8.
そういや、確かゲームでも無口で何でもできる完璧王子が表の顔で裏の顔は計算高いドエス王子だったけ。
まぁ、今となりゃそんなことなどうでもいいんだけど。
「あ、一つ言い忘れていました」
「何だ?」
「私、重たく鬱陶しいぐらいに絡むぐらいにちゃんと王子のことは好きだったんですよ」
他の男がいたとか変な誤解を与えたくない。
王子の青色の瞳が大きく散瞳するのが分かった。
何をそんなに驚いているのだろう。好き、なんて言葉今まで散々彼に言ってきた。駅前でティッシュを配るような勢いで言い過ぎたせいか、好きという言葉に重みがなくなっていったけど。
『何を動揺しているんだ、俺は。もう迷うことはないはずだろ』
「過去形か」
「はい。未練などないので、本当にいつ婚約破棄なさってくれても大丈夫ですよ」
私は上品に口角を上げて、ビジネススマイルを彼に向ける。
『むかつくな』
え、ちょ、ちょいと待って。むかつくようなこと言った?
むしろ、この王子の為を思っての発言を褒めてほしいんだけど。
「こんにちは」
いきなりひょこっとヘレナの顔が視界に入る。
近くでも見ると、何てすべすべな肌なんだ。それにこの細い腕……守りたくなるな。
その後ろには勿論、攻略対象者のイーサン、エディ、オスカーもいる。
まさか、彼らの方から王子を連れ戻しに来るなんて意外だった。いつもは、多少時間がかかっても王子の帰りを待っている。
「今回は楽しそうに会話していたな」
エディが王子の耳元で何か言っていたが、声が小さく聞き取ることが出来なかった。
間近で見たらみんな眩しい。人に対して眩しいなんて言葉は、ツルッと光るハゲ頭を見て言ったことなかった。
勿論、皆髪はふさふさに茂っている。顔が整い過ぎて眩しいということだ。
確か、王子とイーサンとオスカーが十八歳で、エディとヘレナは私と同い年の十六歳だったはず。
「本日はお招きいただき有難うございます」
イーサンに向かってスカートをチョンッとつまみ、お辞儀をする。
『一体いつマナーを覚えたんだ』
腐っても貴族、一応マナーは知っている。ただ実際に行動にしたことがなかっただけだ。
今まで招待の礼なんて私の口から聞いたことがなかったのだろう。驚きのせいでイーサンの緑色の瞳が散瞳する。
「嫌でも表面上の王子の婚約者を招待せざるを得ないってなかなか複雑ですよね。これからは別に気を遣ってもらわなくても大丈夫です」
「……えっと、え?」
「イーサン……様? はなんか嫌だから、イーサンと呼ばせていただいても?」
「別に構わないが」
『俺は名前で呼ばれないのに』
「私がいたらお茶会の空気が悪くなるでしょ?」
「いや、別にそんなことはないが」
戸惑いつつもイーサンはちゃんと答える。