60.報告
リリーの病気治ったのかな。まぁ、ヘレナの治癒魔法だし、ゲーム通りに進んでたら治ってるよね……。
いつも通りベッドに仰向けに寝転びながらそんなことを考える。いつの間にか、ベッドは寝る場所兼私の考え事をする場所になっている。
ヘレナが人気者になるのはシナリオ通りだ。
「シナリオ通りじゃないのは、私か」
悪役令嬢なんてもうどうでもいいや。その話はイーサンのお茶会に行った時に終わっている。
コンコンッと扉を叩く音が聞こえる。
この時間のこのノックはエミーで、内容は誰か家に訪問してきたってことだ。もう大体パターンが分かってきた。
「お嬢様」
「誰が来たの?」
「アダム様、ヘレナ様、イーサン様、オスカー様、エディ様でございます」
「え、全員勢揃い?」
王子かヘレナかなって思ったのに、何その豪華セットは! 要らない!
私は体を起こし、扉の方へ近づく。
報告は全員でするものって法律でもあるの? てか、何故私にわざわざ報告しに来る。そんなに仲いいわけじゃないじゃん。
……言い出しっぺは私だから?
部屋の扉を開けて、いつもみたいに客間へ直行する。
ズボラ女確定だけど、もういっそのこと部屋まで来てくれないかな。ベッドの上で皆の話聞くのに……。
「皆さん、こんにちは」
私は軽くスカートをつまみ、お辞儀をする。
ソファに座ってくつろいでいた彼らは私の方を向く。早く私に今日あった出来事を言いたいとそわそわしているように見える。
「えっと、ご用件は?」
「何よ! その他人行儀な感じ! 私達はもう親友じゃない!」
いつから親友だったの、私達。ヒロインとBFF同盟を結んだ覚えないんだけど。
『皆いるから素を出せないのかしら。……私だけ特別!?』
そのおかしなずれた思考やめて。ヒロインだから許せるけど、他の人なら一発どころか数発殴ってるよ。
『ヘレナがこんなにキャシーに懐いているなんて』
王子、こればかりは貴方に同意です。私も何故こんなに懐かれているのかわけが分かりません。
「今日はキャシーに報告があるの!」
彼女の言葉に皆が頷く。
もし報告がないのなら、突然訪問過ぎて驚くわ。あ、でもヘレナならしかねない。
「実はですね、今日は治癒魔法で沢山の町の方を救ってきたの!」
「ヘーワースゴイー」
私はそう言って、手を叩く。
最初から知っていることを報告されても感動というものは薄れる。思わず棒読みになってしまう。
「ちょっと何よ、その反応! もっと喜んで!」
「思っていた反応と違うからって強制しないでよ」
『もしかして、キャシーってツンデレなのかしら』
今すぐツンデレの意味を辞書で引いてきな。
もう今からどれだけ塩対応になっても、これは国外追放にも死刑にもならない気がする。私を含め皆馬鹿で良かった……。




