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女子高校生時代みたいに、○○と別れたんだ~って気軽に言えないんだよね。
王子との婚約がなくなったってことは、未来の王妃じゃなくなったってことだし。……けど、私、王妃なんてなりたいって思ったこと一度もない。
ルイスがなんて言えばいいのか戸惑っている。本来なら王子とした婚約を解消されるなんて滅多にない。衝撃的なことだ。
もしかして、ルイス、私が落ち込んでいると思ってるのかな?
「まぁ、私にとっても王子にとってもベストな選択だったんだと思うよ」
私がそう言うと、ようやくルイスは口を開いた。
「気まずくなったりしないのか?」
「う~ん、気まずくはならないよ」
ルイスは「へぇ」と言って私から目を逸らして飾りの作業を再開し始める。黄色い花を丁寧に窓の縁に飾る。
私も止めていた手を動かす。私達の間に暫く沈黙が続く。
町の人達の活気ある声が聞こえてくる。皆、祭りが楽しみでしょうがないのだろう。
小さな子供からお年寄りまで皆が一緒に準備をする。このコミュニティの中で、互いのことを知り合うチャンスが生まれる。
こうやって力を合わせて何かを作るのって良いよね。絆が深くなるって感じ……?
前世の私達なんかずっとスマホと睨めっこの日々だったもんね~。
この町の人達のコミュニケーション能力の三十パーセントぐらいしかなかったような気がする。年齢関係なく誰かと会話するってあんまりないもん。
……また生まれ変わっても、私はここに生まれ落ちたい。
「お姉ちゃん! 遊ぼ!」
突然小さな女の子の声が耳に響く。この町でよく遊んであげている子だ。
もちっとした頬を赤く染めて、息を切らしながら私の方へと近づいてくる。
小さい子の走りってなんであんなに可愛いんだろう。今の私が全力疾走なんてしたら、顔面崩壊して誰にも見せられない。
「ごめんね。今、お祭りの準備中なんだ」
「ええ~! ちょっとだけ! お願い、お姉ちゃん」
うう……。そんな顔で見つめられたら断れない。
私はルイスの方をチラッと見る。彼一人で準備をさせるのは申し訳ない。
「いいよ、行ってきて」
ルイスはフッと優しく笑う。
「けど……」
「そもそもキャシーは祭りの準備なんてしなくていい立場なんだから。むしろ、ずっと手伝ってくれてありがとう」
私が行きにくそうにしていると、ルイスはそう言ってくれた。
なんか、急にルイスが甘くなったような気がする。……なんで!?
「なんか変」
「何が?」
「私の知ってるルイスのキャラじゃない!」
「……俺ももう遠慮することないなって。他の奴らも皆キャシーのこと狙ってそうだし」
「なるほど、分からん」
ルイスは今まで私に遠慮してたの?
あ! もしかしてやっぱり貴族と平民ってことでどこか距離を置いてたってことかな。
「絶対的外れなこと考えているだろうけど、まぁ、今はそれでいいか」
彼は呆れた様子で小さくため息をついたが、どこか嬉しそうだった。
「それと、妹のことありがとう。本当に感謝している」
ルイスの真剣な茶色い瞳としっかり目が合う。




