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戦巫女 2  作者: 楓紅葉
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旅立ち

王都に向かう道中色々な出来事があり、それに立ち向かう。


 大海原を船は進む。海にも魔物はいるそうだが1度も遭遇しなかった。

リーナはレンを伴い甲板で海を眺めている。

「レンあまり走ったらダメだょ」

茉夏達は剣技の鍛錬をしていた。

「サクラの剣技は流派とかあるの?」

「レイノール流です、父から指南していただきました」

「私達は我流だから」

「弓は日置流だっけ?」

「先生が言ってたね」

「でも自動照準付いてるから違うよね」

「ヴァルキリーって色々便利なんですね」

「サクラも仲間なんだから力を合わせて頑張ろうね」

部屋に戻り食事にする。皆でご飯を食べていると外が騒がしい。

「どうしたんですか?」

「あそこに舟があるのですが人の気配が感じられないのです」

見ていた先に漂う舟は妙に黒ずんでいた。

「私が様子を見てきます、翔子は待機してて」

茉夏は羽根を展開すると一気に船へ飛び立つ。上空から見た感じは誰も見当たらなかった。甲板に降り立ち操舵室の様子を伺うが誰もいない。階段を降りて船室に入った。

「誰かいませんか?」

返事は無かった。奥の扉を開けると不快な空気が流れる。乗組員であっただろう骨が散らばっていた。とりあえず外に出て翔子に連絡した。

「誰もいない、白骨が散らばっていたので随分前に何者かに襲われたと思う」

「生存者がいないなら戻ってきて」

「了解」

上空に飛び立ち舟目掛けてファイアアローを打ち込み火葬した。すると船から奇怪な声を発して人と同じくらいの鳥型をした魔物が茉夏目掛けて接近する。

「茉夏危ない!」

翔子は咄嗟に矢をいったが距離も離れているので当たらない。それに茉夏が気付き剣を抜いたが間に合わずくちばしの一撃を貰ってしまった。

「茉夏!」

翔子は慌てて飛び立ち落下する茉夏をキャッチした。

「ヒール」

茉夏の傷は回復したが意識が無い。

魔物を牽制しつつ真夏を船に降ろした。

「サクラは茉夏をお願い」

翔子目掛けて飛んでくる魔物にアイスウォールを放ち激突させた。

「一式、衝天矢」

魔物の頭部を消し飛ばす。

「二式、圧水矢」

魔物の身体に打ち込まれた矢は水を圧縮し勢いよく爆散した。

翔子は茉夏の元へ急いだ、

「サクラ、茉夏は?」

「息はしてるから大丈夫だと思う」

翔子は茉夏を抱き抱えヒールを唱える。

「うっ」

茉夏から声が漏れた。

「茉夏!」

「プハッ、苦しかった」

茉夏が眼を覚ました時は翔子は涙ぐんでいた。

「油断した、心配かけてゴメン」

どうやら溝落ちに直撃して呼吸が出来なかったらしい。

「ホント、心配したんだからね」

翔子は茉夏を強く抱きしめていた。

「サクラとリーナにも心配かけてゴメン」

ふと見るとレンも茉夏の袴の裾を掴み泣いていた。

「もう大丈夫」

そう言ってレンの頭を撫でた。レンは未だに声を出さないが一緒にいる時間も増え認めてくれたのだろう。

茉夏は起き上がり身体を延ばす。

「うーっ、良し何ともない」

レンと手を繋ぎ部屋に戻った。

「リーナはレンの声を聞いた事がある?」

「唸るような声はあるけど言葉は無いです」

「もしかしてレンって声帯に異常があるんじゃないの?」

レンはこちらを見つめていた。

リーナがレンに語りかける。

「お姉ちゃんの話してる言葉わかる?」

レンは縦に首を振る。

「リーナって言ってみて」

「うーう」

「やっぱり」

茉夏はレンにヒールをかけたが効果は無かった。

「生まれつきだと怪我では無いから無理か」

「生まれた時は普通に声をだして泣いてました、両親が殺された時から声を出さなくなりました」

「旅をしながらレンの声を取り戻す事も考えないとね」

翔子の提案にリーナは頷いた。


 辺りから海鳥の鳴き声が聞こえる。

「陸が見えたぞ」

水平線の向こうに山らしき影が見えた。

「やっと着くね」

船は港を目指して直進する、漁船の姿もちらほら見えた。

船員の動きが慌ただしくなった。本来の船員が不足していて急遽雇われた人が何人かいるのでベテラン船員は忙しく動いている。帆を畳み係留準備に入った。

「いよいよ着岸するね」

港にはリンドブルム公爵領の旗がなびいていた。

ロープが桟橋に投げられる、綱引きの要領で桟橋に引き寄せられた。

「錨をおろせー」

船員が桟橋に飛び移り係留作業が始まる。

「馬車を降ろす準備しよ」

翔子が厩から馬をひき船を降りる準備をした。

「リーナとサクラは忘れ物は無い?」

「全部荷台に積んだよ」

船員の案内で船を降りた。

「巫女様ご武運を」

「はい、必ず成し遂げます」

握手を交わして別れた。


 桟橋からあがるとリンドブルム公爵の遣いの者が待っていた。

「ようこそおいでくださいました、公爵がお待ちしております」

サクラに挨拶をしている。

「サクラ フォン レイノールです、この度は出迎えご苦労さまでした」

「こちらは?」

「私の恩人でヴァルキリーの茉夏様と翔子様そして家族のリーナとレンです」

「こんにちは」

「馬車はこちらで預かりますのでどうぞこの馬車にお乗り下さい」

公爵の用意してくれた馬車に乗り込んだ。茉夏達の荷馬車は後ろからついてくる。

