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第1章ーー声の届く世界で…

アフリカのサバンナ

そこにある小さな村、、

周りを砂漠に囲まれ、生命線だった川も大災害によって塞がれた

そんな孤立した村に住むたった30人程度の住人は、町からの供給も途絶え、世界から完全に見放された

それでもこの村から容易に移動することはできない

貯蓄していた食糧や水は、もう尽きようとしていた


「まま、おなかすいたよ……」

「あと一日…明日にはおなかいっぱい食べれるからね」

「ほんと……?」

「えぇ、、あなただけは絶対死なせない、、約束よ」

「うん、。ままは外行くの?1人にしないでよ……」

「安心しなさい、お母さんはちゃんと帰ってくるわ

ちょっと隣町に行くだけよ……」

隣町には往復で一日かかる、サバンナでそんな長時間歩くことはそれだけでとてつもない危険を伴う

もう何人も村の外に行ってから、帰ってきていない……


「じゃぁ…じゃぁお姉ちゃんやお父さんはいつ帰ってくるの?…」

「覚えてなさい、ココ

あなたが無事なら、お父さんもお姉ちゃんも、そして私も、みんな幸せなのよ!だからあなただけは絶対生きて…」


母親と女の子は抱き合いながら、大粒の涙を流す

2人とも家族がもう戻らないことを理解している

それでも村の外に出なければ、生きていけない

母親はそっと手を離す

「ままが行くんならわたしも行く!」

「だめよ!危険よ!」

「危険だから!わたしがままを守るの!」

女の子は震える手で再び母親に抱きついた

1人になるより、母親のそばに居たかった

それだけだった……





翌日

「まま、わたし疲れた……」

町からの帰り道

もうすっかり日は落ちていた

母親と女の子は休息を取るため、木陰に来ていた

「早く戻らないと夜になってしまうわ、急ぎましょ」

「でも、わたし動けないよ、、」

それを聞いた母親は女の子を抱き上げると

「さすがに3歳にもなると重いわね

不思議ね…全然ご飯食べてないのに…」

「ううん ありがとう、まま」

女の子は安心したかのように、眠ってしまった








グルルルルルルルゥゥ

女の子が目を覚ますと目の前にはサバンナの猛獣がいた

「え……」

猛獣は何の躊躇もなく、すでに肉となった人間を捕食していた…

「やめて…まま…」

そこは弱肉強食の世界

もう女の子の声は誰にも届かない

グルルルルルルルゥゥ

「イヤ...タスケテ」

もう両親も、姉妹も、誰もいない

助けてくれる人はもうどこにもいない

ただ、、それでも女の子は願い続けた……


(まま、たすけてっ…)







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何億もの願いの中から、女の子の願いが神様に届いたのはまさしく奇跡であった


ーーー“アポート”ーーー


突如として猛獣の鳴き声が止み、代わりに少女の声が聞こえた

「そんな……間に合わなかった……

また助けられなかった……またできなかった……」


目の前から猛獣は消えさった

助かった女の子は勢いよく、自分を助けてくれた少女に抱きついた

「おねえちゃん…おねえちゃん…うぁぁーーーん」

「え?えっとーー………だれ?」

「ままが…ままが…うぅぅ」

「あ、そっか…助けを求めていたのはあなただったんだね

ごめんなさい、あなたのお母さんを助けられなくて…」


少女は申し訳なさそうに、母親を失った女の子と同じぐらい悲しそうな表情で言った

「私人間の命は戻せないの、だからもう…

ごめんなさい…何もできない神様でごめんなさい…」

「うぅぅ、お姉ちゃん、ありがとう」

「え?」

「助けてくれてありがとう」

それは少女にとって、初めて聞く心からの感謝だった、、



「……でもお母さんは」

「ままにね、言われたんだ

わたしさえ生きてればみんな幸せなんだって…

ほんとはすごく悲しいけど…もう一度ままと話してたいけど……」

「……強いんだね」

「そんなこと、、えっとお姉ちゃんってもしかして、、」

「私は神様だよ、名前は一応ラファエルということになってるの」

「いちおう?」

「うん、ほんとの名前はないんだ…私のママは私を産んですぐ寝たきりになっちゃったから…」

「じゃぁわたしがつけていい?」

「うんいいよ」

「ラファ、、ラファちゃん!」

「え?」

「わたしの名前はココ、ココちゃんと呼んで!」

それは少女にとって初めての友達

そして「ラファ」という名前は、その友達からもらった最初のプレゼントだった


「ココちゃん…」

「うん!よろしくね!」

「えっと、名前つけてくれてありがとう、よろしくね!」

「………」

明るく振る舞っていた女の子の目には、まだ涙が溜まっていた



「お願い…お姉ちゃん」

「私はココちゃんのお姉さんじゃないよ」

「じゃあ、、お願いします…神様

わたしと一緒にいてください!わたしを生かしてください!」

「ココちゃん…」

ーーーーーーーーー

うん、、約束する

私が守る、絶対に守るから

もう大丈夫、もし死んでも私が生き返らせるから

だからもう泣かないで

ーーーーーーーーー













「わぁぁー!すごい!ほんとに海だ!!初めて見た!!」

「名前のお返しなんだ、、どうかなぁ」

「ラファちゃんすごいよ!ほんとに神様なんだね!!」

「…!よかった〜喜んでくれた!」

サバンナからワープで移動した2人は海に囲まれた孤島に来ていた

島には小さな家が建っており、周りには遊具らしきものもあった

そこは地球ではない別次元の世界

神様が友達に送ったのは安全で綺麗な世界


「ごちそうさま!!ラファちゃんのご飯すごく美味しいー!

