神山雑貨店 火曜日 夏 (2)
今日来たのは女性だった。見たところ23、4位の年齢だ。
『私、今すっごい欲しいものがあって、中々見つからないの、』
「うちの店には絶対ありますよ。」
『本当?!』
「ちなみに何が欲しいんでしょうか」
『服!』
「どんな感じの服ですか?」
『綺麗な青色で、水色に近いの。それで…膝丈位のスカートで、ベルトがブラウンの細いやつ!』
「綺麗な青色、水色に近い、膝丈スカート、ブラウンよベルト…」
店長がぶつぶつ言いながら倉庫に行く。
「…あった」
倉庫から店長と共に女性が言った通りのスカートが出てきた。
『凄い!理想のスカートだ!いくらですか?』
「千円です」
『安過ぎません?』
「お客様の笑顔の分、代金を差し引かせて頂きました」
『笑顔が料金って…不思議ですね』
そう微笑んだ女性は
『これで…やっとあの子に渡せます』
ちょっと悲しい顔をしてそう言った
俺は
「あの子?」
と尋ねた
『私の妹です。』
『重い病気で余命も短くて、一度でいいからこんなスカートを履いて外に出たいって』
『それでネットとか漁ってたんですけど中々見つからなくて、』
『でもここの店の前を通ったら、ここにあるよって呼ばれた気がして、』
『そしたらまさか、あったなんて、』
『神様が、私達の為に教えてくれたのかなって、なんか変ですよね』
一通り聞き終えた店長が
「妹さんの為にも早く行ってあげてください、これ、オマケです。」
と言って綺麗なペンダントを渡す
『ご親切に…ありがとうございます!』
『それでは、妹にこの洋服渡してきますね』
「お気をつけて、ありがとうございました。」
女性は駆け出して行った。
「店長、あのペンダントなんすか?」
「あれはね…______だよ。」
「えっ…」
「大丈夫。期限があるから。」
その後女性とその妹さんは願いを叶え、妹さんは3年ほど余命が伸びたらしい。
『あのペンダントのおかげで更に3年も妹と過ごすことができたんだもの、感謝しなきゃね…』
『にしても、お店が無いだなんて…』
『不思議な雑貨店だな。』