公爵の城に着くと沢山の使用人が列をなして迎えてくれた。執事に従い客間に通された。

「サクラお嬢様ようこそ」

「公爵様ご機嫌麗しゅう」

茉夏達も頭を下げた。

「伝説の巫女様もようこそお越しくださいました、ガイア アルバート リンドブルムです」

「お招きに感謝致します、私は茉夏と申します」

「翔子と申します、こちらは妹のリーナと弟のレンです」

「長旅でお疲れでしょう、暫くゆっくりしてください」

「それよりも魔物が沢山出現しているのはどちらですか?」

「東の森より湧いています」

「では明日から早速調査したいのですが構いませんか?」

「こちらからお願いしたいのです」

「お任せください」

宿泊する部屋に案内された。サクラと茉夏で一部屋、翔子とリーナとレンで一部屋与えられた。使用人からリンドブルム領の地図を貰い東の森を確認して窓からその方角を眺めた。

「森の辺りの空が暗いね」

「瘴気が漂ってますね」

「明日からは忙しくなるね」


 時間があったので街へ出て物資の補給をした。

特に回復アイテムを多めに購入する。

武器屋も覗いてみた。

「私は短剣やめて長剣にしたいな」

「これなんかどうですか?」

細身の長剣に魔力が付与されていた。茉夏は抜刀して握り心地を確かめる。

「うん、悪くない」

「剣が喜んでいますよ」

「これにする、幾らですか?」

「金貨5枚です」

「結構するね」

茉夏は代金を支払い装備を長剣に変更すると腰から短剣が消え勝手に長剣が腰に装備された。

翔子はダガーを見ていた。

「このタガー水晶が輝いていて吸い込れそう」

「翔子には似合いそう」

「お目が高いですね、手に取って水の魔力を込めてみてください」

翔子は言われたように魔力を込めてみると2本のダガーが魔力で1本の薙刀となった。

「凄いですね」

「ここまでの完全体に出来たのは貴女が初めてですよ」

「これは幾らですか?」

「翔子買うの?高そうだよ?」

「お代は結構です、お持ちください」

「良いんですか?」

「生産者の方に使い手が現れたら渡してくれと伝えられていますので」

「では遠慮なくいただきます」

店主に見送られ店を後にした。

翔子はアーティファクト的な武器を手にしてにこやかにしていた。

「翔子さん嬉しそうですね」

「サクラのレイピアも良い物でしょ?」

「はい、家に伝わっている物ですので」

「翔子もサクラも良いなぁ」

「茉夏さんの戦ってる姿はとても格好良いです」

「そお?ありがとう」

茉夏は照れ笑いをしていた。レンにフルーツのお土産を書い屋敷に戻った。


 歓迎の晩餐会が開かれた。貴族や大きな商会の代表等が挨拶にくる。

「ごきげんよう」

どこかの貴族の令嬢に声をかけられた。

ただでさえ着慣れないドレスで緊張しているのにごきげんようなんて漫画やアニメでしか聞いたことの無いフレーズに戸惑う。

「ご、ごきげんよう」

茉夏は思わず吃る。

「こんばんは」

翔子は普通に挨拶をした。

(翔子ずるい)

「ご機嫌麗しゅう」

サクラは慣れた対応をする。

リーナとレンは部屋でお留守番をしていた。公爵から色々紹介されたが頭に入らない。

「明日出発だから覚えなくていいよね?」

茉夏が翔子に小声で問いかける。

「いいんじゃない?」

公爵にお願いして早々に部屋に引き上げた。

「なんか疲れたぁ」

「私も」

ドレスを脱ぎ捨てて巫女装束に着替える。

「最近はこれが落ち着くよ」

「最初は嫌がってたのにね」

翔子はクスクスと笑っていた。既にリーナとレンは寝ていたので翔子は起こさないように床についた。サクラは晩餐会が終わるまで広間で楽しんでいた。


 茉夏は暑苦しくて目を覚ますと隣にはサクラが寝ている。窓の外は既に白んでいた。サクラの寝顔が可愛くて笑ってしまった。ベッドの縁に腰掛けサクラの頭を撫でていると寝言が聞こえた。

「お母様」

まだ13歳なのに大人ぶってはいたがまだ子供なんだなと思える。茉夏も家族を思い出して少し切ない気持ちになった。

顔を洗い旅支度を始める。ドアがノックされた。

「茉夏入るよ」

「おはよう、早起きだね」

「茉夏が起きてるなんて珍しい」

「まあね」

「荷物運べるだけ運んじゃお」

「そうだね」

サクラを起こさないように静かに荷物を運び出した。

「サクラ起きて」

サクラは寝惚けていて茉夏にお母様と言って抱きつく。そんなサクラが愛おしくて頬に口付けをした。

「あっ茉夏さん、おはようございます」

サクラは頬を押さえてびっくりしていた。

「おはよう、早く準備しなさい」

「は、はい」

サクラは飛び起きて旅支度を始めた。

「翔子、リーナとレンは準備出来てる?」

「うん大丈夫だよ」

茉夏は一足先に厩へ行き馬車を出した。

玄関まで行くと全員揃っている、執事が見送りに出ていた。

「公爵様はまだ寝ておられるので代わりにこれを」

「これは?」

「公爵様からの支援金です」

「感謝します」

「お気をつけて」


 執事と使用人に手を振り東の森に向かった。

「また暫く野宿だね」

「川の水が綺麗だと助かるね」

「翔子は沐浴好きだよね?」

「温泉が良いけどね」

「同感」

東の森からほど近い村に到着した。村人はリンドブルムに避難していて廃墟となっている。

「1度休憩しよう」

井戸は生きていたので食事の用意をする事にした。野営にも慣れてきたサクラはテキパキと用意をする。最近はレンも手伝おうとリーナの後を着いて回る、その姿がとても可愛くて癒される。

