⑤
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
いろいろと調査すると、ホント不思議だなと思う事が多々ある。
「何というか、聖女と言われるのも分かる気がする。」
「ええ、そうなのです。未来視が出来るのですから。」
「しかし天災から、人災まで幅広いですね。」
ただ彼女が言った様な、大規模な災害にはなっていないのだ。
「もし惑明の道路がなければ、大変な事になっていたのでしょうね。」
「ええ、あのまま人種の仲が悪いままだったなら、世界は酷い状態だったのでしょう。」
だがこの世界は惑明の道路を造る事で、異種間交流が行われる様になった。
それによりメリットの大きさもあり、柔軟な態度になったのだ。
つまり彼女の見る未来視は、微妙なずれが生じたもの。
惑明の道路がなければの世界なのだ。
「その未来視をありがたがるかどうかは、聞いたその人次第って事だな。」
「「そうですわね。」」
そうやって報告がてら、のんびりとサロンでお茶をしている。
セディもいる事で、惑明の仕事も若干関わっている感じだ。
そのおかげで日々充実した学園生活になっていく。
完全に生物研究から離されていたら、学園生活は途中リタイアだったと思う。
そう言った意味では、セディがメイドで良かった。
つまり匙加減が絶妙だったのだ。
そんな感じで過ごしていると、今日は扉の前で不穏な騒ぎが起こった。
グラードの威嚇するような低い声が、扉の向こう側から聞こえる。
「ギラちゃん達はここにいてちょうだい。私が対処するわ。」
そう言って本来の姿に戻ったセディは扉を開け、「何事だ。」冷ややかな声が聞こえた。
もちろん扉はしっかり閉じて、扉の前を陣取っている様だ。
何気に結界まで施している、厳重対応のセディ。
「しかしセディが対応して良かったのかな?」
私が扉を眺めてそんな事を言うと、
「よろしいのでは?今は仕事中ですもの。」
レイラがそう言うと、何か含みのある視線で私を見た。
私はその視線の意味が分からず首を傾げると、カリナがフフフと笑う。
「教会の方では、今どんな感じなんだ?」
「上層部では半信半疑なようで、経過観察という扱いです。」
そのため目と鼻の先の学園に入れた様だが、扱いはいつまでも経過観察扱い……
つまり教会も扱いに困った状態なのだろう。
”卒業したら、そのまま辺境地戻りだな……”
しかしそこまで調査すると、ホント不思議でしかない訳だ。
私と接点らしきものが何処にもないのだ。
一体私に絡んで、どんなメリットがあるというのだろう?
「私に絡むメリット?変に突っかかって来るメリットって何かしら?」
「デメリットしかないですよね?そこが謎で不思議なんですよ。」
レイラも頭を捻って考え込む。
相手にするのも面倒だから、ほったらかし状態。
周りから毎日労わりの言葉を貰うほど、私は皆から憐れみの目で見られていた。
「理由が何処にも存在しないから、不気味なんですよね。」
全くその通りで気持ちが悪いから、のんびりと観察はしているのだ。
ホント意味もなく絡むとか訳が分からない。
相手は公爵令嬢でギライヤだぞ。
相手が悪過ぎないか?自分で言うのもなんだけど……
以前のんびりと庭園でお茶をしている時、そこへ突撃する変な女。
意味の不明な事を喚き散らし、一緒にいた周りの者達にも迷惑をかける。
それこそ麻薬摂取の疑いをかけられるほどに……
「検査の結果、大丈夫でしたわね。」
「あれも常日頃の行いのせいなんだよね?」
「そうですわ。なのに何故か私達が言った扱いになっていますわね。」
おかげで今度は、殿下と側近達が文句を言いに来たのだ。
実際は他の学生達が学園側に訴えた事。
余りにも意味不明で幻覚染みた妄想と妄言。
そしていつも泣いたり怒ったりと騒ぐものだから、教師たちもそれを疑った。
もともと本人に話が通じず、暴走行為ばかりした事が原因だった。
「だいたいギライヤ様を悪役令嬢呼ばわりして、ホント失礼にも程がありますわ。」
レイラがプンプンと頬を膨らませ言う様は可愛い。
だから私とカリナ嬢は忍び笑いをする。
「悪役令嬢と狂乱令嬢……どちらがマシかしら?」
カリナがそんな質問をすれば、レイラと私は顔を歪める。
「そう言えばそんな渾名で、彼女呼ばれていたわね。」
私が小さい声で呟くと、レイラとカリナはしっかりと頷いた。
そんな話をしているとドアが開いて、セディがピリピリとした空気のままこちらに戻る。
グラードもむっつりとした顔で、しっかりドアを閉め鍵をかける。
「おかえり、セディにグラード。大丈夫だった?」
私が労わる様にほほ笑む。
「「お疲れ様でした。」」
レイラとカリナも、労いの気持ちを乗せて優しい声で言った。
そんな私達の様子を見て、セディの空気が和らぐ。
グラードも肩の力を抜き、壁に寄りかかり足を組む。
「ギライヤ、あの子面白い魔法持ちだったわよ。」
オヤ?彼女に興味持ったのかな?
