①
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
「ギライヤ・リックディアス、貴女との婚約を破棄する。何か言いたい事があれば、この場で聞いてやろう。」
まああれだ。卒業パーティーってヤツだ。
そして定番の公開婚約破棄ってヤツをしているんだな。
という事は………
どうやら乙女ゲームへ異世界転生していたらしい。
「何も言う事はないのだな?」
しかしだ。コイツ何言ってんだ?
さっきから聞いていれば、嫉妬であの女を虐めていたとか、本気でそう思っているのだろうか?
「逆にお聞きしますが、この私が嫉妬で、そちらの女性を虐めたとお思い?」
「そうだ!!彼女には何の落ち度もない!彼女は君の取り巻きにいろいろ言われ、泣いていたのだぞ!それだけではない。彼女を悪質な者達に襲わせるなど、言語同断だ!!」
熱血に語る殿下を、冷めた目で見ながら私は言う。
「まずそうですわね。彼女に落ち度がないと、本気で思ってらっしゃるの?婚約者のいる男性の身体を、ベタベタ触る事は落ち度でないと?ところかまわず騒ぎを起こし、泣き喚く事も普通だという事かしら?」
私はマニキュアの塗られた指先を見ながら言うと、
「そういう事ではない。だいたい常日頃から貴女は傲慢だ!それに襲う事は犯罪だろう!!」
「私が傲慢とは、フッ…… 貴方に言われたくありませんわ。それにその襲うって、私がそんな事するとお思いなの?そんなまどろっこしくて、不確かな事しませんわ。だって失敗する可能性が95%はあるはずよ。そんなバカなやり方する訳ないじゃない。本気で私がやるなら、彼女はこの場にいないわ。そんなバカな事を、本気で私がしたとお思いなの?それも嫉妬だなんて面白い冗談ね。」
会場全体が、とっても静かになった。
殿下に至っては、口を開こうとして閉じた。
そうだよな?お前が一番の被害者だもんな??
お前が一番、私のやり方を知っているはずだろう。
側近のお前達もそうだろう?
お前らも知らないはずないよな?
「わ、私は今までの事を謝って頂ければいいのです。謝って下さい、ギライヤ様!」
何かが身体全体を包もうとするが………
『消去』
ピンクの靄が消え去る。
なるほどなぁ……… そういう事なのか!
私は凄く納得し、うんうんと頷いた。
やっぱり乙女ゲームって、そういうモノなんだろう。
一人の女に群がるとか、生物的にも可笑しいと思っていたから。
その後はもちろん近衛騎士達が、殿下やヒロインさん?そして側近を拘束。
卒業パーティーはお開きとなり、後日改めて行う事になる。
****************
私の名前はギライヤ・リックディアス。
所謂異世界転生って事をやっている。
気がついたらこの世界にいた。そして何もなかった。
神らしき人が説明するとか、土下座するとかそんなモノ何もなし。
ならモブって事でいいのかね?
だが……… 私は公爵家生まれだった。
ついでに長女で一人っ子である。
“フム……… なら領地を発展させるってヤツか?”
家名も別に落ちぶれている訳もなく、貧乏でもない。
かといえばお金ザクザクでもなけりゃ、ド田舎領地でもないのだ。
公爵家だけど、可もなく不可もなし。
そんな家に生まれたのだ、私は。
前世の私はどんな人物だったか?
そこまで興味はないだろうから、省かせて貰う。
ただ一言で言えば、生物が好きな人間だった。
動物園・水族館・昆虫博物館・恐竜博物館………
ホント前世では、好きと興味で溢れていた世界だった。
そしてこの世界では、更に興味を引く生物で溢れかえっている!
人だけでも、魔族・獣人・エルフにドワーフ………
上げ連ねるだけでもたくさんの種類が存在するのだ。
もちろんそれ以外の生物も星の数ほど存在している。
“クソッ……… 何故私は人間なんだ?!”
もしもドラゴンだったら、時間と力を駆使して、ありとあらゆる生物を調べ挙げたのに!
それなのに一番非力な人間に生まれ変わるとは!!
コレが不幸と言わずして何というのだ!!!