「リーナもレンも少し背が伸びたね」

「言わててみれば」

「次の街で服買ってあげようね」

魔物の森の近くとは思えない会話をしているとリーナの悲鳴が聞こえた。

「きゃー!」

ムカデを大きくしたような魔物が2人に威嚇している。

「任せて」

翔子がダガーに魔力を込めて薙刀形状にし飛び込み一刀両断にした。

「リーナ大丈夫?」

「うん、大丈夫」

隠れていたレンが走って出てきた。リーナは短剣を拾い鞘に収めて腰にしまった。

「無理はしないでね」

「私もお姉ちゃん達みたいに強くなりたい」

「頑張ろうね」

食事を済ませるとリーナに木剣で剣の振り方を教える。

「大振りしないでコンパクトに」

「はい!」

「常に相手から目を離さないで」

リーナは素直に言われた通りにしている。

「はい、そこまで」

「ありがとうございました」

互いに礼をして訓練を終えた。

既に日が傾きはじめていたので今日はここで野営をする事にした。井戸から水を汲み簡易的なお風呂を作る。あまり温度は上げれないものの汗を流すには十分だった。

「気持ちよかった」

茉夏は幸せそうな表情だった。

「翔子も入りなよ」

「うん」

年頃の女の子なのに野営にも慣れ度胸もついたせいか躊躇なく服を脱ぐ。

「はぁ気持ち良い」

「ねぇ茉夏」

「なに?」

「もぉ戻れないんだよね?」

「うん」

「この世界で結婚とかするのかな?」

「どうだろ?」

「ごめんね、ちょっと弱気になっちゃった」

「私達はずっと一緒だよ」

「ありがとう」

翔子は気を取り直してリーナとレンをお風呂に入れていた。

「サクラ見張り交代する」

「お願いします」

茉夏は見張り台から景色を眺めていた。

(綺麗な世界、私がここを守る)

