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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
54/117

54.出会い

「おい! ガキが逃げたぞ! 捕まえろ!」

 パン屋へ向かっていると、突然大きな声が道に響く。

 丁度、その声に反応をした瞬間、一人の男の子が私の隣を勢いよく通り抜ける。

「誰か! 捕まえろ!」

 兵士のような恰好をした男が大きな声を上げる。

 必死の形相で走っていく少年の格好はあちこち破れていて、白い服が茶色に変色したのだと思われるような服を着ていた。

 ……あの貧困地域から抜け出してきたのかな。

 私は彼がどうなるのか気になり、ルーシーに手紙を届けるよりも先に少年を追いかけた。

 もう一度兵士に捕まったら、殺されるとかそんな残虐なことはないよね? 


「そんな急いでどうしたんだ」 

 そう言って、一人の大きな男が逃げている少年を軽々と持ち上げた。

 少年は逃げようと必死に暴れるが、男はびくともしない。

 ……誰。

 遠くだと分かりにくいから、さっきよりスピードを緩くして彼の元へ走る。

 私、今日、走ってばっかりじゃない? 明日筋肉痛が凄そうなんだけど……。

「捕まえてくれて礼を言う」

 兵士がそう言って、大きな男に手を差し出す。

 自分のミスで逃がしてしまって、その上捕まえてもらったのに、あの兵士はなんて上から目線なんだ。

 ……こういう上司いるよね。昔働いていたコンビニの店長を思い出す。この兵士のあだ名は店長でいっか。

「おい、待て。こいつを捕まえたのは、俺だ。今からこいつをどうするかは俺の自由だろ?」

 大男が店長に向かってそう言った。

 近づいてみると、彼の肌は褐色肌だ。 

 ……ん? 何だろう。この一度見た感じは。美形で褐色肌とか、王子のパクリだ。どうなってんの? 

「なんだ、お前は?」

「俺? 俺の名はディラン・サイモスだ」

 誰だよ。

「誰だ?」

 良かった、私だけ知らないのかと思った。

 褐色肌ってことは……王子の母と同じ国のリンドン国の人?  

 こうやって見ると、やっぱり王子はハーフなんだって思う。彼よりも少し肌の色が薄い。黒く肩より少し長い髪をハーフアップにしていて、猫目が印象的の乱暴な男って感じ。

 その割に色気はあるし、顔も整っている……ってことはリンドン国の貴族? 

 いや、そんなほいほいと貴族が出てくるわけない。いくら貴族だけの乙女ゲームとはいえ、彼のことゲーム内で見たことないし。

「元帥! 探したんですよ! こんなところで何しているんですか?」

 一人のやや小柄な男性が駆け足でディランの元へ近づいて来る。 

 ……ゲンスイ。減水? 源水? 何かの聞き間違いかな。

「おお、カール。今自己紹介の最中だ」

「自己紹介? 誰にですか? 皆、元帥がいなくなったって言って、大慌てで探してたんですよ!」

 げ、元帥いいいいい?

 やっぱり、聞き間違いじゃなかった。今あのカールという名の男は間違いなく、この背の高く、軽々と少年を持ち上げるような力持ちのロン毛男のことを元帥って言った。 

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