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拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 そして冒頭に戻るんだが……

 あの時うっかり「婚約してないです」を言い忘れたらしい。

 陛下と父は気づかず、城の謁見の場で思わず素の対応になる。


「お前何言ってんだ?婚約破棄というのは、婚約していないと出来ないんだぞ?」


「そうです。側近らも知っているでしょう。ギライヤと殿下は婚約していません。」


 言われた殿下は目を見開いて、茫然としていた。

 もちろん側近達も驚愕している。

 やはり言い忘れているらしい。

 そんな彼らを見て、陛下と父は目に一瞬焦りがチラつく。

 つまり気づいたのだ、言い損なった事実を……

 しかしズルい大人はそんな素振りも見せず、平然とそのまま押し通すようだ。



 *******************



 その風景を大勢の貴族達は、微妙な気持ちで見つめていた。

 何でこんな馬鹿げた事に、時間を取られなければならないのか?

 ただでさえ卒業パーティーの遣らかしで、後日またやり直しなのだ。

 おかげでムダな予算、ムダな作業にムダな時間……

 つまり残業三昧の日々が待っているのだ。


 ”許すまじ、ソルディオス殿下。ただでさえ忙しいこの時期に……”


 どの貴族も領地の収支報告作成やら、決算報告書や何やらと忙しい。

 それは卒業予定だった者達も同じ事で、卒業証書を貰えず大幅に予定を狂わされた。

 卒業と共に城に出仕予定の者など、おかげで先行きが不透明になった。


 ”どうすんだよ。城の寮へそのまま入る予定が、卒業証書がないから入れない。一体どこに住めばいいんだ。新入生だってもうすぐ来るんだぞ?!”


 つまりいろんな者達の恨みを買い、恨みがましい目で見られる殿下達。



 *******************



「父う「陛下……」陛下、婚約していないとはどういう事なのでしょう?」


 目を彷徨わせながら、恐る恐る聞くソルディオス殿下。

 その後ろにいる側近達は今にも失神しそうな程で、ヒロインちゃんは何やらブツブツと呟いている。


 ”一体何言ってんだ?”


 そんな彼らを見ながら、ムダな3年間の学園生活を思い返す。



 何だかんだとあちらこちらへ行っていた私。

 幼少の頃からホント、せっせせっせと研究三昧の日々。

 だけどまだまだ生物は奥深く、終わりがないのだ。


「まさに充実した素晴らしき人生♪」


 人によってはどこが?!と言うだろうが、好きな事をしているんだ。

 充実と言わずしてなんと言えばいい。

 身体は幼児で頼りないが、それを補ってくれるセディがいる。

 それ以外にも興味を持ち研究を手伝ってくれる人達もいるのだ。


「心ときめく薔薇色の人生。ビバ異世界転生♪」


 ホント今世は、いろんな意味で充実していた。

 だか通過儀礼というモノが存在した様だ。


「学園?誰が?」


「君が、ギライヤ嬢が4月から学園に3年間通うんだよ。」


「何のために?意味あるの?」


「普通なら勉強と社交の為というけど、君には休息の為かな。うちの国では学園に3年間通う事は義務だからね。」


「貴族を抜ければ、行かなくてもいいだろう?」


「却下だ。お前なあ仮にも公爵家の跡取りだぞ。」


 陛下が呆れ返り顔で言うと、ご自分の肩をトントンと叩く。

 少しお疲れ気味の様で首をコキコキと鳴らし、ダラ~ンっとソファーに深くもたれる。


「お前はその歳で働き過ぎだ。お前はチビッ子だ。ちゃんと飯食わないから発育が悪い。生物のどうのこうの言うなら、自分をちゃんと飼育しろ。ここにいる皆の総意だ!とにかく3年間しっかり休息という勉強をし、しっかりと睡眠と食事を取って成長しろ。わかったか!!」


「そうよ、ギラちゃん。やっぱりちょっとちっさいと思うのよ。」


 セディも心配そうな顔で言っているし、


「みんな心配なんですよ。寝る子は育つです、ギライヤ様。」


「ギライヤ嬢が頑張ってくれるのはありがてぇーが、やっぱり成長は大切だ。」


 皆に私の目を見て説得され、仕方なく学園に行く事になったのだ。


 だからとりあえず、仮の婚約者殿に挨拶に向かえば…………


「まぁ成長といやぁ成長か?人族は元気だよな?万年発情期♪」


 私が愉しそうにそう言って、陛下をニヤニヤと見る。


「お前は若いのに枯れている。それはそれでいろいろと問題だよな。」


 遠い目をして陛下は、ため息をついた。


「わが公爵家の存亡の危機です。ギライヤ、身近な存続の危機も考えろよ。わが家はお前一人なのだから……」


 そんな父に私は声援を送る事にする。もう一人子供を作ればいいのだ。

 年齢的にもまだ大丈夫♪


「今からでも大丈夫だ。がんばれ♪」


「イヤ……日々のストレスで無理だ。」


「ギライヤ嬢…… お前次第だ。がんばれ。」


 なんか回り回って自分に還って来たな。

 つまり両親にストレスをかけるなという。

 どうやら平穏平和で学園生活を送る様に頑張る事になりそうだ。



 なので学園生活では公爵令嬢らしく、ホホホ…に擬態した。

 立てば芍薬座れば牡丹だ。ビバ公爵令嬢♪

 私なりに、見事な擬態を施している。

 だがどういう訳か、変な女に絡まれる。何なんだろうな?