たまに遠くで魔物の姿を見つけるが村にくる様子は無い。4時間ほどが過ぎると翔子が交代してくれたので勝手に借りている家に戻りベッドに潜った。


 夜が空ける頃合には隣のベッドで翔子が眠っている。1度目を覚ましたが再び夢の中に落ちた。

「茉夏起きて」

翔子が身体をゆする。

「うっうーん」

「早く顔を洗ってきて」

「ん」

顔を洗い眠気を覚ますと既に朝ごはんが出来ている。

「寝坊してゴメン」

「茉夏でも疲れるのね」

「私はそんなに元気満々キャラじゃないよ」

「そぉ?」

リーダーシップの高い茉夏はいつも周りを気遣っているので疲れてしまう。

「早くご飯食べちゃって」

「いただきます」

昨日の残りとパンもどきを食べて片付けた。

「森へ行きますか」

「行きましょうか」

サクラも元気に答える。

「リーナとレンは勝手に馬車から降りないでね」

「はい」

森へと馬車を進める。御者台には茉夏、後ろは翔子が警戒する。サクラはリーナに字を教えていた。

「なんかいる」

茉夏が馬車を止めた。翔子とサクラが周りを警戒する。

「いた」

真夏が指をさした場所には肉食恐竜のような魔物がいた。まだこちらには気付いていない様子だった。

「先制攻撃仕掛ける?」

「サクラは馬車を守って、私は翔子と上空から先制する」

翔子と一緒に飛び立つ。

「いくよ」

翔子はメテオアロー、真夏はファイアアローを放つ。

恐竜は突然の攻撃に怒りだした。

「馬車の逆方向に誘導する」

恐竜は大きいので弓のまま対応した。茉夏は矢尻に毒の結晶を取り付けてスナイプした。首元にヒットし恐竜が暴れだした。

「効いてるよ」

翔子が畳み掛けるようにアイシクルショットを放つと脚が凍りつき恐竜が倒れた。

「翔子ナイス」

茉夏は抜刀し7連撃を放つ。連撃終わりに翔子が薙刀で右腕を切り落とした。

「とどめ」

茉夏が剣に魔力を込めると雷を纏った斬撃が放たれた。恐竜は黒焦げになり絶命すると砕け散り水晶に変化した。

「何とか倒せたね」

「魔力使いすぎた」

馬車に戻るとサクラが蛾のような魔物と戦っていた。

「レイノール流風雅閃」

「サクラ大丈夫?援護します」

弓で動きを牽制してサクラが狙えるように努めた。サクラの連撃が蛾を捕え羽根をもいだ。

「ファイアアロー」

茉夏の放った矢で蛾は燃え尽きた。

主と思われた恐竜を倒したのに瘴気は晴れない、

「まだボスがいるんだね?」

「この瘴気の出処が怪しい」

更に馬車を奥まで進めると洞穴があった。

「ちょっと中見てくる」

翔子が中を確認する。10メートルくらいで行き止まりだった。

「ここに馬車を隠そう」

馬車を中に入れ魔法障壁で隠蔽した。斥候は茉夏とサクラで出る事にして翔子達には洞穴で野営の準備をしてもらう。

「茉夏、頼んだわね」

「任せて」

巫女装束は色合いが目立つので上からローブを羽織ると洞穴を出た。

「くれぐれも偵察だけなので見つけても攻撃しないで」

「わかりました」

サクラを連れて瘴気の出処まで徒歩で向かった。途中に深い谷があり飛べないサクラがいるから迂回せざるをえない。

谷に沿って歩いているとその奥に瘴気のやたら濃い場所を見つけた。

「サクラ下見える?」

「魔物が沢山います」

「とりあえず引き返そう」

戻って作戦を立てる事にした。


 魔物に見つからないように慎重に洞穴を目指した。

「ただいま」

「おかえり、どうだった?」

「今まで見た事も無い数の魔物がいた」

なんかいい方法は無いかと模索する。魔力の回復アイテムの数を確認していた。

「先ずは空から強力な一撃で数を減らしたいとこだね」

「まだ使ったこと無いけどホーリーアローってのがある、ただ一撃で魔力がほぼ持っていかれる」

「私もプロミネンスフレアって凄い燃費の悪い魔法がある」

明日の夜明けに歩いて偵察したポイントに行き様子を見てからサクラはその場で待機して茉夏と翔子で上空から強襲する事にした。

強力な一撃を放ち即回復、サクラを連れて下まで降りる。生き残っている魔物を掃討する予定だ。

「ボスは出たとこ勝負になりそうだね」

「サクラにも頑張って貰うけど前線に突っ込まないでね、後ろからの警戒をお願い」

リーナとレンは洞穴で待機となる。

「お姉ちゃん帰ってきてよ」

「うん、約束する」

気持ちが昂り眠ることなど出来なかった。


 やがて夜が明ける頃合になるとローブに身を包み薄明るい森を突き進む。昨日の偵察ポイントに着いた時には明るくなっていた。

「行くよ」

茉夏の号令で飛び上がる。谷間が見渡せる高度まで上がった。それを確認するとサクラは少し距離をとった。

「プロミネンスフレア!」

「ホーリーアロー」

無数の聖なる矢が放たれる。

太陽のような火の玉が地上に降り注いた。谷にいた魔物は断末魔の叫びをあげて一気に消し飛ぶ。

「回復しながらサクラを拾うよ」

「了解」

2人でサクラを抱えて谷に降りた。

苦しみながらも生きている魔物を討伐して前に進む。

先には洞窟があった。そこから瘴気が漏れだしている。

「洞窟って事は相手は無傷だね」

スマホのライトを照らしながら奥へと進む。無数のコウモリが飛び出してきたが無視をした。

少し広いところに出ると大型の魔物が3匹斧を構えて待っていた。

「やはり来たか人間」

「1匹づつ仕留めるよ」

手前のサイのような頭をした魔物に切り掛る。茉夏が斧をはね上げると翔子がダガーで連撃を与える、怯んだ所をサクラが心臓目掛けて突いた。

「先ずは1匹」

残りの2匹が挟み撃ちにしてきた。サクラはバックステップで距離をとる、茉夏は移動速度を上げた。翔子は魔法で姿をくらました。

「どこに行きやがった」

魔物は動きを追えていない。魔物の真ん中で茉夏が突然動きを止めると斧を振り下ろしてきて同士討ちとなった。翔子は後ろから急所をつく。

「残念でしたね」

残りの一体は茉夏が首を跳ねた。

