4 情景
光について道ならぬ道を歩いて行くこと30分。
目の前に大きな古びた城がいきなり出現した。
そう、いきなりなのだ。
この大きさ普通隠せるはずない。
たしかに数分前まではその影さえ見えなかったのに、今ははっきりとその姿をこの眼に移している。
物語の中に出てきそうな古めかしく巨大な城、その姿に圧倒される。
そしてある噂話を話を思い出す。
森の中に住むバケモノの話を。
「森の番人の城?」
思わず一歩後ずさってしまうが光は、御構い無しに中に入れと言うかのように扉の前で飛び回る。
いや、もしかしたら誰もいない無人の城かもしれないと楽観的に考えるよう努力をし覚悟を決めて扉を叩く。
「すみません、誰かいませんか?」
しかし中から返事はない。
意を決めて扉を開ける。
ギギッと大きな扉は開かれ中に入るとそこは外見とは違い煌びやかな空間になっていた。
灯がともされており明らかに人が住んでいる気配がする。
「あらあら、珍しいお客さんだね」
「い……!?」
耳元で囁かれる声に驚き振り返ろうとするが体が動かない。
「見たところ1人みたいだし、どう見ても子供ね、どうやってこの城に入ったの?」
体が勝手に震える、冷や汗が止まらず心臓が飛び出てきそうな勢いで高鳴る。
これは原始的な恐怖、蛇に睨まれたネズミに為すすべはない。
「な、なんだか、わからない緑色の光についてきたらここにたどり着いて……」
「……へぇ」
何か言わなきゃと震わせた声で答えると
「悪かったね、意地悪して」
ふとさっきまでの全身を指すような恐怖が消える。
極度の緊張が解け脱力で思わずその場に崩れる。
「君、どこからきたの?」
しゃがみこみ、ユノの瞳を覗くのは青い瞳。
綺麗な黒髪に長い睫毛、整った顔立ち。
まるで人形だとユノは感じた。
そしてその宝石のような瞳で覗かれると全てを見透かされているような感覚に陥る。
——嘘はつけない。
ユノは恐る恐る今までのことを話した。
予言のこと
この森に連れられたこと。
「それで君はどうしたい?」
「僕が、ですか?」
ユノの拙い説明を聞き目の前の女性はユノに問いかけた。
「仕方がないなとは思います、王様も国を守るためですし、それに殺さないできちんとこうやって食べ物とお金もくれましたし」
「君は人が憎くないの?」
「わかんないです、でも優しい人もいますし」
「お人好しだね」
女性は溜息を吐く。
——答えを間違えた、殺される!?
しかしそんな未来は来なく
「ねぇ、君名前は?」
「ユ、ユノ」
「そう、じゃあユノ、もし君が望む力が貰えるとしたら君はどんな力が欲しい?!」
手を差し出される。
「力……?」
「そう、私なら君に与えられる、嫌いな奴を殺せる力も、君を追い立てた国を壊す力も」
それはとても魅力的だとユノの心は訴える、けどそんな力が欲しいわけではない、ユノはいつも考えてた。物語の中の英雄みたいになりたいと。
「……僕は、英雄に憧れています、困った人を助け笑顔にしてしまう、どんな苦しい状況でも笑って解決できてしまうようなそんな英雄に……でも僕はそんな存在にはなれないってわかってます、だから、もし僕に大切な人ができたら、その人だけでも守れれような力が欲しいです!」
「————」
一瞬の間、そして複数の笑い声が辺りに響く。
「えっ?」
次の瞬間ユノの周りに人影が出現した。