61.
「ヘレナの人気は凄かったぞ。町の皆が神様のように彼女を慕うんだ」
エディは満足気な表情でそう言う。
町に馴染むスピード私より早くない!?
ライバルとか言えないレべルに相手と私のレベルが違い過ぎるんだけど。何この悲しい事実……。それに、ヘレナは最初から貴族として町に行ってるし。なんか、私の立場なくない?
『何こいつショック受けてんだ?』
そりゃ、今まで築き上げてきた帝国を勝ち目のないミサイルぶち壊された気分なんだもん。
『町では、ほとんどキャシーの評判ばっかりだったのに。……まさかお茶会も全部断って町に行っていたとはな』
まじで!? 良い評判だった? とか聞きたいけど、本人が口に出していない限り私からそれを聞くことは出来ない。
喋れ、王子。
「キャシーがアダムの婚約者って知った時の皆の反応は最高だったよな」
オスカーが楽しそうに思い出し笑いをする。他の皆も彼の言葉に賛同するように首を縦に振る。
ちょい待って、それ、私が一番見たかったんだけど……。
え、動画とか取ってないの? てか、そういうドッキリって本人ありきで行われるもんじゃないの!?
「あ、それとメリッサがずっと君に会いたいってうるさいんだ。また会いに来てよ」
それは今する話じゃないわ。
『正直皆、キャシーの話ばっかりで妬いちゃったけど、流石私のキャシーって思ったわ』
待って、私いつからヘレナのものになったの?
一応肩書はまだ王子の婚約者だからね。
「明日にでも会いに行くよ」
『オスカーの家に行くの?』
『オスカーの家に行くのか?』
二人仲良く同じことを思うな。もう早く二人付き合っちゃいなよ。
主人公とヒロインのクラスにいるクラスメイトCぐらいの立場から二人のこと眺めていたいよ。こういうのは傍観者が楽しい。
「本当か?」
オスカーは私の言葉に嬉々たる声を上げる。
『デレデレしちゃって。本当はキャシーが家に来てくれることが嬉しいくせに……』
安心して! オスカーはまだヘレナのことが好きだと思うから。それに、ヒロイン、キャラ設定大事にしようよ。
『俺にも妹がいたらな』
……王子、ちょっと気持ち悪いよ。折角の男前が台無しだよ。
なんだろう。なんで、私こんなにツッコミ入れてるんだろう。
物凄く可愛い人や格好いい人が変態チックなことを考えているって事実知りたくなかったな。
「キャシーは本当に変わったな」
イーサンが柔らかい声でそう言う。今や私を見る彼の目には全く敵意がない。
「変わったかな?」
「「「「「変わった」」」」」
全員が口をそろえて頷く。エディが笑いながら口を開く。
「まず子供たちに懐かれるような性格じゃなかったしな」
『むしろ嫌われる性格だったな』
王子、心の中でもちょっと黙ってて。
『確かに、私が子供だったら絶対に近付かないような性格だったものね』
ヘレナ、あんたも黙ってな。
「そんな風に言うのは良くないよ。キャシーにも良い所はあったし!」
……心の声を聞いてからのこれはちっとも嬉しくない。
というか、全国の皆に届いて欲しい。ヒロインは鈍感天然いい子ちゃんを作っているだけだって。
全部計算されているんだよ。それがモテる女の子なんだよ!