「ナイス!」

「サクラも良かったよ」

更に奥に行くと大きな玉座に魔人が鎮座していた。

「ほぉここまで来れたのか」

「なんかボスっぽいセリフ」

魔人が指を鳴らすとサクラが苦しみだした。

「耳が痛い」

茉夏と翔子は何とも無かった。

「貴様ら2人はヴァルキリーか」

弓を放つが矢は魔人を通り抜けた。

「残念だったな、これは幻影だ、今はひこう」

魔人の姿は消えた。

「逃げられた?」

瘴気を辿ると瓶から漏れだしている。

「ファイア」

真夏が瓶を燃やすと瘴気が止まった。

「とりあえずリーナの所に戻ろ」

谷底でドロップアイテムを拾ってからリーナの隠れている洞穴に戻った。


 馬車は東の森を更に東に向けて進んでいた。魔物の遭遇率も下がりやがて森を抜けた、川沿いの道を進むと湯気の立ち込める場所があった。

「あそこなんだろ?」

「なんだろうね?」

とりあえず行ってみることにした。

「硫黄の匂いがしない?」

「温泉が湧いてるのかもね」

近くまでくると温泉が湧いていて川に流れ込んでいた。源泉は熱くて触ったら火傷しそうだった。

「ここなら丁度いいカモ」

川の水でいい温度の場所があった。

「今日はここで野営しよっか」

「お風呂作ろうよ」

茉夏達は石を集めて丸く囲んでいった。

「どう?」

「少しぬるいからもうちょっと川の水を止めればいい感じになると思う」

温泉に入るために頑張っていた。

「うん、良いと思う」

日が落ち前に先に食事の支度をする。

食事を終えると茉夏が真っ先に服を脱ぎ捨てて温泉に飛び込んだ。膝の高さくらいまでしか無かったが寝そべるように浸かる。

「気持ち良いよ、皆も早く来なよ」

全員で入れる広さは確保してあるので皆で入った。

「久しぶりのお風呂だね」

浅いのでレンが溺れる事も無い。

「翔子まはまた胸大きくなってない?」

翔子の後ろから茉夏が乳房を持ち上げていた。

「翔子さん良いなぁ」

「サクラはこれからだよ」

「私は茉夏くらいが良かったな」

「なんで?」

「だって肩がこるから」

「どうせ私は小さいですよ」

「茉夏さんは背が高くて立ち姿か素敵です」

「サクラありがとう」

茉夏はサクラに抱きついていた。

「サクラの肌すべすべで気持ち良い」

お風呂では女子トークで盛り上がっていた。見上げると星空がとても美しかった。


 せっかく温泉を見つけたんだからのんびりしようと旅立ちは明日にする事になった。

「平和になったらここに温泉旅館作ってのんびり過ごすのも良いかもね」

「小さな村なら作れそうな立地だから良いね」

周囲を偵察しながらそんな話しをしていた。

「次の街はどんな所かな?」

「賑やかな所だと良いね」

平和な1日が過ぎていった。


 川沿いの下り比較的綺麗な道に合流した。たまに行商人とすれ違ったりもする。暫く進むと田畑が広がりはじめた。

「村が見えるよ」

村の入口には門らしきものがある。

「旅の方ですか?」

「レイノールより来ました」

「それは随分遠くから」

「申し訳ありませんが村に入るには銀貨1枚が必要です」

わかりましたと差し出した。

村の中は賑わいをみせていた。宿屋を見つけると部屋が空いてないか尋ねる。

「5人部屋が空いてますがおひとり様銅貨30枚です」

「銀貨2枚で食事も付けられますか?」

「大丈夫ですよ」

茉夏は厩に馬車を移動させて、部屋に入った。部屋にはベッドが5つあるだけの簡素な作りだった。

「ベッドで寝れるだけ幸せか」

「贅沢は言えないね」

荷をほどき市場へ行くことにした。ぞろぞろと5人で市場に行く。

農村だけあって農作物は豊富にあった。

レンがフルーツを見ていたので買ってあげると嬉しそうな顔をしていた。

「ありがとうございます」

リーナが代わりにお礼を言う。

「私達は家族だから気にしないの」

他にも野菜や小麦を仕入れた。

服が売っているお店を見つけた。

「ここでリーナとレンの服を買いましょうか」

翔子の提案に賛成した。

「この子達に合う服を欲しいのですが」

「予算は如何程ですか?」

試しに銀貨1枚と言ってみた。

「その予算ならこの辺りですね」

古着と思われる物が数点見せられる。

「ちょっとボロいね」

「もう少し出そうね」

やはり服は少し高いようだった。

「では銀貨10枚ならどうですか?」

「こちらの貴族のお下がりなんかがそうですね」

その中からサイズの合うものを見繕った。

「これで幾らですか?」

「全部て銀貨40枚ですね」

ずっと大人しく聞いていたサクラが口を開いた。

「私は貴族だがそんなに悪くなった物を譲り渡す時に金など貰っておらんが?」

「手直しや洗濯代等含まれておりますので」

「そなたは行商人であろう?」

「いかにも」

「レイノールに来た時には口利きをしてやっても良いのだぞ?」

「海を越えて行く機会はございません」

「リンドブルム公爵とも親しい間からでな、主の力にはなれると思うぞ」

「わかりました、銀貨20枚でどうでしょ?」

「サクラありがとう、それでお願いします」

代金を支払い品物を受け取った。サクラは羊皮紙にこの者には世話になった、公爵様には優遇をお願いします。と書いて自分のサインを付けていた。

「リンドブルムに行ったらこれを門番に見せなさい」

「ありがとうございます、今後ともよろしくお願いします」

「サクラが貴族だった事を忘れてた、ありがとう」

ここから南に下ると王都グランベールがあり北に行くとハイダル子爵領となっている事を教えて貰った。

宿に戻りリーナとレンは服を着替えた。

「サイズも丁度良くて似合ってるよ」

「なんだか恥ずかしです」

「貴族に見えますよ」

レンもニコニコしていた。部屋の扉がノックされる。

「どうぞ」

宿屋の主人が扉を開き食事の用意が出来た事を告げた。

「ちょっと早いけど食事にしましょう」

「そうですね」

