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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
64/117

64.

「お姉しゃま、ビエオリン弾けるの!?」

 なんか違う楽器になってる。

 彼女はさっきよりさらに輝いた目で私を見つめる。

 ……こんな瞳で見られるってことは、私、本当にスーパーアイドルになってもいいんじゃない? 

 とか調子乗っちゃいそう。調子乗れば乗るほど人は天狗になるものだ。

 悪役令嬢が天狗とかもう救いようないじゃん。……いや、ちゃんと役になりきってて、運営側としては良きなのか?

 なんかよく分からなくなってきた。

「とってくるよ」

 私がくだらないことで悩んでいる間に、オスカーはそう言って、立ち上がり、部屋を出て行った。


 オスカーの帰りを待っている間、私はメリッサに質問攻めにされる。

「お姉しゃまはビエオリンが好きなの!?」

「うん、好きだね」

 なんか、ビエオリンって、役に立たないサプリメントみたいな名前だな。星二ぐらいでネット通販で売ってそう。

「いつからビエオリンしてるの?」

「少し前からかな」

 現世では。

「どれくらい上手いの!?」

 休む暇なくメリッサはぐいぐいと私にとんでもないスピードで質問してくる。

 凄いよ、メリッサ。きっと一流記者になれるよ。

「どれくらい上手いんだろう。……人並みには?」

「ヒトナミ……?」

「普通の人ぐらいってことだよ」

 四歳児の語彙力がどのくらいなのかさっぱり分からない! 

 自分基準で話すのがいかに楽か分かる。

 しかも、世の中には天才キッズという中身がアラサーみたいな子どももいるんだ。歳の離れたコミュニケーションって難しい……。

 子どもって大人が思っているよりも馬鹿じゃないし、大人は子どもが思っているよりも賢くない。 

 

「お待たせ~」

 オスカーがヴァイオリンを片手に部屋に戻ってきた。

 どこの家にもヴァイオリンってあるものなんだ。うちの家にヴァイオリンがなかったのは父のせいか……。

「はい、どうぞ」

 オスカーが私にヴァイオリンを手渡す。

「有難う」

「どんな演奏が聴けるのか楽しみだよ。前にキャシーの演奏を聞いた時、自分でもびっくりするぐらい心が痺れたんだ。あんな素敵な演奏は生まれて初めて聞いたからよ」

「最高の誉め言葉を頂けて光栄です」

 少し令嬢っぽくそう言って、私は軽くお辞儀した。

 音楽ってやっぱり凄い。人と人を繋ぐ魔法みたいだ。なんだ、私、魔法使えるじゃん。……ちょっと違うけど。

「メリッサも楽しみ! お姉しゃまのビエオリン楽しみ!」

 興奮した様子でメリッサも声を上げる。

 子供に弾く曲ってどんなのが良いんだろう。カッコいいって思われるような曲を弾きたい。

 やっぱり、お姉しゃますげえええ! って言われたいもんね。ずっとスーパーアイドルでいたいもんね。

 私はメリッサの方をチラリと見る。

 まだ、何も弾いていないのに、彼女を見る私の目はもう既に感動しているように見えた。

 音楽に年齢なんて関係ないし、メリッサが喜んでくれそうな曲を弾こう。

 私はそんなことを思いながら、弓を弦に走らせた。

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