本とか読んじゃう?嫌われルートに直行だろ、それ。しかも、本なんて持ってねぇよ。



神も仏もいなかった。

御先祖様はきっと一般人。



頭を抱えて葛藤する私をほっぽって、クラスでは賑やかな話し声が飛び交う。私は確実に乗り遅れていた。


なんて事だ、ボッチ確定だ…


いや、待てよ。落ち着け私。今日は入学式だ。

確かに陽キャ先生は“自己紹介しとけよー”と言っていたが、中には既に外で家族と合流している人だっている。


つまり、私が帰るのは自然の摂理。要は、家に帰ってふて寝をするのが私の義務…?

よし、これからの事は、明日の私に任せよう。


全てを諦め1番やってはいけない選択肢をとり、ショボショボとカバンを持ち席をたとうとした時。

女神が降臨した。



「あの…」



そう、その子は正しく女神だった。

ストレートで胸元辺りまである光を反射した黒髪。丸くてちょっと垂れた瞳は夜空のような黒。形の良い眉は困りげに下げられている。

大和撫子を体現し、かつ優しげで抱擁力が半端なさそうな見た目は女神と形容するに相応しかった。


そして何より。

ボッチが確定しようとしていた私に声をかけてくれたところが女神である。


世の中捨てたもんじゃない。


突然のことも相まって惚けていた私に、その子は笑顔で、なおかつ柔らかで透き通った、ボーッとしてたら聴き逃してしまいそうな声で言った。


が、残念なことに、それと同時に私は表情を苦くした。

さながら馬鹿をさらけ出している事であろう。


なんということでしょう。



白藤 歌鈴(はくとう かりん)です。えっと…よろしく?」



彼女が自己紹介すると同時に、彼女の背後に女神が現れたではありませんか。


その髪はかりんちゃんに負けず劣らずの美しい黒。とても長いそれは宙を舞っている。その瞳は閉じられているが、だからこそ睫毛の長さが強調されいた。


白を貴重に緑や薄桃が差し色として入っている幾重にも重ねられた着物は髪同様、空間に広くひらめく。


髪に指された、華やかで、それでいて暖かさを感じさせる美しい金の簪も、その装飾が揺れた。

女神は、ほっそりとした白磁の手をかりんちゃんの頭と肩に置き、やんわり体を密着させ満足そうに笑うのみだ。



…………ちょっと時間止まってもらっていいかな。考え事したいんだ。



いや、いやいやいや。…え??

まじの女神いない?形容とかではなくマジモンの女神が降臨してない??


え、ん…?おーう??

ユーアー神の使い?かりんちゃんって神の使い的な感じ?


いや、何言ってんだ自分。ここ学校だぞ。しかも、私今まで霊も神も見たことないじゃん。

冷静になろう。今すべきことを考えよう。



あれ、かりんちゃんって前の席の子じゃね?



とち狂った残念な私の頭では、最早的外れなことしか考えられなくなっていた。


いや、でも割と重要だと思うんだ。だって、つまりは、さっき私が真顔を披露した相手ってことだから。

そんな私になお声をかけてくれる彼女はまじ女神って事だから。


「あの…」


自分の世界に入り浸っていた私に、不安そうな声が届く。かりんちゃんの声だ。


そうだ、今、声掛けてもらえたんだ。

返事しなきゃ!ボッチを回避しなきゃ!


「あ、えっと、よろしく!」


思ったよりも大きな声が出た。しかし、教室は握さやかMAXなので特に誰も気にしていない。

私は勢いで差し出されていた彼女の手を握った。


わぁ、手が柔らかい。まるでマシュマロ。


またもや発揮される彼女の美少女力に私がときめいていると、彼女はふんわりとした微笑みを返してくれる。そうして、しっかりと手を握り返してくれた。


「ふふっ。えっと、お名前は?」


名前に前に、“お”がついてるーー!!

凄い、お嬢様だ!きっと!


じゃない。名前聞かれてるんだ。


「蓮!(はちす) (あかり)。」


「あかりちゃん…どんな漢字?」


「灯火の灯!苗字は花の蓮。」


「凄く綺麗だね!蓮、かぁ。珍しい読み方するんだね。」


「そうだね。でも、漢字2文字だとちょっと収まり悪いんだよね…書道の時とかも、変に目立つし。」


後、たまに中国人と間違われる。

自分の名前への文句と一緒に小学校の頃の馬鹿な男子達にからかわれた嫌な思い出も出てきそうになったので考えるのをやめた。


私はあいつらから離れるためにここは来たんだ。思い出すだけ最悪である。


「そうだ。かりんちゃんの名前の漢字も教えてよ。」


危ない危ない。あのままでは人に興味ない人になるところであった。

少しキョトンとした後、かりんちゃんは笑顔を咲かせた。


「うん。えっとねぇ…白にお花の藤で、歌う鈴って書くの。」


「歌鈴ちゃんこそ、凄い綺麗な名前じゃん!歌鈴ちゃんに似合ってるし!」


もう私は大興奮である。ここまで美少女力が高いなんて、私はなんて凄い人の後ろの席になったんだ。

きっといい匂いもするに違いない。


今まで隠れていたのであろう変態が顔をのぞかせ始めた私の脳内を他所に、歌鈴ちゃんは照れくさそうに笑った。

笑顔の愛らしいことこの上ない。守りたい、この笑顔。


「嬉しい…ありがとう。

…その、これからしばらく前の席だろうから、仲良くして貰えると嬉しいな。」


「勿論!良かった…」


言いずらそうに発された歌鈴ちゃんのお願いは、私の願っているところであった。寧ろ、こっちからお願いしなくてはいけないくらいである。


初対面は真顔、その次は苦い顔、と立て続けに私の印象は最悪であったにも関わらず、仲良くしてくれるという彼女はどこの女神だろうか。

私、そこの宗教に入る。


「良かった…?」


歌鈴ちゃんの心底不思議そうな声が響いた。

先程より教室は人が減っており、案外その声が鮮明に聞こえた。


「あ、いや。友達が出来るか心配だったから…」


「私もだよ!私、自分から人に話しかけるのって苦手で…でも、灯ちゃんはなんだか大丈夫って思えたの!全然、理由とか無いけど!」


え、本当に私、大丈夫な要素あった?ダメな要素の方が多くなかった?


大変元気なお返事をしてくれた彼女は、相変わらず眩しいばかりの抱擁力満点の笑顔である。しかし、残念なことに説得力はゼロ点であった。

なんだろう…私には、モブAの私にはない察知能力的なのが彼女には備わっているのだろうか…



……もしかして、背後の女神さん関係してらっしゃる…?



チラリと再度彼女が侍らせている(?)女神に目を向ける。

女神はタイミングのいい事にこちらを向き、首を傾げた。


……今、認知されてた?

…………まさかねぇ…

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