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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
39/117

39.

 この方向で合っているののかよく分からないけど、メリッサの兄もどこにいるか分からないから別にいっか。

「お兄ちゃんはどんな見た目なの?」

「とってもカッコいいのッ!」

 ブラコンか~。いいなぁ、こんな可愛い妹がいるんだよね。

「お兄しゃまはね、メリッサと同じ髪の色で……カッコいいのッ!」

 四歳の語彙力なんてそんなもんか……。

 紺色の髪の毛か、紺色!?

「待って、さっき、名前なんて言ったっけ?」

「メリッサ・マイズだよ!」

 マイズってオスカー・マイズ!?

 あの女たらしの妹ちゃんなの? え、オスカーってこんな純粋で無邪気な妹がいるの?

 今日一番の驚きニュースだよ。

「どうしたの?」

「メリッサの兄がどんな人か分かったわ」

「本当っ!? 知り合いなの?」

 そりゃ、彼はヒロインの攻略対象だから知り合いよ。……私は嫌われてるけどね。

「まぁ、知り合い、かなぁ。そういえば、オスカーとここに何しに来たの?」

「あのね、メリッサの王子しゃまに会わせてくれるの!」

 王子様……って、もしかしてあいつかな。それしか思い浮かばない。

「金髪で小麦肌?」

「そうッ! おねえしゃまよく知ってるの!? メリッサの王子しゃまなの!」

 本当の女たらしはオスカーじゃなくて、王子かもしれない。

 あんな美貌を持ってたら、老若男女問わず誰でも惚れるか。怖いものなしじゃん。

「その王子様はユニコーンに乗って現れるの?」

「うわあああ! 格好いい!」

 王子がユニコーン……想像しただけで笑える。駄目だ、我慢しても口元がどうしても緩んでしまう。

 それを格好いいと言えるメリッサが羨ましい。

 

 暫く歩いても、全く人が見えない。

 いつから無人学園になったのよ。無駄に広いからこんなことになるんだ。設計者と是非話がしたい。

 メリッサが不安にならないように私は適当に作り話をして、笑わせる。

「そうして、お姫様はゴリラになって、ゴリラ王子と末永く暮らしましたとさ」

 彼女は横でキャッキャと声を上げて笑う。

 ちっさい子って「うんこ」とか「おなら」とか言っただけで笑うもんね。

 なんかここまでウケてもらえると、自信が出てくるわ。子ども好きだし、これから小さい子とのコミュニケーションを大事にしていこ。

 

 メリッサの歩く速度が遅くなるのが分かる。

 私は歩くのをやめて、その場にしゃがみ込む。

「メリッサ、おいで」

 そう言って、腕を広げる。メリッサは一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに腕の中に飛び込んできた。

「有難う、お姉しゃま!!」

 そのまま彼女を持ち上げる。

 ……想像していたよりも軽い。四歳ってもっと重いと思っていた。

「よし、お兄ちゃん探そうか」

 私は彼女を抱きながらまた、足を進めた。

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