「それじゃあ、彼女を口説けば?」
「それはない、サンプルとしては欲しいだけだ。」
瞬殺で否定し、絶対零度の眼差しで私を睨み付けた。
そんな私達を、他の三人が面白そうに見ている事に気付かなかった。
「ねぇ、そんなに私と結婚するのイヤ?ちゃんと大切にするわよ。」
「普通に考えても、自分がヨボヨボで相手は若々しいとか嫌だよね。」
私がセディを見てそう言うと、部屋にいる者達も納得するのか頷いた。
「私も嫌です。想像しただけで地獄のようだ。」
「そのうち周りからは、旦那が息子や孫に思われるんだ。余計に婆さん気分を味わいそう……」
「エルフが人気ない、原因ソレ!見目がいいから、余計に劣等感を刺激するんだ。」
私が最後の締めで言うと、皆賛同する様に頷き拍手をしていた。
「セディ様、私思うのですが、素晴らしい魔道具や魔法陣よりも、先にすべき事あると思うのです。」
レイラが意を決してセディに告げる。
「確かにそうだ。その人を騙す魔法より、そっちが大事だと思う。」
グラードまで言う始末、それぐらい皆思っている事だ。
「なのにコイツ等、その辺ホント興味なさ過ぎ。デリケートな感情が分からないかな。」
せめて龍族みたいに、一緒に歳を重ねる魔法作ればいいのに作らない。
「別に心と精神の繋がりだけでも、満たされるモノだろう。お互い興味のある研究をし知識欲を刺激し合えば、とても楽しい時間になると思うけどな。」
たぶんそれを納得するのは、魔族くらいではないだろうか?
部屋にいる皆もそう思うのか、スンとした顔で遠い目をしている。
どちらにしろ子供が増えない事は間違いない。
「とにかく、さっきの子が面白い魔力持ちなのよ!」
もう一度セディが、焦れた様に同じ事を言う。
「彼女を要観察対象に認定します。種の存続に役立つ人材かもしれません。」
そう言って落ちた前髪を無造作にかき上げ、おもちゃを見つけた様な愉し気な顔のセディ。
今からいろいろ監査計画を立てるのだろう。
完璧な観察対象になっている。種の存続か……
しかし面白い魔法ってなんだ?気になってもセディは集中している。
話しかけても多分気付かないだろう。
”それで魔族とエルフが少しでも前進したらいいのだけどね。”
どこか突き放した様な表情で、セディを見る。
理由も原因もわかっているのに、魔族もエルフも調査ばかりで実践しない。
それを世界会議の他の種族からいつもツッコまれるのだ。
「わかってます。わかっているんですよ!だけど肉体と感情は直結しているんだ!!」
と、喚き散らし言い訳をする、エルフと魔族。
魔族など周りから散々言われまくり、ぐったり気味だ。
どうしても淫行系の魔族がいるから性欲寄りに見られるのだ。
そいつらとすれば子供が出来ないのかと、せめてコツを詳しく教えて貰えと言われる。
「彼らは腹から生まれないのです。ついでに同じ系統の魔族しか生まれないのです。」
ホントいろいろと面倒な制約が多い魔族。
それをするのが面倒で、子供が減った歴史もあるんだとか。
とりあえず種の存続とは、それだけ大変な問題を孕んでいるのだ。
ついでにセディが部屋から現れた時、殿下と側近達、そして変な女がいた。
もちろんセディの事を知っている殿下らは、大物の登場に驚き震え上がったとか。
そして彼女は……
「え、だ、誰?!エルフでめちゃくちゃイケメン…… 」
と呟き、目は完全なるハート状態で、潤んだ目で見つめていた。
何で知っているかというと、映像に映し見たからだ。
彼らがこちらに来た理由も、自分達の憶測で難癖を付ける為だった。
セディは私達にそんな時間もなけりゃ、ヒマもないと告げる。
勉強を教えている最中で、今はテストをしてる所だと言って、睨み付けたのだ。
「碌に調査もせずに馬鹿だろう。彼女達はお前らのような暇人じゃないんだ。邪魔だ!!」
顔をしかめ、鋭い眼差しをしたまま、学園の警備兵に命令し連れて行って貰う。
その間も彼女はセディに釘付けで、問題行動を起こしていた。
セディの腕を掴もうとしたり、身体をむやみに触ろうとするので、魔法で拘束される。
その後もいろいろと、殿下達はやらかしていった。
セディから事前調査を言われたのに、する気配もない。
彼女の物を隠した、脅した、嫌味を言った(言わない者が少ない)。
更に彼女の学習を邪魔し学力を下げたとか、教室が違うのにね。
他にもカンニングをしてるとか、教師を買収し学力を上げたとかいろいろある。
魔道具で映像として残されている分、誤魔化しは出来ない。
現在謁見の場で、殿下と彼女というかヒロインちゃん、そして蒼白顔で俯く側近達。
彼らを見ながらつくづく思う。
妙に恋愛脳だなと思っていたけれど、
”なるほどね、乙女ゲームの世界だったんだ。”
そんな事も知らずに、自分の好奇心のまま突き進んだ。
