5.お茶会
「お嬢様、朝ですよ」
エミーがバサッとカーテンが開く。太陽の光が容赦なく部屋に入り込み、思わず目を細める。
眩しッ。サングラス欲しいわ。イキってるとか言われてもいいから、この紫外線から逃れたい。
「後五分」
私はそう言って、枕に顔を埋める。
母の説教の為、寝不足なのだ。昨日、私から婚約破棄宣言をしたことが何故か両親に知れ渡った。
父は別に怖くないんだけど、問題は母である。その話を聞いて、怒りに私の前に現れた時は、般若のお面でもつけてるのかと思ったわ。
「今日はミシェル家のお茶会です」
ミシェル、ミシェル、ミシェル……。
「イーサン・ミシェル!?」
「はい。そうですが、突然大きな声で、どうかしたのですか?」
思わずベッドの上に立ち上がった私にエミーは怪訝な表情を浮かべる。
イーサン・ミシェル、彼は宰相の息子だ。頭が良く、剣術も出来て、魔法の能力も優秀、そして、攻略対象!
まぁ、お茶会に行ったら、攻略対象者全員と会うことになるだろうけど。……ヒロインにも。
この世界に魔法があるといっても、水、火、風、土、などのように分かれているわけじゃない。
全部統一されて魔法が使えるという超万能な魔法なのだ。勿論魔力には差はある。
大体の予想はついていると思うけど、攻略対象者達とヒロインの魔力は凄まじい。カースト上位だ、一昔前の黒ギャル的な存在だ。……いや、なんか違うな。
はぁ、この世界にスマートフォンとかあれば、私も一目置かれただろうに……。あれは私が作ったわけじゃないけど。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ダイジョウブ」
「体調が悪いのなら、無理には」
「いや、違うの。私って嫌われ者でしょ? 今までよくそんな空気の中に自爆しに行っていたなって思って」
「……えっと」
確かにこんなことお嬢様に言われたら、発言に困るよね。
「このこんにゃくのようにすべすべして決して割れないハートを掲げて、お茶会に向かうわ」
「こんにゃくのような心ですか」
「鋼鉄のハートの方がカッコいい?」
「いや、まぁ、あの、どちらも変ですね」
なんとあっさりばっさり。
流石エミー! エミーのことたいして知らないのに、流石とか言ってしまったよ。
とりあえず、いつもの華やかなドレスではなくシンプルなシックなドレスに着替えた。
エミーに頼んで、前髪をぱっつんに切り、長い髪は後ろでビシッときつくポニーテール。黒髪で顔も小さいからそれなりに似合っている、と気分を無理やりにでも上げていく。
それに今の気持ちは全然華やかではない。今から沢山の地雷を踏みにお茶会に行くんだ。
……今までよくあんな白い目で見られていたのにお茶会楽しめていたよね。凄いわ、キャシー。
満身創痍になっても無事生還できますように。合掌。