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3 予言

衝撃で目が醒める。

重い瞼を開け辺りを見回す。

シャンデリアに高級そうな壺、赤いカーペット、そこはとてもきらびやかな広間だった。

手を動かそうとしても動かない、見てみると黒い手錠がされている。

周りには十人を超える騎士、そして目の前には階段がありその頂上には色とりどりの宝石が装飾された黄金の椅子に座る初老の男性がいた。手には杖、頭には金の王冠、そうユノの記憶が正しければこの男はこの国で一番の権力を持っていると言われる国王だ。


「目が覚めたか」


目の前の国王が口を開いた。


「お前がユノか? 我が部下が強引だったそうだな、まぁ許せ」


謝っているのに不遜な態度、完全にユノを見下している。


「……僕は、何もやっていません」


「だろうな、今はまだな」


その言葉にユノは違和感を覚えた、その言い方はまるで——


「これから僕が何かするみたいな言い方」


「そうだ、お前はこれからこの国を揺るがす大犯罪を犯す」


ユノの溢れた独り言に国王が答える。


「僕は、そんなことできるような人間じゃない、僕はただの学生です」


「確かに調べた限りではそうであるな、だが、残念ながらこれは覆らない事実だ、実はな2日前に予言とある男の名前が出たのだ、その者はこの国を滅ぼす存在となるであろうと。そしてそこにはお前の名があったのだ、ユノよ」


「予言!?」


「国家秘密なのだが、この国では重大な事が起こる時予言が出るのだ、それは毎回当たっている、そして今回も予言が出た、国王として従うほかあるまいよ、諦めよ」


「つっ!」


何も言えなかった、否何を言っても無駄だと悟ったのだ。

もう決定は覆らない。

僕の存在なんてとてもちっぽけな物だったのだ。


国王は指で指示を出す。

今まで待機していた一人の兵士はユノの顔に布をかける。


どうせ死ぬならと、震える声で懇願する。


「国王様、最後にお願いがあります」


「なんだ、言ってみろ」


「僕の暮らす孤児院はとても貧乏です、国からの援助があってもやっと生活できるくらいです、なのでどうか、孤児院にこれまで以上の援助をお願いしたいのです」


「……よかろう、国王の名において約束する」


「ありがとうございます」


自分の運命を呪いたい、なんで自分がこんな目に会わなければいけないのかと、けれど救うこともできた、神父達を助ける事ができた。

自分には『英雄 』なんてなれなかったけど家族を助ける事はできた。


「ユノ、貴様を死刑に処する」


何も見えない暗闇の中でその声だけが残酷に耳に響いた。



馬車に乗せられること2時間弱。


「さぁ、ついたぞ」


馬車から降ろされる。


ユノはビクッと震える、今から自分は殺されるんだと、覚悟を決める。


しかし目隠しを取られ縛られていた手錠が外された。


「ここから真っ直ぐ進め、うまくこの森を抜ければ街がある。これは食料と金だ、持っていけ」


「えっ?」


兵士の言葉に耳を疑う。


「俺たちだって、おかしいとは思ってるんだ、いくら予言だからといって、まだ年端もいかない無実の少年を殺すなんて」


1人の壮年の兵士が言うと周りの兵士も頷く。


「だからこれはせめての情けだ、俺たちはここでお前を殺した、お前は死んだ、そういうことだ、だからもう王都へ戻ってくるな」


「……ありがとうございます」


「何もしてやれねぇ俺たちを恨んでくれても構わない、だけど、どうか幸せになってくれ」


ユノは兵士達に頭を下げてから森に入る。


森に一歩踏み入れた瞬間森が騒いだ。

木々が揺れ始めまるで話しているかのようだった。

恐怖を感じるが戻れない。


獣道をひらすら歩き続けて行くと目の前に淡い光が飛び出してきた。


「……虫?」


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