 別にどうでもいいけど、周りの令嬢も不可解な顔をしている。


「あの男爵令嬢は、一体何がしたいんだ?」


「わかりません。ただ相手にするのも面倒ですわ。」


「確かに…… でも目障りですわね。」


 皆とサロンへ向かっていると、私にぶつかる様に走って来る。

 だから私は壁に避け立ち止まり、騎士がバリケードになる。

 そしてその横で、彼女は自分勝手にコケるのだ。

 私達はそのまま無視して、サロンへ向かった。


「ヒドイです。足を引っかけるなんて、私が何をしたと言うのですか?」


 とか言って騒いでいるけど、誰に言ってんだろうな?

 相手にするのも面倒なので、そのまま無視して私達はサロンへ向かった。

 だって私達関係ない。行儀悪く廊下を走りコケたのだから。

 私の横について盾になった騎士に聞く。


「単なる難癖でしょう。ちゃんと自分で怪我をしない様に、コケるフリしていましたよ。」


 という事、だけど凄く怪しい。


「なんか嫌な予感するから、彼女の動向を監視してくれる?」


「了解しました。その様に指示を出します。」


「せっかくなら、この前完成した魔道具を試運転してみようか?」


「確かにちょうどいいですね。わかりました。直ぐ連絡します。」


「ウン、よろしくね。ハハ、なんか学園生活も楽しくなって来たな。」


「そうですね。ぬるま湯かと思えば、意外に刺激的な日々になりそうですね。」


 廊下の角を曲がり、立ち止まって話し始めた私と騎士。

 その間連れ合いの令嬢たちは、コケた女のその後を観察していた。

 サロンにつけば、その後の状況を話してくれる。

 ついでに騎士が持っている魔道具で、彼女が勝手にコケている映像を見せると……


「面倒な事になりそうですわね。彼女の周辺調査をする様に致しますわ。」


「そうですわね。騎士も一名ではなく2名体制にした方がいいでしょう。」


 令嬢の彼女達も、ある意味私と同じワーカホリックな者達だった。

 家門の関係で、幼少の頃から仕事をしている者達。

 暗部所属のレイラ嬢と騎士団所属のカリナ嬢。


「出来れば魔術師を一人と、暗部で一人。女性がいいかと……」


 騎士の者がそう答えると、


「暗部なら私がやりますわ。」


「魔術師ならちょうど教師がおります。それともメイドがいいでしょうか?」


「何だか厳戒態勢ね?」


 そう言って私は目を細めて微笑んだ。

 ホント…… ボへ~と過ごすのかと思えば、楽しい事になりそうだ。

 もちろんそう思っているのは、私だけじゃなかった。



 それから早急に体制を見直して、魔道具も試運転を開始する。

 そして何故かセディが、女装姿で私の後ろにいる。


「私はメイドと言ったんだけど……」


「ウフフ、メイドよ。術もなかなかのもんでしょ?」


 自分の美意識をとことんまで追求するセディ。

 長年の研究結果を、今お披露目の真っ最中であった。


「スゴイです!目の色から髪の色まで、何より体型が変わっている!!」


「もしかして、細身でも術で筋肉マッチョになるの?!」


 レイラ嬢とカリナ嬢は、その術の素晴らしさに感激していた。

 護衛騎士でいつもそばにいるグラードは、スンとした顔をしていた。

 いつもセディに振りまわされる彼は、いろいろと魔術耐性が身についている。


「どうやらグラードには効いてない様だね。」


「セディア様がメイド服を着て、気持ちが悪いだけです。」


 不機嫌な顔でそう言って、ウゲッという様な仕草をした。


「という事は幻影を素に、構築されているのですか?」


「そうだよ。幻影なら姿形が自由自在で、複数を同時に騙せるからね。」


「でもグラード様には効きませんね。」


「ああ、グラードは私が嫌いだからね。だから幻影とは別の術が作用しないんだ。」


「なるほど……多重陣ですね。という事は無理ですわ。魔力が足りません。」


「単純に変装が楽だと思うよ。経費もかからない。」


「ですわね。お金は余りかけれませんわ。」


 そう言って話は終わったけれど、セディはそのままメイドとして逗留する。

 その間彼女はメイドとして、しっかりいろいろと仕事をやってのけるのだ。

 それにセディは瞬間移動が出来る為、惑明の仕事もしっかり熟すやり手だ。

 オネェだけど、仕事はすこぶる出来る人なのである。


「彼女を調査したら、不可思議な事がいくつかありました。」


 彼女は辺境出身で道に倒れた貴族を助け、そのまま養女になった。

 そして今現在、その貴族の養女として学園に通っている。


「よく学園に入れましたね?」


「なんでも教会の推薦らしいです。彼女は辺境の教会では聖女扱いのようです。」


 といっても治癒魔法があるとかではなく、ただ周りを明るい雰囲気にするのだとか。


「それでなぜ聖女扱いになるんだ?」


「飢饉があった時、暴動が起こらなかったそうです。彼女が歌い踊ったりして場を和ませたからだとか、おかげで前向きになれたと、皆が感謝しているそうです。」


「ですが同時に飢饉で皆がガリガリな時でも、彼女だけはなぜかふっくらしていたそうです。なので不審に思った者達も一部ではいました。」


 その一部の者達は現在、村に居づらくなり村を離れて行ったらしい。

 なんかいろいろときな臭いヤツだな……




読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)


次回は6時になります。

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