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生活保護区  作者: 蝸牛
3/3

何も知らずに、踏み込んだ6月


ラーメン店で食事をした数日後のこと。私は店の店主の奥さんである女性に、アルバイトの申し込みをしていた。


「本当に、いいの?」

「良いんです、やれそうな所も無いし。」

決めた理由は簡単だ。探すのが面倒だった。

女性は、「そうなの、ありがとう。」と微笑んで、私を店の奥に手招きした。

店の奥には意外にも畳の和室が一部屋あり、そこに私は通された。

「座って。」

「ありがとうございます。」

女性は座る時に、「ふぅ。」と息を漏らした。

「それで、うちは採用で良いんだけど。時給は…あなた高校生では無いから、950円でいい?」

まだ私はアルバイトの経験がない。正直、普通のアルバイトがいくらぐらい稼いでいるのか、見当もついていなかった。

いかに自分が世間知らずか思い知らされながら、それを悟られないように「そうですね…。」と答えた。

「合原さん、二十歳でしょう。」

一応持ってきた、形だけの履歴書を眺めて女性が言う。

「そうです。」

「カモと一緒だ。カモに教えて貰えばいいわ。」

「カモって、この間の?」

「そうそう!」

女性は、ケタケタと笑った。

そして、突然私に向き直る。

「そうだ、私、初美って言うの。」

「初美さん。」

女性ーーーーー初美さんは、微笑みながら頭を下げた。

「これからよろしくね。いつから来れる?」

「いつでも来れます。」

「それじゃあ、」

初美さんは、カレンダーを見た。カレンダーには、その日のバイトだろうか、細かく何かが書いてある。

「明後日、水曜日。18時から来れる?」

「大丈夫です。」

私がきっぱりと言うと、初美さんは続けた。

「良いのね。あなたくらいの年齢だと、予定がありまそうなのに。」

「いえ、何も無いので。」

はっきりと答えた私に、初美さんは目を丸くしながらも「うんうん。」と頷いた。

「じゃあ、よろしくね。」



私の、初めてのアルバイトが決まった。

ラーメン店、「美来軒」だった。





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