こんなに美味しくて、、たくさんの料理、、……」

「どうしたの!?もしかしてやっぱりまずかったかな…」

「美味しいよ、、美味しいよ、、美味しくて家族のことを思い出しちゃったんだよ……」

「お母さんのこと、、どうする、、?」

「お墓作ってあげたい」

「分かった」

そう言うと少女は手をあげ、呪文を唱えはじめた

「ちょっと待ったーー!!」

すかさず女の子がそれを止める

「ままのお墓は自分の力で作りたいの、ラファちゃんはお手伝いしてくれればいいよ!」

「お手伝い…うん!分かった!」


神様の力を封じた2人は自力で石を拾い、自分の足で高台に登り、そして自分の手で土を掘った

(まま、ゆっくり寝ててね、わたしはちゃんと生きるから)

「ココちゃん何してるの?」

「お祈りだよ、神様にお願いしてるの………あっ」

「どんなお願いか聞いてもいい?」

「うん、でもラファちゃんにはもうお願いしたよ」

「ふふっ、じゃあ改めて約束するね」

(ありがとう、ココちゃん…私を頼ってくれて…

神様だと認めてくれて…絶対に守るからね…絶対に…)












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1年後

イギリス空軍、地下研究室にて

「シェリーさん、おはようございます!」

「ラファエル様、おはようございます」

「どうしたの?緊張してる?」

「当たり前よ!やっと叶ったEU諸国との会談!

ラファエル様の処遇もそこで決まるんですよ!

あ、すみません!ついタメ口で、申し訳ございません!!」

「ははっ…心配してくれてありがとう」

長い間、孤立していたイギリスも、少しずつ周りの国との交流を回復している

その背景には人口の減少による復興の限界があった

さらに、貧しい地域や難民キャンプへの支援実績…

神様の力を嫌悪する人も、次第に少なくなっていった


「じゃあ会談に行ってくるね」

「はい!気をつけてください!」

しかし、世間は知らない

今の少女はただの幻だということに、、








「ラファちゃんいいなぁ、わたしも車乗ってみたい!」

「今?」

「うーん、明日で!今日は会談の日でしょ!一緒にここで見よ!」

「うん…」

「心配なの?」

「ココちゃん……」

「大丈夫だよ、そのために一緒に頑張ってきたんでしょ!」

この数ヶ月

2人は別次元の世界から元の世界を観測し、困っている村や貧しい地域を見つけ、物資の支援をしていた


「そんなに心配なら幻の方じゃなくて、ラファちゃんが行けばよかったんじゃない?」

「私は……その……ココちゃんのそばにいないとだから……」

「もーーーラファちゃん!甘えん坊さん!」

「うぅ、、ひどいよ、、ココちゃん」

「あぁ冗談だよ!わたしも一緒にいたいからぁ!!

もうこれじゃあ、わたしの方がお姉ちゃんみたいじゃん!」

「………そういえばココちゃんって何歳?」

「今年で4歳」

「私まだ2歳だよ、、」

「へ!?」

「ごめん、なかなか言い出せなくて」

「……うっそ、ラファちゃんまだ2歳なの!?」

「ごめんね、、嫌だったよね、、」

「あぁもうすぐ落ち込む!ラファちゃんが何歳でも大好きだよ!!

というか2歳だったなんて可愛い〜、わたし妹初めて!!」

「いもうと!?」

「うーん、でもやっぱりお姉ちゃんがいいかな、、

あ、会談始まるよ!ラファちゃん原稿持って!」

「うん!よし、頑張るぞ!」


会談は数時間にも渡り、幼い神様は人々からの要求に真摯に答えていった

中には3年前の大災害について聞いてくる人もいたが、自分の誕生による余波ということで納得してもらえた

その結果、少女はその責任をとり、中国大陸の開拓と難民への支援をすることとなった


「終わったーー、ありがとうココちゃん!助かったよ!」

「ううん、ラファちゃんすごいよ!大人の前であんなに堂々とできるなんて!!」

「まぁあれ幻だしね、、」

「そういえば…3年前の真実、みんなに話さなくてよかったの?」

「うん、もうみんなを怖がらせたくないから

私のママのことはしばらく黙ってようと思うんだ」

「そっか…でもやっぱ悔しいよ…

あの災害の原因はラファちゃんのママの誕生で

ラファちゃんはその衝撃を吸収してみんなを守ったのに…」



真実を隠し、大災害の責任を取ることになった少女は、いよいよ本格的に世界の復興に取り組むこととなる

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