だって恋愛ってヤツ必要か?ギャンブルみたいなモノだろう。
行きつく所は、しょせん種の存続だ。
どんなに恋愛しても、結婚をし出産となる。
結婚相手に恋愛感情を維持したまま、生きる事は難しいと思う。
私にとっては土台無理な話で、恋愛さえ面倒くさっと思ってしまう。
現実の波は何処までも何処までも迫って来て、巻き込み埋もれてる。
這い上がり、泳ぎ切れればいいだろうけど、そこで見えるは互いの本来の姿だ。
一緒に生活をしていけば、いろんな事が起こるのだ。
お互い支え合い協力し合えればいいけれど、そう上手くいくものでもない。
そこに種族間の違いを加えれば、なおの事大変な事になるだろう。
”そこで魅了魔法の存在か。”
今謁見ではその説明をされ、周りの貴族達はざわめいている。
もちろんヒロインちゃんは真っ青な顔で、殿下達も今にも倒れそうな状態だ。
「そこで他の種族に効くか試したが、魔力量が関係する事が分かる。残念ながら魔族やエルフなど、魔力量が多い者には効かない様だ。」
陛下が説明していく中で、彼女は何を考えているのかキョロキョロしている。
そんな彼女の姿を、壇上で陛下は冷めた目で見ていた。
「そして婚約破棄と言っておったが、ギライヤ嬢と婚約してないので不可能。ついでにソルディオスは相手を自分で見つける必要があった。その相手はその男爵令嬢でいいのか?」
「そうです。私は彼女ミレイヤ・キュリアスとの婚姻を望みます。」
殿下は蒼褪めながら、しっかりとした口調で言った。
魅了と言われながらも、彼女との関係を維持したい様だ。
「ならばこれよりソルディオスは王族から抜ける。皆の者わかったな?」
皆頭を下げ了承に意を伝えた。
「ではソルディオスは、明日からキュリアスの姓を名乗れ。次期男爵だな。」
そう言われやっと意味が解り、蒼褪め驚いている。
それはヒロインちゃんも同じで、「どうして?なんで??」と騒ぎ始めた。
「女よ、知らぬようだが、ソルディオスは生まれこそ第一位だが、継承権は第7位。今回の騒ぎで継承権は剥奪。これ以上下げようもないし、王族としての責務を理解しておらん。ソルディオス、これがお前が出した結果だ。受け入れるしかない。」
「わ、私が公爵になるのではないのですか?」
「何故だ?公爵は4家と決まっておる。なるなら婿養子にでもならねばなるまい?だが事実無根の罪を着せようとする者を誰が好む?危険人物ではないか?」
「で、でもギライヤ様がわ、私に嫌がらせを……」
「それについても調査済みだ。何故今まで泳がせたと思っているんだ?ソルディオスは第7位…… 危険人物の餌として最適だったであろう。ソルディオス、以前の側仕えの件を覚えているな?それこそ側近達もだ。」
陛下が以前あった側仕えの件を持ち出され、蒼白な顔になる殿下と側近達。
彼らにとってはあの出来事は黒歴史そのものだった。
アレで殿下は継承権第7位にランク落ち、側近達も次期当主の座を失くした。
この世界の性病は、遺伝子劣化の危険があるモノだ。
魔力がある分、そこら辺がとっても繊細なのだ。
分からんけれど、ほら!私って~まだ未経験だから~~♪
「あれからも側仕えの流した話が、どうなるか調べていた。それが今回この様に繋がった訳だ。女!お主何故養女になれたと思っておる?義父は正直に白状したぞ。お主らの花畑思考を利用され、そこな魅了持ちの女も利用された。ところで、私~将来、王妃になるのよ~~って言っておったが、ワハハ!!第7位から、どうやってなるつもりだ!捕らえよ!!」
そう言ってミレイヤは捕らえれ、ソルディオスも同様に捕らえられた。
「ど、どうして私まで?!」
「お主も加担の可能性を調べる為よ。王位を手に入れる為、どうするつもりか聞こうとな?第一公爵家を手に入れようと、嘘の罪でギライヤ嬢を陥れようとしたのだ。そう言えばこれも罪だな。側近達も捕らえよ。ついでに学園に、その女が自分で罠を仕掛けている所が、監視カメラに映っておったわ!」
「ウ、嘘?!監視カメラがなんであるのよ!!私ぎゃ、逆ハーレムにしたかっただけよ。そんな国とか知らないわよ!!」
”逆ハーレム?!”
「と、とにかく知らない!第7位なんて知らないわよ。龍族が隠れ攻略者でいるんだから~、私を絶対助けてくれるわ。は、離しなさいよ。痛い目見るわよ!!」
龍族?!ってドラゴン??
エッ!いるの?来るのここに?マジで?!
「わ、私はここよ~~~。助けてよ!!」
そう言って騒ぐヒロインちゃん。
「うるさい、何を訳のからない事を言っている。早く牢へ連れて行け!」
そんな感じで、バタバタワーワーしていると……
バサッ……
大きな影が横切り、バルコニーへ降り立つ者がいた。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
次回は10時です。