食堂には他の宿泊客もいた。

「お嬢さん達はどこから来たの?」

行商人と思われる人に声をかけられた。

「レイノールから来ました」

「行商人には見えないな?」

「私達は魔王を討伐する為に旅をしています」

「何か情報がありましたら買いますよ」

「そうだな、何でも東の森の魔物が討伐されたとか」

「それは私達がやりました」

「そうか、ではリンドブルム迄の道のりが平和になったのはお嬢さん達のお陰か」

「そうかも知れませんね」

行商人には笑顔をみせていた。

「王都では魔王討伐軍とやらが編成されるって話しがあるぞ」

「魔王の居場所を掴んでいるのですか?」

「俺はそこまでは知らない、1度王都に行ってみたらどうだ?」

「そうですね」

「話しは変わるが不要な物があれば買い取りますよ?」

真夏は売却予定のアイテムを数点アイテムボックスから取り出す。

「こんな物ですね」

「色々珍しい素材だね、銀貨35枚て買い取るよ」

「本当なら幾らなんですか?」

「なかなか手厳しいね、本当なら37枚ってとこだな」

「ではそれで」

「まいど」

代金を受け取り懐にしまった。

「俺は色々な街を行商してるから見つけたら声をかけてくれ、今度は高く買い取ると約束しよう」

「その言葉を忘れないでくださいね」

「これは俺からの奢りだ」

ぶどう酒を置いていった。

サクラが口を付けた。

「良いお酒ですね」

真夏も少し飲んでみた。

「美味しい、翔子も飲んでみなよ」

「じゃあ少しだけ」

食事が終わると部屋に引き上げた。

「とりあえず王都に行ってみようよ」

「良い武器が手に入るかもね」

「サクラは王都って行った事あるの?」

「1度行ってるのですがあまり覚えていません」

「王はどんな人?」

「女王陛下は民を思いやる良い人だと聞いています」

「女王の国だったのね」

「知りませんでしたか?」

「この国にきてまだそんなに経たないからね」

「公爵様のお姉様ですよ」

この国の事をもっと知りたいと思うようになった。


 一夜明けると一行は王都を目指した。

「王都ってどんなとこだろ?楽しみ」

「大きい街なんだろうね」

村から出て半日程すると関所があった。

「この先は王都に続く道です、荷台を点検させていただきます」

憲兵がそう言うと荷台に不審な物が無いかと確認した。

「王都にはどのようなご要件でしょうか?」

「魔王討伐軍を募集しているとの事を聞きましたので」

「そうでしたか、お通りください」

「王都まではどのくらいですか?」

「馬車だと5日程ですね、途中に街が2つあります」

「ありがとうございます」


 関所を通過し最初の街を目指した。

日が傾いても街は見えてこない。何台もの馬車が野営する場所があった。茉夏達も近くに馬車を停めた。

「今日はここで野営しましょう」

湧き水が湧き上がる所があり綺麗な水が手に入るので必然的にここが野営ポイントとして集まってくるらしい。

茉夏達もテントを設営した。行商人や貴族らしき人の姿も見えた。

「初めて見る顔だね?」

「はい、レイノールから来ました」

水汲み場で声をかけられた。

「海の向こうからですか、長旅ですね」

「王都に行こうと思ってます」

「まだ遠いですので気を付けて」

「ありがとうございます」

日がくれると行商人達は焚き火を囲んで話しをしている。

「宜しければお嬢さん達もこちらには来ませんか?」

「では、お言葉に甘えて」

リーナとレンは既に荷馬車で寝ていたのでそっと寝かしておいた。もしもに備えて翔子は荷馬車に札を貼る。

「これで良し」

「翔子それは?」

「魔物が近づいたら閃光で知らせてくれる」

それなら安心と茉夏は翔子とサクラを連れて焚き火にお邪魔した。

「お邪魔します」

「若い娘さんがいるだけで華やかになりますね」

「たいした話しは出来ませんよ?」

「確かレイノールから来たんですよね?」

「私はサクラ フォン レイノールと申します」

「レイノール家のご令嬢自らとは」

「私は茉夏です」

「翔子です」

「こちらのおふた方にお供をさせていただいています」

「もしや噂の巫女様ですかな?」

「噂は知りませんがヴァルキリーをしています」

「神の祝福がありますように」

「この御仁は旅の神父様にはです」

「祝福に感謝致します」

「これをどうぞ」

翔子はドーナッツもどきを皆に振舞った。

「これは変わった食べ物ですね」

「おーっ甘くて美味しい」

1人が感想を言うと皆が手を出してくれて口に頬張った。

「何とも贅沢な味ですな」

「もし宜しければ作り方を教えて貰えないだろうか?」

「構いませんよ」

「おやおや商売を企んでますね」

翔子はこの世界に合わせた作り方を教えていた。

「素材が高価で商売には難しいですね」

「そうなんですか?」

「貴族にレシピを提供するくらいですかね」

「まだまだ沢山ありますよ」

「遠慮なくいただきます」

お礼にとぶどう酒を注いでくれた。

「ありがとうございます」

お酒は苦手なので少しだけ口に含んだ。和やかに話しが弾む。

突如、不穏な空気が渦巻き荷馬車の札が閃光を放った。

「魔物?」

「皆さん落ち着いて離れないでください」

真夏が荷馬車の様子を見に行った。

「リーナ達は大丈夫」

翔子の腰にはダガーが装備された。茉夏はサクラにレイピアを渡すと弓を構える。

「いた」

茉夏は空に向かって閃光弾を放った。

背中に邪悪な羽根を生やした人型の魔物が川の上にいた。

「一式、衝天矢」

すかさず翔子が矢を放つ。かわした所に真夏が切り込む。

「火炎斬」

魔物は真っ二つになり燃え上がって消えた。

「皆さんご無事ですか?」

一通り見渡すと先程の神父の姿が無かった。

「翔子不味いね、人に擬態する魔物がいるみたい」

「十分に警戒しないとね」

サクラにもそれを告げ警戒してもらった。

「助かりました」

