9 5年後
前の話から5年後です。
静寂な森にひとりの少年が鼻歌を歌いながら歩いていた。
その少年はどこかが貫禄あり一つ一つの仕草に大人っぽい雰囲気を醸し出すが顔はまだ幼さが残っており笑った顔は年相応の子供っぽい顔になる。
少年の周りには緑色の光の何かが楽しそうに回っている。
少年は時折光を手に乗せ優しく笑う。
「おっ、いたいた、ユノ、そろそろ戻るぞ、ベネッサが呼んでる」
「あ、うん、ありがとうエッツィオ、もう戻るよ」
突如目の前に現れた顎鬚を生やした男に少年は特に驚く様子もなく頷く。
「物好きだね、散歩なんて、こんな何もない森のなにが楽しいのか、おじさんは若い子の考えはわかんないよ」
「そう、毎日いろんな発見できて楽しいよ、こうやってこの子達とも触れ合えるし」
少年の周りの緑色の光は嬉しそうに飛び回る。
「まったく、ここまで精霊に懐かれる人間も珍しいねぇ、一種の才能かね、他の才能はイマイチなのに」
「皆がおかしいんだよ、僕は一般的だと思うよ!」
ニシシと笑うエッツィオにユノはムッとした顔で返す。
「まったしかに毎日頑張ってるさ、あれから5年毎日休まずに修行続けてるもんな、たまにはサボればいいのに」
「修行は楽しいから問題ないよ、最近はイザヨイともかなり打ち合い続くようになって骨が折れることもなくなったし、アザゼルと模擬戦しても意識飛ばないようになったからだいぶ成長できてるなって、自分でも実感できるのは嬉しい」
「……よく死ななかったとおじさんは思うよ」
「一番ひどかったのは何気にエッツィオな気がするけどね」
「おじさんが? 一番優しかった気がするけど」
「いやいや、よくわからない森に連れてかれて魔獣とかくれんぼ、あれは本当に死ぬかと思ったよ!」
今思い出してもあの地獄自分はよく生き延びたと思う。
一週間も知らない森に放置されて食料も水も無くあるのは小さなナイフだけ。
そこから脱出するのにどれだけ死の危険をくぐり抜けたことか。
「あ、時間やばいな、ほらはやく行くぞ、ユノ」
誤魔化すようにユノを急かしてから先にさっさと城へと帰って行った。
ユノもベネッサには怒られたくないので早足で帰ることにした。