39.
この方向で合っているののかよく分からないけど、メリッサの兄もどこにいるか分からないから別にいっか。
「お兄ちゃんはどんな見た目なの?」
「とってもカッコいいのッ!」
ブラコンか~。いいなぁ、こんな可愛い妹がいるんだよね。
「お兄しゃまはね、メリッサと同じ髪の色で……カッコいいのッ!」
四歳の語彙力なんてそんなもんか……。
紺色の髪の毛か、紺色!?
「待って、さっき、名前なんて言ったっけ?」
「メリッサ・マイズだよ!」
マイズってオスカー・マイズ!?
あの女たらしの妹ちゃんなの? え、オスカーってこんな純粋で無邪気な妹がいるの?
今日一番の驚きニュースだよ。
「どうしたの?」
「メリッサの兄がどんな人か分かったわ」
「本当っ!? 知り合いなの?」
そりゃ、彼はヒロインの攻略対象だから知り合いよ。……私は嫌われてるけどね。
「まぁ、知り合い、かなぁ。そういえば、オスカーとここに何しに来たの?」
「あのね、メリッサの王子しゃまに会わせてくれるの!」
王子様……って、もしかしてあいつかな。それしか思い浮かばない。
「金髪で小麦肌?」
「そうッ! おねえしゃまよく知ってるの!? メリッサの王子しゃまなの!」
本当の女たらしはオスカーじゃなくて、王子かもしれない。
あんな美貌を持ってたら、老若男女問わず誰でも惚れるか。怖いものなしじゃん。
「その王子様はユニコーンに乗って現れるの?」
「うわあああ! 格好いい!」
王子がユニコーン……想像しただけで笑える。駄目だ、我慢しても口元がどうしても緩んでしまう。
それを格好いいと言えるメリッサが羨ましい。
暫く歩いても、全く人が見えない。
いつから無人学園になったのよ。無駄に広いからこんなことになるんだ。設計者と是非話がしたい。
メリッサが不安にならないように私は適当に作り話をして、笑わせる。
「そうして、お姫様はゴリラになって、ゴリラ王子と末永く暮らしましたとさ」
彼女は横でキャッキャと声を上げて笑う。
ちっさい子って「うんこ」とか「おなら」とか言っただけで笑うもんね。
なんかここまでウケてもらえると、自信が出てくるわ。子ども好きだし、これから小さい子とのコミュニケーションを大事にしていこ。
メリッサの歩く速度が遅くなるのが分かる。
私は歩くのをやめて、その場にしゃがみ込む。
「メリッサ、おいで」
そう言って、腕を広げる。メリッサは一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに腕の中に飛び込んできた。
「有難う、お姉しゃま!!」
そのまま彼女を持ち上げる。
……想像していたよりも軽い。四歳ってもっと重いと思っていた。
「よし、お兄ちゃん探そうか」
私は彼女を抱きながらまた、足を進めた。




