⑥
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
謁見の場に現れた者……黒髪に濃いブルーの瞳の美しい青年。
その者を見た瞬間、ヒロインちゃんが大騒ぎ。
「ほらほらほらほら♪私はここよ~~~。貴方の恋人で~~す♪」
気狂いか言う感じで、騒ぎ立てるヒロインちゃん。
そんな彼女の姿に、殿下も側近達もドン引き。
ハッキリ言えば、滑稽以外の何者でもない。
私はその龍族と言われる青年を観察する。
ホントにヒロインちゃんが目的でここへ来たのだろうか?
それに龍族…… 見た目人族とそう変わらない。
好奇心が疼いて、どうしようもない自分がいた。
とりあえず青年がいる方へ、向かった方がいいだろう。
私が移動を開始すると、それに追従する私の仲間たち。
「ねえセディ、あの青年ホントに龍族?」
「間違いなく龍族ね。何しに来たのかしら?滅多に天空島から離れる事ないのに?」
セディも不思議そうな顔で、龍族の青年を見つめている。
空の上にある天空島。目視出来ない高い場所にあるという島。
”その天空島も気になるんだよね。高度のどの辺りにあるんだろ?”
気になる事だらけの龍族、是非ともお話をしてみたい。
それにホントに何しに来たんだ?
「ごきげんよう、龍族のお方。突然のご訪問何用かしら?」
私はそう言って、龍族の出方を見つめる。
相手も私をジッと見て、何やら考え中のようだ。
「早く助けてよ~~!あなたの恋人はここだって言ってるでしょ!」
「ミレイヤどういう事だ?恋人って一体?!」
「もちろんあなた達も私の恋人よ。皆で仲良く幸せにだわ♪」
オイオイ?!マジかよ!!きしょっ?!!
それを耳にしてゾワッとする。マジありえん!!
皆がドン引きする事を、言った自覚がない様で、殿下と側近達に平然と言った。
陛下と父も引き攣った顔で、見事ドン引きしている。
このメンバー達に、この龍族も更にお仲間に入るのか?
そう思うと、一気にキモい対象へと変化するから不思議だ。
かの青年はぼうっとした状態で、ヒロイン集団を見ていた。
「ねえねえギラちゃん、巻き込まれたくないから離れない?」
「そうですよ、ギライヤ様。」
「……ギライヤ?」
セディやレイラ達に言われ距離を取ろうとすると、龍族の青年が私の名前を口にする。
私に龍族の知り合いなどいる訳がないから、何だろうと青年を見る。
その青年は、私の顔をジッと観察する様に見ている。一体なんだ?
そしてツカツカと私に歩み寄る、龍族の青年。
「ち、ちょっと何でそっちに行くのよ。貴方はこっちでしょ~~~~!!」
ヒロインちゃんが龍族に向かって叫んでいる。
「私は皆と貴女を共有するつもりはない!」
「「「申し訳ありませんが、遠慮します。」」」
向こうは向こうで、凄い事になってんな。
こちら側も今から、波乱の予感です。
「貴女ギライヤ・リックディアス?」
「そうよ。何か用?」
周囲の状況など気にもせず、私に言葉を告げる、龍族。
「私は龍王が3番目の黒龍蒼輪。魔族とエルフの子の存続に関した話を聞いている。」
そう言って私を探る様に見ている。
「ア?!!」
突然セディが声を上げ、私を隠す様に抱きしめ本来の姿に戻った。
それにより周りにざわめきが起き、セディ本人は完全無視状態で龍族を睨んでいる。
「君はあっちに用事があって、ここに現れたんだろう。早く用事を済ませたらどうだ?」
「彼女の魅了の香りを嗅いで、もしかしてと思い来てみた。でもギライヤの方がいいと思う。」
何がいいんだ?ついでに魅了の香りって、そんなに遠くまで香るモノなのか?
疑問だらけで首を傾げる。
セディはとっても嫌そうに、龍族を睨んでいる。
「ギライヤは売約済みだ。他を当たれ!!」
「ソレって君なの?なら僕も仲間に入れてよ。」
「冗談言うなよ!!絶対イヤだ、共有する気はこれっぽっちもない!!」
私の事だと思うが、わたしの意志そっちのけで、言い争いをしている。
カリナが私の手を引いて、コッソリここを離れようとする。
「ここは危険です、ギライヤ様。」
「すぐに遠くへ行きましょう。お嬢様。」
そう言って皆がすごい勢いで、その場を離れようとする。
それに気づいた龍族は、飛び上がり私の目の前に降り立った。
騎士は臨戦態勢を取り前に出て、令嬢達も蒼い顔をしながら私を身体で隠す。
セディが何やら術を使い、私を瞬間移動させ捕まえた。
「とにかくこの場を逃げるぞ。ギライヤ、目を付けられてる。」
そう言ってセディが私を姫抱っこをする。
そして気がつけば、惑明の執務室にいた。
「つ、疲れた~、無意識に出力上げ過ぎた。まだ魔力的に余裕あるけど、精神疲労が半端ない。」
そう言って3人掛けソファーに倒れ込む。
そしてそのまま指だけ動かし、部屋の周りに絶対なる結界を施した。
セディはかなり素の状態、それだけ精神的に余裕がないらしい。
だが私も今のうちに、ヤツの事を詳しく聞かなきゃならない。
「あのさ…… 疲れてるとこ悪いが、アイツ何で重婚希望なんだ?」
要するにそう言う事だろう。
逆ハーレムになったら出て来るキャラって、なんだそりゃってヤツだ。
最終的に皆振られてヤツ一人を選ぶだったら、ただ単なる略奪オタクって奴だろ。
俺スゲーってヤツだ。
だが皆仲よくアハハハ♪だったら、お前何考えてんだ?!じゃないのか?