「流石は巫女様ですな」

「恐らく先程の神父が魔物だったと思います」

「なんと」

神父はいつの間にかそこにいて誰と一緒に来たのかは不明だった。

「交代て見張りをしますので皆さんは休んでください」

「よろしくお願いします」

茉夏達はいつも通り交代で睡眠をとった。行商人の朝は早かった。日が昇る前には各々出発する。それに合わせて茉夏達も王都に向けて旅立った。

「昨日の事なんだけどさ、やっぱり魔王に監視されてるのかな?」

「明らかに私達を狙ってたよね?」

「うん、もっと強くならないとね」

王都に近くなるにつれて道が良くなっていく。時折すれ違う馬車もあった。

サクラに御者台を任せて茉夏は仮眠をとる。いつも見張りを進んでやる為に寝不足になっていた。

「レン茉夏お姉ちゃんにイタズラしたらダメ」

レンは茉夏の手をつついていた。翔子は揺れる馬車で器用に果物の皮を剥いている。

「どうぞ」

「ありがとう」

リーナとレンは満足そうに果物を食べた。

「翔子さん人集りがあります」

翔子も御者台に移動した。

「何かあったのかな?」

馬車を停め翔子は様子を見に行った。

「何があったんですか?」

「この先で山賊に襲われたとかで怪我をしているんだよ、かなり酷いらしい」

「とりあえず進むのは危険だからここで立ち往生だ」

「あんたも王都からの軍が来るまで進まないほうが良い」

「そうなんですね、怪我人の所に連れていってくれませんか?」

「あんた医者かい?」

「違いますけど薬はあります」

「誰かこのお嬢さんをテントに案内してやってくれ」

1人の若い女性に連れられてテントに入った。見るからに命の危険がありそうだった。

「主様を治療出来るんでしょうか?」

「頑張ってみます」

翔子は主様と言われていた男性の胸に掌を添える。

「ヒール」

白い光が男性を包み込むと男性の苦しそうな呼吸が落ち着いてきた。

「恐らく大丈夫かと思いますがポーションを渡しておきますのて使ってください」

「こんな高価な物いただけません」

男性が目を覚ます。

「貴女が治療を?」

「はい」

そう言うと皮袋を渡してきた。

「どうぞお持ちください」

「結構です」

「いえいえ命に比べたら安い物です」

「では遠慮なく」

「これから王都に行くのですか?」

「はい」

「私共は王都からリンドブルムに行く予定でしたがこの有様ですので王都に戻ります、つきましては御一緒出来ないでしょうか?」

「目的地は一緒なので構いませんよ」

聞けば商館の主でリンドブルムの支店に行く途中に山賊に襲われたらしい。

「ここからだと日が落ちる前には街に着きますので」

商館の主は日の傾き具合を見てから言った。

「名乗るのが遅くなりましたケイツ商館のサロム ケイツと申します」

「私は翔子です、連れの者は後ほど紹介しますので」

ケイツ商館の馬車3台と連なって王都の道のりを共にする。

翔子は茉夏を起こすと事情を説明し護衛をする事にした。

「ヒールで治療したらこれ貰ったの」

皮袋を開くと金額が100枚ほど入っていた。

「こんなに?道中の護衛はしなきゃだね」

サロムの言った通り日が落ちる前には街に着いた。

「ここは行商人の街ルガレストです」

「行商人なのに街を作ったんですか?」

「この先の関所は審査が厳しくここで足止めされる行商人の中継地点に街を作ったんです」

「そうなんですね」

「贔屓の宿屋がありますので」

宿に案内された。

宿に入ると茉夏とサクラが挨拶を交わす。

「レイノール家のご令嬢とは恐れ入ります」

「今は茉夏様と翔子様の付き添いですので気にしないでください」

挨拶を終えるとサロムのとってくれた部屋に移動した。

5人が宿泊出来る広い部屋が用意されていた。

「これはいいお部屋ね」

「今日はゆっくり休めるわね」

荷物を置いて外を眺めていると扉がノックされた。

「よろしいですか?」

「どうぞ」

「街の食堂に食事を用意してますのでどうぞ」

食堂に案内されると行商人達て賑わっていた。

「お口に合うかわかりませんが」

「いただきます」

居酒屋のような料理が並んでいた。

「とても美味しいです」

「なんか懐かし味だね」

料理を楽しんでいるとサロムが話題を切り替えてきた。

「王都には何をしに?」

「グランベール王に謁見しに行きます」

「魔王討伐軍ですかな?」

「軍には参加しませんが情報を貰いに」

「絶対に生き延びてください、巫女様は我らの希望ですので」

「必ず」

食事を終えると宿に戻り明日に備えて就寝した。


 王都までの道のりは長い。まだ一つ街を越えなければならなかった。サロムの商隊と共に王都を目指していた。

「巫女様、そろそろ関所です」

「わかりまた」

石造りの壁が見えてくる。沢山の馬車が足止めされていた。

「何かあったみたいです」

「そうなのですか?」

とりあえず最後尾に並んだ。

「サクラ馬車お願い」

「わかりました」

茉夏と翔子は歩いて関所の門番まで行って様子を伺う。門は閉ざされていた。

「何がどうしたのかな?」

「門番に聞いてみましょう」

複数人の門番により門は閉ざされていた。

「何故閉鎖されているのですか?」

「国王様の命令です」

それ以上は何も語らなかった。サロムの商隊と合流する。

「事情はわかりませんでした」

門番達は何かを警戒するように門を封鎖している様子だったと伝えた。

「待つしかありませんね」

諦めて商隊と野営準備を始めた。茉夏達がテントを張り出すと周囲も同じような行動を始める。

そこに不穏な空気が流れ込む。門の前には1人の女性が立っていた。門番は槍を構えて囲んでいる。

「貴様そこで何をする気だ」

深く黒いローブを羽織った女性は天を仰いだ。空の1部に丸く黒い穴が開くとその中から羽を背負った魔物が無数出てきた。それに気を取られていたらローブの女性は居なくなっていた。

