78.お祭り準備
「一体なんだったんだ?」
ルイスはディランが出て言った後、少し呆然としながらそう呟いた。
「私もよく分かんない」
ディランは何をしたかったのだろう。……まぁ、元帥という立場がとんでもなく忙しいのは間違いない。
考えてみれば、そんな人が私に時間を割いてくれたこと自体不思議だ。
私とルイスはその日、数日後に開かれるお祭りに向けての手伝いに取り掛かった。町中に盛大な飾りつけをするからなかなかの重労働だ。
もうすぐマディ国で最も大きなお祭りが開催される。その名も『サンクスマディ』!!
なんてネーミングセンス! そんな単刀直入にマディ国に感謝しろって言わなくても思う。マディ国もがめついな。
『サンクスピーポー』の方が響きが良い。
祭りの名前については置いておいて、この祭りはビッグイベントなのだ。ヘレナと王子のラブラブ度が一気に上がるイベント! ……って言っても、もうあの二人の間にあんまりラブは生まれそうにないけど。
ラーメン屋で食べ放題のイベントがあるのに、うどんを食べたいみたいな感じ。……言いたいことは、彼らにとってこのイベントは何の意味もない。
私にとったら、このお祭りは最高に楽しみの内の一つ。
だって、豪華な料理が沢山食べることが出来るんだから! それもただで!
そう思うと、確かに国に感謝することは正しい。サンクスマディ最高!
「無料でご飯が食べれるなんて天国みたいな祭りだよね」
私は祭りにの準備の為に窓に花を飾りながらそう言った。私の言葉に、ルイスは手を止める。そして、私の方をじっと見る。
え、何かおかしなこと言った?
「キャシーって本当に令嬢なのかよ」
呆れあたようにルイスはため息をつく。
「え~そんな風に疑われると自信なくしちゃうじゃん」
「もっと自信をなくせ」
なんてことを言うんだ、ルイス。
私だって、本来ならヘレナと王子が抱き合うぐらいのハプニングは欲しいけど、絶対にこの祭りでそんなことは起きない。……乙女ゲームとしてのシナリオが随分と崩れてしまっているからね。
だから、料理で楽しむしかない。
「そう言えば、祭りの夜、誰と星を交換するんだ?」
ルイスの言葉に私は思わず首を傾げる。
ホシをコウカン……。
待って待って、空にある星をどうやって交換!?
確かに魔法のある世界だと出来るかもしれないけど。それって、なんか星に失礼じゃない?
折角あの星とカナブン座になれたのに、人間のせいで交換されちまって嫌いな星とザリガニ座になる羽目になったよ。……ってことが起こるかもしれないってことだよね。
「なんか馬鹿なこと考えてないか?」
ルイスが私の顔を覗き込む。彼は私に分かりやすいように話を続けた。
「祭りで一人ずつに星が配られるんだ。あ、もちろん本物の星じゃないぞ。掌に乗るぐらいの小さな星型のクリスタル。それを好きな相手と交換するんだ。誰でも良い。友達でも親でも恋人でも……。まぁ、交換って言っても、好きな人に渡すって言った方が正しいな。……毎年開かれている祭りなのにそんなことも知らないのか?」
「だって、今年が初めてなんだもん。参加するの」
なぜなら、今までの私は祭りの日に限って、ちゃんと悪役令嬢をしていた。お茶会もパーティーもない日こそ、いかに王子に好かれるかという研究に没頭していたんだから。
今思えば、最高に気持ち悪い趣味だけど……。
私がいない日だからこそ、ヘレナと王子の絆は深まるんだよね。……本来なら。
「そうか。じゃあ、今年は星のことなんて考えずに思いっきり食べまくれ!」
ルイスは満面の笑みを私に向けてくれた。
きっと、彼は私に何か深い事情があって祭りに参加できなかったと思っているのだろう。
ごめんね、ルイス。違うんだ。キャシーはただ変態を貫いていただけなんだ。
ルイスのその屈託のない笑顔を私は守りたいよ。
「あんた良い奴だね、涙が止まらないよ」
「一滴も流れてないだろ」
鋭いツッコミをされてしまった。
「……俺はてっきりアダム王子と交換するんだと思ってた」
「だよね~」
皆きっとそう思っているよね。けど、私と王子はもう婚約関係じゃなくなったったんだよね。
これって言っていいのかな? ……まぁ、いっか! そのうちバレるだろうし。
「私ね、王子と婚約解消したんだよね」
私の爆弾発言にルイスは固まった。