王子と側近達は魅了が原因だし、蒼褪めていた。
だが龍族は魅了効かないし、重婚希望だもんな。
「わからん…… 俺の記憶では唯一無二を番にするし、一夫一妻の独占と溺愛だったはずだ。龍族の話したよな?」
確かにそう聞いた。だから確認してんじゃねぇか。
ジト目でセディを見ると、手をヒラヒラと振る。
「アイツはヘンな龍族って奴だろ。それかその唯一無二の番を失くしたかだろうな。」
「そうなった場合は、自殺か狂うと言ってなかったか?」
「そうだな。だからアイツは変な龍族だと言ってるんだ。それかもう狂った状態か?」
その割には落ち着いていたけどな、あの龍族。
狂った様子などない事は、セディも分かっている事だろう。
「ポーションでも持ってこようか?」
ダラーとしているセディを見て聞いてみると、首を振っていらないと言う。
フーッとため息をついて、私をチラッと見て聞いて来る。
「お前はどう思ってる?昔龍族と番になって、寿命を延ばしたいみたいな事言ってただろう。」
確かに昔言ってたよな。
そうしないとマジで時間足りないんだもん。
セディはジッと私を見ている。
という事は返事待ちって事だろう。
「それが現実的になると躊躇うよな。ホント人間って勝手な生き物だ。」
皮肉交じりに笑えば、セディも苦笑いをする。
「俺も冷静に考えると、奴がお前と番になれば、お前の寿命が延びる事は魅力的だ。ついでに重婚希望だろう。という事は、俺もお前と結婚できる。」
いつもは理性的で知性に溢れた眼差しが、今は挑発的で野性味を感じるモノへと変わっていた。
そんな眼差しを正面から受け止める事になる。
「セディ、私と結婚したいと言うのは本気だったのか?」
「本気じゃなけりゃ、何年も言い続ける訳ないだろう。お前は冗談と思っていたのか?」
「すまん。だがあの恰好で言われて本気にする方が変だぞ!」
ふくれっ面で言えば、呆れ顔が返って来る。
「お前以外は皆気付き、知っているぞ。」
どうやら私だけ気付いていない案件だった様だ。
仕方ないだろう、恋愛関係は全然範囲外なのだから!!
「ハッ?!お前も私と同じタイプと思っていたのに!!」
「長い年月生きていれば、人恋しくもなるさ。」
くつろいだ表情を見せ、そのまま仰向けになり目を閉じた。
「で、どうするんだ。俺の質問に答えていない。」
目を瞑ったままで、静かに息をするセディ。
まるで何を言われても全て受け止めて見せるという、そんな姿勢が見えた。
「分からない。確かに寿命が延びれば、気になる所を調査できる。でも利用している様でちょっと気が引けるんだ。それにセディ、私は今まで…… その勘違いしていたからすまん。」
「仕方がないさ。だってギライヤはまだまだお子様だからね。でも…もうお子様の時間は終了だ。」
そう言って起き上がると、セディが私に近づいた。
そんなセディに私は動物的な恐怖を感じ、思わず後ろに後ずさろうとする。
でも私も一人掛けソファーに座っていた分、後ずさる事などできない。
だから背もたれに背中を押し付けるような体勢になり、セディは立ち上がりそんな私を囲い込む。
「あ、あのセディ…… ど、どうしたのかな?」
「もちろん、性的接触だ。わかるだろう、ギライヤ。」
獰猛な肉食獣の様な眼差しを向けられ、今にも食べられそうだ。
頭は完全なるパニック状態で、喉はカラカラに乾いた。
”セ、セディはエルフで、草食じゃないのか?!”
意味もない事を考えている間も、セディの猛襲は止まらない。
息が止まるほどギュッと抱きしめられ、首に寄せられた顔の近くから、息遣いを肌で感じ恥ずかしくなった。
頬が途轍もなく熱く火照る。
たぶん私の顔は今、とんでもなく真っ赤になっている。
「フフッ… 身体がガチガチに強張っているな。ギライヤ。」
そう言って首筋に何かがあてられ、チクッと痛みを伴った。
そのまま何かが下へと下がり、何度か同じ事を繰り返される。
そしてその後は手が私の顔を包み込み、セディの顔の正面へ固定された。
セディのゆるんで少し開いた唇と、色を含んだ視線とが、私を射るように圧迫する。
前世でもこんな濃密は接触はした事がなく、どうしていいのか訳が分からない。
ただ逃げ出したい、でも逃げられず、どうしようもないジレンマから涙が溢れる。
「いつもの強気なギライヤも好きだ。だが今のギライヤはもっと好きだ。」
告げるセディの眼差しの熱さにたじろぐ。
気付けば唇に、驚くほど柔らかな唇が押し当てられていた。
私は目を見開き驚いて、それ以上の事態へと導かれる。
薄っすらと空いた隙間から舌が差し込まれた。
セディの柔らかく暖かい舌が私の舌を絡めとり、彼の狂おしい程の感情を感じる。
貪るように求められる口づけに、濁流のようの翻弄される。
身体の力は抜けてしまい、セディの思うがままだった。
「ギライヤ、このまま抱いてしまってもいいか?」
荒くなった息遣いが寄せられた耳に感じて、言われた言葉の意味をよく理解できない。
目だって涙でぼやけて、呼吸もままならず、自分がどんな状態になっているのか分からないのだ。
ただセディの服をしっかりと握り、命綱の様に縋っている自分。
「可愛い、このまま食べてしまい、愛してるよ、ギライヤ。」
小鳥のような戯れるような短いキスをしたり、吸い寄せられる様に深い口づけをしたりする。
翻弄されまくりのギライヤ、もう成すがまま。
でもそんな時間を邪魔する者が現れる。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
次回は13時、完結です。