「クソっ、何なんだ」

兵士達は迎撃体制をとる。

「サクラとリーナは避難誘導をお願い、レンも任せた」

「「了解」」

「翔子行くよ」

茉夏は空中の魔物にメテオアローを放つ。翔子が弱った所にアイシクルショットでトドメをさしていく。いつも通りの連携で数を減らした。

それを逃れて地上に降りた魔物には超低空で飛来して剣で攻撃をする。

「火炎斬!」

斬撃で切りつけて燃やしていった。

「三式、砕粒矢」

翔子の放つ高速の矢が外装の硬い魔物を貫いた。

魔物を討伐しながら関所に向かう。

「被害は?」

「死傷者2名、重傷者が多数です」

「体制を整えて怪我人の治療を優先してください」

翔子が門番と話しをしてる間にも茉夏は魔物を切り伏せていく。翔子もクナイを薙刀に変化させて近接戦闘に移行した。

「キリがないね」

「翔子少し時間を稼いで」

「わかった」

茉夏に近づく敵を優先して叩く。

「翔子サンキュ、プロミネンスフレア!」

灼熱の炎と風で上空の魔物を全て焼き尽くした。真夏は直ぐに魔力の回復アイテムを飲む。

「まだゲートらしき物は開いてるから気を付けて」

サクラも合流して地上の魔物を討伐して回る。残りの3匹となった所でゲートから先程の女性が降りてきた。

「よくも妾の尖兵達を許さんぞ」

怒りと共にその姿がドラゴンへと変貌した。それと同時にゲートは閉じた。

ドラゴンは咆哮と共に灼熱のブレスを放つ。

「アイスウォール」

翔子は氷の壁でガードしたが一瞬で溶け去る。

「私が何とか落とすから地上でトドメをさして」

そう言って茉夏が飛び立った。メテオアローで執拗に翼を攻撃する。怯んだ所を斬撃で翼を切り裂いた。ドラゴンも茉夏を巻き込みながら地上へと落下する。

「一式衝天矢」

翔子の放つ矢がドラゴンの瞳を捉えた。

「茉夏!」

ドラゴンに近づくと茉夏が這い出てきた。

「イテテ」

「大丈夫?」

「何とかね」

物凄い勢いでサクラが走ってくると「風雅閃!」ドラゴンの首元を突いた。怯んだ所で3人は距離を取る。

振り回しはじめた尻尾から逃れた。

ドラゴンが暴れた事により門は破壊される。

「ホーリーアロー」

ドラゴンに聖なる矢が降り注ぐとドラゴンは崩れ落ちた。

「インフェルノストライク」

真夏は渾身の12連撃を放つ。

ドラゴンは絶叫と共に光へと飲み込まれた。

関所に向かい怪我人の治療をする。

「怪我は治せるのですが死んだものを生き返らせる術はありません」

「治療していただけただけで感謝します」

死者を丁重に弔いテントへと引き上げた。

リーナに被害状況を聞く。

「お姉ちゃん達のおかげでこっちは大丈夫だよ」

レンも隣で微笑んでいた。

「疲れたぁ」

「茉夏さんと翔子さんは休んでいてください」

サクラが料理を始めると慌てた様子てリーナが止める。

「私がやるからサクラお姉ちゃんも休んでて」

リーナが慌てるのには理由があった、サクラの作る飯は不味いからだった。

「ここは我らに任せてください」

サロム達が食事の用意をして惨事を避ける事が出来た。

食事をしていると関所の隊長がやってきた。

「この度の活躍に感謝します」

「では通行を許可してください」

「勿論です」

「今日はこのまま野営をしますので明日通過します」

門番達は夜通しで関所の復旧に務めていた。

 朝になるともう一度死者に祈りを捧げて商隊と関所の通過した。

旅を重ねるほどに辛い現実が彼女達を追い込んでいく。

「そもそも魔王は何をしたいのかな?」

「魔王の目的もわからないから何とも言えないね」

「知性のない魔物が人を襲うのは許せないけど昨日のドラゴンは知性があったよね?」

「話し合いで解決出来ると良いのだけどね」

「魔王を討伐しろとは言われたけど魔物を掃討しろとは言われてないからね」

「魔王を討伐した後は共存の道を選べないかな?」

「1度伊邪那岐様に話しをしてみる価値はあるかもね」

サクラやリーナに魔物がいつからいるのか色々聞いてみたが元々はこの世界にはいなかった事が判明した。虫や獣が魔物化したのではないかと言われていた。

「魔物化に魔王が関わっていると」

「やっぱり魔王を倒すしかないのね」

そんな話しをしていると街が見えてきた。

「街が見えてきたね」

「あの街を越えたら次の日には王都ですよ」

サクラが答えた、

街の入口に到着したが沢山の衛兵が門の前にいて物々しい雰囲気になっていた。馬車を止めるとサロムが代表して衛兵に話しかけた。

「ご苦労さまです、いつもより厳重ですが何かありましたかな?」

「関所を襲った魔物を討伐した御仁を出迎えろと国王様のご命令です」

「そうでしたか、あの荷馬車の一行がそうですよ。訳あって旅を共にしています」

「そうであったか」

兵士達は隊列を整えて茉夏の馬車に近づいてくる、

茉夏達は馬車から降りた、20人近い兵士が2列で整列する。

「この度は魔物の討伐し怪我人を救っていただき感謝します」

「いえ、亡くなられた方もいましたので」

「あなた方がいなければ全滅していただろうと報告もありました」

涙ぐむ兵士も数人いた。犠牲者の近しい人なのだろう察する。

隊長と思わしき人から一通の書簡が渡された。

「これは?」

「私は託されただけですのでご確認ください」

蜜蝋で封をされた羊皮紙を開いてみると国王のサインがあり王宮への招待状だと理解した。隊長が手を上げる。

「抜剣!」

茉夏達は何事かと思い最大限警戒する。

「捧げ剣!」

剣が高く突き上げられた。

「納め」

一連の儀式は終わったようだった。

「今のは何でしょう?」

「忠義の儀式です、案内致しますのでこちらへ」

ついて行くと豪華な馬車があった。

「どうぞお乗りください」

「私達の馬車は?」

「こちらで責任を持って預かります」

「どこへいくのですか?」

「このまま王都へ向かいます」

どうやら街へは立ち寄らずに王都に行くみたいだった。

双馬の馬車は夜通し駆け抜けていた。

馬車の客室で眠りについていた。


 

 



続きも書きます。

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