そんな事を考えている人間に、更なる不幸が襲う。
「第二殿下の婚約者ですか?」
「そうだ。結婚後はわが家に入られる事になる。」
「お父様、私まだ5歳ですわよ。もう結婚後まで人生設計決まっておりますの?面白くも楽しくもありませんわ。死んでもよろしくて?」
「「ギライヤ?!」」
「私常々思っておりますの。何故人間に生まれたのかしらって?なのになぜそんな面倒な、男の嫁にならなくてはなりませんの?」
私は自分の両親の顔を見ながら話す。
記憶を思い出したのは4歳の時、本来なら乳児に罹る病を4歳で罹り重症化。
そこから前世を思い出し、この世界の生物を調べようと胸をときめかせていた。
だって魔物の図鑑はあれど、弱点と素材の有効活用ばかり、人に至っては目で見た違いと能力のみ。
なんかもっとこうあるでしょう!と言いたくなる様な代物だった。
「私とっても忙しいのですわ。人生費やしても、何処まで調べ上げられるか瀬戸際ですのよ。断わって下さいまし!」
結婚する相手は、私の事を理解できる男に限る。
更に領地経営が出来る文官型、王子など以ての外だ。
「いい話だと思わないの?王子様と結婚するのよ。一度会ってみない?会ってみたら素敵な方かもしれないわよ?」
「そうだぞ、ギライヤ。会ってみたらどうだ?」
なんか食わず嫌いをしている子供に対する話し方だ。
大体会って、更に面倒な事にならないか……
不満タラタラのまま、第二殿下に会う事になった。
実際会ってどうだったかというと、普通のお子様だ。
5歳の子にしては利発でしっかりとした子だとは思う。
だけど、だからどうなんだって思う。
こちとら大人の思考だからな、誤魔化しも隠しも致しません。
だって私忙しいから、コチラの世界の生物を調べたいの。
時間は有限なのだ。
「殿下に会ってどうだった?」
私はフルフルと首を振り拒否を示す。
だいたい50も近い精神年齢なのに、5歳はないだろう。
いくら生まれ変わっても、前世の価値観や感情が簡単に覆されるはずもないのだ。
殿下自体がどうかではない。それ以前の問題だった。
その後陛下と謁見し、そこで前世の話をする。
するとなんちゃって婚約者になる事をススメられた。
婚約したフリ、王妃教育するフリをし、前世の知識を必要に応じて話をする。
その代わり見返りとして、資金提供や交渉など、その他の雑多な事を引き受けてくれるという。
「それ位の年齢と高度な知識があれば、教育をする必要もないだろう。むしろいろんな事を調べ、世界の不思議を紐解いて欲しい。この世界はいろいろと事が大雑把だろうからね。(笑)」
やったー!最高な地位のスポンサーと協力者が手に入った。winwin♪
それからはとっても充実した時間を過ごす。
まず王城に自由に出入りできるから、いろんな書物を見る事が出来た。
また、ありとあらゆる種族が交わる場所、種族内の話、種族間の違いなど聞く事ができる。
お陰でいろんな事が詳しく判る様になった。
いくら魔法があっても、肉体遺伝と精神感覚はあちらと同じ。
遺伝子レベルで合う合わないはどうしても存在するし、精神面での好き嫌いも存在する。
例えば獣人は本能的行動をするし、魔族は魔力で精神寄りな行動をしがち。
エルフは自然派寄りだし、ドワーフは技術推進型だ。
そして、合理的で全く主義主張がなく金銭寄りな人族。
「知っているまたは、感じている事を文書化しましたわ。これで種族間の主義主張による、話がまとまらない理由がよくわかると思いますの。」
「こうキッチリ枠に嵌められると明確になるな。」
「いつまでたっても平行線な理由が良くわかります。」
「無意味な主張ですよね。なんかいろいろと……… 」
国同士の真ん中にある惑明の森。
この森に道を作ろうと話はあれど、いつまで経っても着工しない。
それは互いの主義主張が存在するから………
でも道は欲しい。国同士の交流と物流の活性化が図れるから………
だがその主義主張が意外にも幼稚だったりする。
「これどういう事ですの?なんとなく気持ちが良くない??」
「ああ、エルフと魔族の主張だな。頭の上の空論ばかりで埒が明かない。」
「この…… とにかく作ってすっきりしようも、意味がわかりませんわ。」
「獣人族の者は面倒がって、適当にしてくれと言っているんだ。だがすれば文句を言う。」
「材料と人足、それと酒が大量にあればいい。まだ前段階じゃなくって?」
「ドワーフだな。前準備は丸投げで、作れる状態で引き受けるという話だ。だが自己都合で作る事があるから監視が必要だな。」
もう道作る以前の問題ではなかろうか?
幼女が途方に暮れて、大人の話を聞く姿はとても滑稽だろう。
「馬鹿馬鹿しい……… 」
「「「………………」」」
素直に思った事を口にした。
だってね、それ以外言う事ないよね。
それもその話を10年以上しているのに、全く進んでいないんだから!
「もう止めたら?一生できませんわ。絶対!」
やるだけ無駄な事に時間かけたくないよね。
絶対横やりやら妨害で、更にややこしくなる事間違いなしだ。
「労力と知恵の無駄遣い。放置でよろしい!ハイ、次!!」
面倒事には関わりたくないのである。
だって私忙しいもの。やる事が別にあるのよ。
私の付き人が目を彷徨わせ、陛下や父親達を見ているけど反応ナッシング。
「で、では次はコチラの件ですが、要するに出産後の赤子の状態によるお話ですね。」
その話の内容は生まれたハーフに関してだ。
別の種族同士で交わり出産。
そしてその赤子にいろいろと、問題やら恩恵やらがあるらしい。
例えばエルフと人族だと、魔力が高くなる。
だが場合によっては、極端に身体が弱く寿命も短い。
魔族と獣人の場合は、戦闘狂や狂人と人格形成に問題が起こる。
ドワーフだと、まぁ肉体的特徴が問題だ。
ついでに酒狂いで、子供の頃からいろいろと大変らしい。
「どちらも遺伝子的に仕方ないのでは?本能型と精神型が交わればあり得ますわ。種族間の住処だって、こだわりがあり、食べ物だって好みがある。でもそれは種族の本能的欲求ではございませんの?ならばその部分に当て嵌めて、合わせていくしかありませんわね。」
ヤレヤレ……… まさに振り出しに戻るだ。
「ぶっちゃければ……… さっきの道と同じ問題なんだよ。互いに主義主張のせいで、子供がその犠牲になってるだけ……… それこそ互いに尊重し合い調和しなければ、いつまでたっても解決しない。もうさっきの延長じゃないけどさ、同族間のみ以外は、避妊って事にした方がいいんじゃない?」
茫然とした顔やら蒼褪めた顔。
もうお嬢様言葉なしね。ウンザリなんだよ。
何なんだろうね?同じ問題を孕んでいるとは思わなかった?
種の存続なだけに…… 親父ギャグかよ。
「ホント大人は勝手だよ。可哀そうに犠牲になるのは弱い者達、子供達だね。」
冷めた眼差しで言ってやる。
私の見た目は可愛い5歳の幼女、かなり精神的に抉られるだろう。
私はとっても意地が悪い性格だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
次回は18時です。
よろしくお願いします(*^^*)